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やり手魔女のよく効く薬 ~店を守るために幼馴染の計画に乗って訳あり婚約したけれど、どうやら彼には別の思惑があるらしい~  作者: 咲倉 未来


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20.ミモザ、行方不明になる

 城での用事を一旦切り上げて戻ってきたシャロンは、店の扉が半分開いた状態に違和感を抱く。

 慌てて中に入ると店先で商品棚が倒れていて、争ったような形跡が残っていた。


 家のどこかにミモザが隠れているのではないかと疑い、シャロンは慌てて探し回った。

 一通り見終わって一階に降りてきたところに、クラントが飛び込んでくる。


「ミモザさん、戻っていますか? シャロン殿下、ミモザさんはどちらに?」


「いや、俺も戻ったばかりで、ミモザを探している最中だ」


「なら、何も知らないということですか?」


「何があったんだ?」


 クラントの尋常でない慌てぶりに、シャロンの胸は嫌な予感でいっぱいになる。


「実は、ゴロツキがミモザさんを不当に拘束して連れて行ったんですよ。禁止の惚れ薬を使用した犯人に懸賞金が掛けられているそうです」


「ミモザが惚れ薬を作った犯人だって? 有り得ないだろう」


「そうでしょうね。ただ彼女は女性で弱い立場の調薬師ですから、目を付けられてしまったのでしょう。しかも僕が助けに行ったときには既に他の者が連れだした後でした。なら、ここに戻ってくるかと思って来てみたのですが、無駄足だったようですね」


 クラントが親指の爪を噛んで、悔しそうに顔を歪めた。

 ことを理解したシャロンは、頭を抱えて思考を巡らせる。


 城に呼び出されたのも、まさにトラヴァー学園で使用された惚れ薬の件だった。

 シャロンが一時店を離れた隙に、ミモザが連れだされたのであれば策略めいたものを感じずにはいられない。


「ミモザ、一体どこに」


「僕が知りたいですよ、そんなこと。残念ながら釈放後の情報はさっぱり上がってこないんです」


 クラントが踵をカツカツと鳴らし、大きくため息をついた。


「シャロン殿下は、ここでミモザさんが戻るのを待たれますか?」


「いや、すぐに城へ戻らないといけない」


「そうですか。なら僕のところで人を手配しましょう」


 クラントの申し出に、シャロンは頷くしかなかった。

 ミモザを探し回りたい気持ちでいっぱいだが、城に戻って事態を収束するほうが先だと判断したのだ。


「すまないが、よろしく頼む」


「あなたにお礼を言われる筋合いはありません。僕の大切な未来の伴侶のことですから」


「……。お前」


「今は、シャロン殿下の婚約者ですから配慮はします。解消して頂けたなら、キャンセル待ちの僕にチャンスが来るはずですからね」


 クラントはミモザが(さら)われて今も見つからない状況に腹を立て、シャロンへ八つ当たりを込めた牽制をする。


 シャロンは奥歯を噛み締め耐えた。

 本当はクラントに助けなど不要だと怒鳴りたかったが、ミモザを探すために使えるものは全て使うのだと自分に言い聞かせる。


「店は、クラントに頼らせてもらう。ミモザとの婚約は俺と彼女の問題だ。他の誰にも口を挟ませるつもりはない」


「ええ、僕は機会を狙っているだけですので、結構ですよ」


 しばしの間、二人は睨み合ったあと、無言でその場を解散した。


 シャロンは城へと戻り、クラントは新たな情報を探しに出ていく。


 店にはクラントが呼んだ雇い人が入り、その晩ずっと明かりを灯してミモザの帰りを待ち続けたのだった。




 ◇◆◇◆


 肌寒さに目を覚ますと、部屋は暗闇に包まれていた。

 ミモザは体から落ちかけた毛布を手に取って掛けなおすと、肩を落とした。


「もう、日が暮れたんだ」


 見慣れない家のソファの上で、ミモザは膝を抱えて丸くなる。


 自衛団と名乗る連中に連れ去られたあと、粗雑な作りの不衛生な牢屋に入れられた。

 取り調べもなく、ときおりガラの悪い男がニヤニヤと厭らしい薄笑いを浮かべて覗きに来ていた。


 身の危険を感じたが、逃げることもできなかった。

 暴れれば男が何人も来るかもしれないと思うと、怖くて震えが止まらなくなった。




 ただ、幸運にもミモザは、その日のうちに釈放された。

 身元を引き受けてくれるという人物が来たと言われ、牢屋を出ることができたのだ。


(シャロンが助けに来てくれた!)


 そう思って外に出ると、そこには別の人物が立っていた。


 そして、ミモザは金を払って釈放されただけで、外を歩くと再び捕まる可能性があることも教えられた。

 なんでも学園で禁止薬が使われたことが広まり、犯人に懸賞金まで掛けられているのだとか。

 ミモザを捕まえた連中は、賞金目当ての自衛団を名乗るガラの悪い集団であり、釈放されても身の危険は解消されないのだと言われて途方に暮れた。


 今は言われたとおりに身を隠して、事が済むのを待っている最中だった。


(せめてシャロンに連絡が取れれば、きっとなんとかしてくれるはずだけど)


 その時、ガチャガチャと裏口の扉の鍵を開ける音がした。

 ミモザは思わずソファから降りて、足元に気を付けながら出迎えにいった。

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