地球が終わる日
少女と少年がおしゃべりをしている。
2人きりで、小さな小屋で。
そこは2人の秘密基地だった。
「地球が終わるのよ。あと5年くらいで。」
少女が少年にそんなことを話す。
「そんなわけないだろう。」
少女が突飛なことを言うのはいつもの事と言うように少年は相手にしない。
「終わるのよ?終わるの。ねぇ!あなたは5年後までに何をしたい?」
少年は図鑑のページをめくりながら考え、答える。
「ん~。終わるまで…。終わるまでに、僕は宇宙飛行士になりたいかな…。」
そう言って図鑑に載っている星々をなぞる。
「いいわね!」
少女は手を叩き目をキラキラさせながら少年の夢を肯定する。
「そしたら僕が終わる前の地球の様子を君に話すよ。」
少年は少し誇らしそうに少女に話す。
「えぇ、楽しみにしてる。」
「君の願いは?」
「え~何かしら…。」
少女は首をかしげ考える。
「まぁ地球が終わるなんてそんなすぐには来ないよ。その日までゆっくり考えればいいさ。」
「ね、終わっちゃうんだ。」
ベットに横たわる君。
管がたくさん絡み付いて。
言ったでしょう?と君は少し誇らしげに俺に言う。
「素敵な花ね。アネモネかしら?」
「あぁ。君、好きだったろう。」
赤と紫のアネモネの小さなブーケを持つ手に少し力がこもる。
「えぇ。とても好き。ありがとう。」
そう言って彼女は顔を綻ばせる。
俺は持ってきた花を花瓶に飾る。
「素敵ね。」
「あぁ。」
ベットの脇、ひとつある椅子に俺は腰かける
「…」
「…」
「ごめんなさい。嘘なんて吐いて。」
彼女はひどく申し訳なさそうに謝る。
そんなことどうでもいい。
だって嘘なんかじゃない。
嘘ならどれほど良かったか。
「地球が終わっても…。」
俺は手の震えを隠すように手に力を入れ、彼女の目を見据える。
「まだ星はある。火星だって月だってなんだって…!会いに行く。きっと会いに行く。約束だ。だから、待っていて、忘れないで待っていてくれ…!」
珍しい珍しいお客様。
ここまでの長旅ご苦労様ですわ。
「貴方に私の姿は見えるのかしら。」
私は首をかしげ独り言をもらす。
「見えてるよ。ちゃんと。」
あぁ不思議。
ここでは音が聞こえない。と言ったのは貴方なのに。
私の声が聞こえるのは貴方だけ。
「約束、忘れてなかったのね。」
「君こそ。」
2人で笑い合う。
昔のように。
小さな小さな秘密基地の中のように。
「ねぇ、貴方の思い出たくさん聞かせて?」
「もちろんだよ。長くなる。数十年分だからね。」
「えぇ。楽しみだわ!沢山時間をかけて聞かせてちょうだい?」
かくして少女と青年は月にて再会を果たす。
【アネモネの花言葉】
赤…君を愛す
紫…あなたを信じて待つ