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「こんにちは。今日はとってもいいお天気ですね」
そう言って、にっこりと笑っていろははその女の子に声をかけた。
家出の途中で、誰にも話しかけたりするつもりのなかったいろはだったけど、どうしても、その女の子のことが気になった。
いろはがそう声をかけると、女の子は無言のままで顔だけを動かしていろはをみた。
その女の子の顔を見て、いろははすごく驚いた。
その女の子はすごく(本当にすごく)綺麗な女の子だった。(まるでお人形さんみたいだと思った)
長い黒髪は腰のあたりまで伸びていた。
顔立ちはとても整っていて、その表情は無表情。
年齢はたぶん一四、五歳だと思うけど、その年齢よりも、少しだけ大人びて見えた。
女の子は荷物をなにも持っていなかった。(中学校のかばんも持っていなかった)
女の子はじっと綺麗な姿勢のままで、両手を膝の上で合わせるようにして、その姿勢のまま、全然動いたりしなかった。
いろはを見ている女の子は、なにも言わないまま、ずっと無言のままだった。
なのでいろははその女の子の隣の席に「ここ、座ってもいい?」と聞いてから、女の子が小さくうなずくと、「どうもありがとう」と言ったあとで、静かに腰をおろした。
その間、いろははずっと笑顔のままだった。