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努力嫌いな俺のラブコメ  作者: 魂夢
第一章 彼ら彼女らによる物語の始まり
13/31

第13話 彼と彼女らはカラオケに行く

こんにちは魂夢です。今回が終わったら第二章に突入します!

 ある日のぼっち部にて、こんな話題になった。

 カラオケって行ったことある? と。もちろん数は多くないが俺も扶桑花も行ったことはあった。だが、恋綺檄は行ったことが無いという。


 まぁあいつ神様だし、知識として知ってても実際に行ったことは無いのだろう。


 そこで、俺たちはカラオケに行ってみることにしたのだ。

 そして今、俺は待ち合わせ場所である駅のとあるオブジェクトの近くで二人を待っていた。


「おはよう松葉君」


 背後から声をかけられて、俺は振り向く。


「おう、おはよう」

「恋綺檄さんはまだ来てないの?」


 言って、扶桑花は少しだけあたりを探す。俺がまだ来ていないことを伝えると、彼女はそう、と一言口にして腕時計を見た。


 なんで女の子が手首の内側に腕時計付けてんのかな。それ見るときの仕草すげぇ好きなんだけど。


 俺たちは恋綺檄がやってくるしばらくの間、駄弁って待っていた。


「おーい!」


 駅の方から声が聞こえてきて、俺たちはほぼ同時に振り返る。

 恋綺檄は手を頭の上で振りながら駅の方角から走ってきていた。


 おいおいおいおい! 胸! 揺れてるから! 凶暴だから!


「ごめん! 待った?」


 恋綺檄が息を切らしながら、俺たちにそう尋ねてくる。


「いや、今来たと────」

「集合時間より三分遅れてるわ。遅刻よ」


 ギョッとして俺と恋綺檄は扶桑花を見た。


「な、なによ。三分の遅れはれっきとした遅刻でしょう?」

「わざわざそんなちっこいこと気にすんのにギョッとしてんだよ」


 俺が言うと、扶桑花は頬を膨らませ、あからさまに不機嫌になる。

 膨らませたってダメよ!


「ま、まぁ。遅刻したあたしが悪いし。そんなの良いから早く行こっ!」


 言って、恋綺檄は俺と扶桑花の手を取って歩き出す。


 扶桑花は突然の恋綺檄の行動に驚いたのか、頬を朱色に染め上げた。

 そんな扶桑花を、俺は不覚にもかわいいと思ってしまった。



 カラオケにやってきて最初の問題はお金だ。

 何時間何円と決まっているから、どのくらいカラオケで歌うのかを決めておくべきだった。

 だがそんなこと全く考えていなかった俺たちはまずそこで躓いた。


「じゃあ、とりあえず一時間にして、その後から場合によっては伸ばしましょう。私たち別に歌うのがすごく好きってわけじゃないから、三時間は歌わないでしょう」


 三時間を過ぎればフリータイム料金と同じだ。だから三時間以上ここにいると俺たちは損することになる。


「わぁ! すごーい!」


 部屋に入るなり、恋綺檄はスピーカーやマイクやらをベタベタ触ってバカの一つ覚えみたいにすごーいすごーいと連呼してる。


 カラオケ経験者の俺と扶桑花にとってはカラオケって何するところだっけ状態だ。


 もう五分は歌わずにはしゃいでる。いい加減歌って欲しい。


「恋綺檄さん、そろそろ歌って欲しいんだけど……」

「え、あぁ! ごめんごめん」


 恋綺檄は端末を手に取ってそして────固まった。

 と同時に俺もしまったと思う。彼女は神様で、知識として知っていても人間界の流行なんかについてはよくわかっていないのだ。


「私……、歌える曲なんて無い……」

「ひ、ひとつくらいあるでしょう!? な、ないの!?」


 珍しく扶桑花がうろたえる。あの曲はこの曲はと流行の曲を色々と提案するが、恋綺檄はメロディくらいしかわからないと言う。


 恋綺檄は今日一日とりあえず見学ということで落ち着くと、扶桑花は俺に端末を差し出した。


「え、なんだ?」

「そ、その。一番手はちょっと……、恥ずかしい……と言うか」


 上目遣いで人に物を頼むとか……、こいつわかってるな。


 俺は端末を受け取って、適当な洋楽を入れた。



「いやー! 歌った歌った!」


 主に俺がな! と恋綺檄の発言に心の中でツッコミを入れる。


 あの後結局扶桑花は数曲しか歌わず、恋綺檄もタンバリンをカシャカシャやってうるせぇし、俺はずっと歌わされるわで超大変だった。

 結局フリータイムにしたし……。


「楽しかったわよ」


 扶桑花が俺の肩に手を置いてそう声をかける。そっと微笑み、柔らかな瞳で。


 俺は一瞬ドキッとするものの、いつものように軽口で返そうと言葉を探すが、喉でつっかえて言葉が出ない。


「あたしも! 楽しかったよ!」

「いやお前タンバリン振り回してただけだろ」


 恋綺檄がそう言ったことで、ある種の緊張の糸が切れたのか声が出た。


 ようやく、いつも通りだ。恋綺檄がこれを狙ってやっていたなら流石は神様と言ったところだ。


「……じゃあ、帰るか」


 俺がそう言うと、彼女らは頷くなり返事をするなりして、駅へと向かう。


 俺はその後ろ姿を数歩後ろから眺めていた。

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