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秋ですね

作者: みいも

 

 夏が過ぎ、日が短くなり始めた頃、

 誰も居ない公園で遠くの空を見ながら、冷んやりとした秋風と、沈んでゆく夕陽を浴びる。


 どこかボーッとしていたが、風の冷たさに我にかえる。

 鼻から思い切り空気を吸い込めば、どこか懐かしいような香りがする。

「なんだっけこれ…」

 何かを思い出しそうで思い出せない、そんな香りに胸の奥がむずむずする。


 今日の自分はどうだっただろうか?

 自分に問いかけてみる。

 貸切状態の公園のブランコに腰掛け、軽く漕いでみた。


 何年ぶりだろうか…

 昔のように上手く漕ぐことは出来ないが、心がウキウキしている。


 漕ぐことを止め、足に力を入れて止まってみた。

 辺りは暗くなっている。

 再び遠くの空を見つめながらさっきの問いに対して答えてみる。


「今日もダメだった…」


 その言葉で、

 ウキウキとした心なんて秒で死んだ。

 現実が一気に襲ってきた。


 今日もダメだった、

 動くことすらできなかった。

 社会ってこんなしんどかったっけ?と思うが、

「しんどいもんだろうが」と言い聞かせる。


 すんなり働けたらどんなに楽だろ。


 家の人間からは白い目で見られ、

 親戚や元同僚には現状を探られる。

 白い目はしょうがないが、

 探りは気持ち悪さを感じるのでやめてもらいたいものだ。

 まぁ、田舎で暮らしている以上仕方がない。

 家の前をワザと通り、車が有る無しを確認されているらしいこの人生…、

 草生やしとく?


 自分自身働きたくないわけじゃない。

 働きたい気持ちのが強い。

 ただ、やりたい事が見つからない。

 甘え?…そうかも。

 でも、中途半端に終わらせる事を恐れている部分がある。

 せっかく勤めたのに数日で辞めたらどうしよう…とか、働く前から変な事になっている。

 合う合わないあるから辞めたら辞めたでしょうがないという考え方を簡単にできない。

 なんてバカバカしい性格なんだろうかと、

 自分自身も困っている。


 でも、きっと働いたらそんな考えもどうにかなるんだろうけども。



 辺りはすっかり暗くなった。

 このままだと、不審者と勘違いされたりお巡りさんに職質されてしまうかもしれない。

 なんだかワクワクしてしまう…(え?


 しょうもない自分で困ったものだ。



 今日もダメだった…、

 でも、明日もダメかもしれない、

 けど、明日は大丈夫かもしれない。


 ほんの少しでも良い方向に向いているかもしれない。


 そう考える事で少しだけ心が楽になった。

 物事はプラスに考えて生きたい。


「生きているからそう思えるわけだし…」


 死んだら、楽しいも嬉しいも悲しいも苦しいもないのだから。



 とりあえず、もう少し生きてみよう



 秋の夜は長いのだから、



 どうにかなるさ、


 どうにかするさ…



読んでいただきありがとうございました。

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