紅武凰国の敵対者
from
デビルエンジェルAYA
最終話 始まりに続くエピローグ
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じゃじゃじゃじゃーん!
らららー、ららららー!
古代語で流れるスタッフロール。
レクイエムを思わせる綺麗で壮大なエンディングテーマ。
全てが終わって画面が暗転し、最後に浮かぶのは羽ペンで書かれた『END』の三文字。
全五巻に渡る壮大な物語をすべて見終わった私は……
「は?」
あまりの幕切れにちょっと怒ってますよ。
「え、なにこれ。これで終わりなの?」
「終わりだね」
頷くカーディ。
カーテンの隙間からはうっすらと外の光が漏れている。
気づかないうちにもう明け方になっていた。
徹夜までして一気に見たのに、なんなのこのバッドエンド!?
っていうかナータとプリママいつの間にか寝てるし!
「脱出した人たちのその後は? ソラトさん負けちゃったんだけど? あのラバースとかいうやつらに対する罰は? ミス・スプリングさんは結局プリママなの? というかそもそも世界の謎とか全くなにひとつ解決しなかったんだけど!」
というか紅武凰国の「こ」の字も出なかった。
ミドワルトもビシャスワルトなんて影も形もなかった。
あ、一応ヘルサードが新しい世界がどうたらって言ってたけど……
「まあぶっちゃけ言うと、これずーっと昔の話なんだよ」
「千年以上前なのは知ってるよ」
「じゃなくて、紅武凰国側の時間軸で考えてもかなり前なんだ。この後にいろいろと事件が起きて、既存の国家や文明が滅んで、ミドワルトやビシャスワルトの原型となる世界ができたんだ」
「6巻以降があるってこと?」
「ない。少なくともこの館のどこを探してもなかった」
ないのか。
「紅武凰国か、あるいは別のヘブンリワルトの国家になら残ってるかもしれないけどね。ここまでの記録がこっちの世界に残ってること自体が奇跡みたいなものだし」
「この前のみさっちさんの感じだと、あっても貸してくれなさそうだよね」
私たちが話の続きを見るのもすごく嫌がってたからね。
あと、これもよくわからなかったんだけど、いまのみさっちさんはあのAMリペアってのがさらに進化して、昔の記憶も取り戻したとかそんな感じなのかな?
「とにかく、わたしはもう眠い」
「私もだよ……」
結局、完全に徹夜しちゃった。
続きが見られないのは残念だけど、ないなら仕方ないよね。
「よっと」
ぼわん。
カーディが椅子から立ち上がる。
そして久しぶりの幼少モードに変身した。
「かわいい!」
反射的に抱き着いた後、即座に反撃に備えたけど別に何もされなかった。
「寝るよ。あっちの棚に毛布があるから、三枚ずつ持ってきて」
「あ、うん」
私は毛布を棚から持ってきて二枚をそれぞれナータとプリママにかけた。
そしてなんだか素直な幼少カーディを抱きながら一緒に毛布にくるまっておやすみなさい。
※
……
ぱちくり。
私は目を覚ました。
壁の時計を見上げる。
さっき寝ようとしてから二時間くらいしか経っていない。
私の腕の中には幼少モードのカーディが寝息も立てずに眠っている。
視線を巡らせる。
ナータとプリママも同じような感じ。
毛布を上げてみると、そのままの形で空中で固定された。
なんだこれ。
カーディに毛布を掛けなおして窓際に向かう。
窓の外では鳥が羽を広げたまま大空に停止している。
流読みで周囲を探ってみる。
何一つ動いてる気配を感じられない。
夢じゃないなら、何かの異常事態が起きてる。
……っていうか、これって、
「あ」
数キロ先に人の気配を感じた。
何も動く物のない世界で、それだけが動いてる。
どうやらその人物はこの館を目指して移動しているみたい。
よし。
少し寝て眠気も覚めたし。
散歩がてら、こっちから出向いてみよう。
※
ふよふよ~っと空を飛びながら気配の方に向かう。
強い輝力は感じないけど、ただ者じゃなさそうな気配。
やがて向こうの空から金髪の男性が飛んでくるのが見えた。
「っ!?」
その人は私に気づいて動きを止めた。
どうやらこちらを見ながら様子を窺っているみたい。
私は敵意がないことを示すために両手を上げながら近づいていった。
「攻撃しないですよ。こんにちは」
「……まさか、停止した時間の中で出迎えを受けるとはな。二日前から待っていたのか?」
「え? ううん、気づいたのは十分くらい前ですけど」
「ということはある程度の距離まで近付くと自然に停止空間に入ってくるということか」
停止空間って言ったよ。
やっぱりこれってそうなんだ。
「えっと、これ≪絶零玉≫ってやつ? ラバースの社長が使ってた」
「厳密に言えば新生浩満のJOYとは別物だが、基本的には同じ物だと思っていい」
この人は金髪だけどあの社長と比べたらずいぶん若い。
顔も別に似ているわけじゃないから親戚でもなさそう。
さっきまでの映像に出てきた登場人物ではないみたい。
「それで、あなたはどなたですか? 私はルーチェです」
「シンクだ。お前の父親の友人だよ」
やっぱり聞き覚えの無い名前だ。
「時を止めて近づいたことを無礼に感じたなら謝る。ただ、こちらも長期間の留守を悟られたくない事情があるんだ。隙を見せたらいつ攻撃を受けるかわからないからな」
「誰に?」
「紅武凰国の天使にだよ。俺たちの世界で俺たちと敵対している、俺たちの敵だ」




