アイス
「チケットは取ってきてるよ。二人座席になるから窓側か通路側か好きに選んでくれていいよ。フライハイトとは連絡とれてるんだよね?」
「はい、どの車両なのかとか時間とかは聞いたとおりに伝えてあります」
「よくよく考えてみたらフライハイトには東京まで来てもらって一緒に行くという手もあったなぁ。そうだったら三人座席でも良かったし」
ホームに向かいながらしゃべる。
「でもフライハイトは金欠だって言ってましたから、厳しいんじゃないですかね」
「そうか。そうだ、駅弁でも買っていく? 車内販売は今はもうないらしいから、時間的にお腹すくだろうし、到着後のことなんも決めてないしな」
「ええ! 車内販売ってもうないんですか?! けっこうそれも楽しみだったのに……」
「つい最近なくなってしまったらしい」
「そうなんだ、残念。それはそれとして駅弁は賛成です! 買っておきましょう」
適当な売店でそれぞれ買ってからホームへ向かう。
「あの、これ……」
ひっそりと目立たないように封筒を差し出してきた。
「新幹線のチケット代です。建て替えてもらってありがとうございました」
二人で時間はともかく席まで合わせる必要はなかったのだが、ネ・ムイに頼まれて俺が自分とネ・ムイの分を取ったのだ。もうそうと頼まれたのならおごるわ、と思ってたんだがな。実際に財布から直に支払うだったらおごってたんだが、事前に用意してないと出せない封筒でチケット代渡されたら、受け取るしかないよなぁ。
「ありがとう」
「いえ、こっちこそ面倒なこと頼んじゃって」
まあ二人で座るならこうした方が確実ではあるけど。なんだかひっかかるところあるよな。なんか俺に花を持たせてくれてる、みたいな? そもそも今日が初対面だし、【中の人】的でもしばらく前にあって一度ミッションにいっただけの相手なだけなんだけどな。
おっさん的には役得になるから嬉しいことなのかもしれないが、俺はあんま興味ないんだよなぁ。興味あったらソロでゲームなんかやってないっての。でもまあ、通じるコミュニケーションなら楽しいから歓迎だ。思えばリアルで【ミッションブレイク2】の話とかほとんどしたことなかったな、友人自体少ないし、【ミッションブレイク】をやってた友人もすぐにやらなくなっていったから。
実際出た当初はアーケードしかなくて、続けるのは相当気に入ったやつだけだっただろうしな。料金も今よりかなり高かったし。今だと家庭用もあるからのんびり続けやすいはずだけど。やってた友人、もう家庭用でなく家庭をもってしまってるんだよなぁ。
「そういえばシンカンセンスゴイカタイアイスも食べてみたかったんですけどね。車内販売なくなっちゃったんだったら、もう食べれないんですよね」
二人でただ歩いていくだけではなんとなく緊張してきていたから助かった。なんてことない雑談だがこれなら俺でも乗ることができる。
「ああ、それなら今でも買える、はずだ。でもなんかすごく硬くはなくなったらしい」
「ええ!? そうなんだ……」
「食べてみるかい? 俺も聞いただけだしな。ちょっと寄っていこうか、田中さんの分も買うからさ。食前デザートということで」
「え? あ、ありがとうございます」
自動販売機でアイスを二つ買い込んでから、新幹線に乗り込む。指定席だ。
「出発までにはまだ少しかかりそうだ。さすがに走り出す前に駅弁は早いが、アイスならいいんじゃないかな?」
そういって窓側に座った田中さんにアイスとスプーンを渡す。
「やっぱりお代払いますよ」
「いや、カードでしか買えなかったから値段分からないし。だからいいよ」
「そうなんですか。……それじゃせっかくなので頂きますね」
「……スプーンが刺さりますね。残念」
「むしろ食べやすくていいんじゃないか?」
「でも、硬いのが評判だって」
「まあ、ね。もう硬いアイスはあずきバーを食べろってことなんだろう」
「あずきバーってなんですか?」
「え? あずきバー知らない? えっと名前の通りあずきで作ったアイスバーなんだけど、硬いことで有名なやつなんだけど」
「? ああ、アイスキャンディーのことですね」
なんかずれてるな。まあ俺が詮索することじゃないか。
「なんなら大阪で探してみるかい? コンビニでも売ってるところは売ってると思うけど」
「ええ、そうしましょう。お願いしますね、その時は私が支払いしますからね」
表面を削り取って一口。アイスなんて何年ぶりだろうか。一人じゃなかなか食べないしな。うん、おいしい。
田中さんの方を見てみると、彼女にも好評のようだ。良かった。




