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ルイの卒業式編 結婚式前の物語。後編

うちの高校は、キリスト教系の学校で校内にチャペルがある。感染対策で卒業生とその保護者しか中には入ることができないが、下級生は各教室内にあるテレビからその様子が映せるようになっていた。


自分は卒業式が始まる時間まで、先生方に挨拶回りをした。その中には校長先生もいた。校長とは、在学時代仲良くしていた。もともとこの高校の卒業生で高校野球好き。センバツが決まったときに、監督よりも喜んでいた。そこから何故か関わりができて、校内にある校長宅にお世話になったこともある。ちなみに、自分の家庭事情は把握してもらっていて、手続きなどの面倒なことも色々と根回ししてくれたみたいだ。


「お久しぶりです。校長先生。」


「その声は、渡邉くんじゃないか。久しぶりだね。」


「この度は、弟がおせわになりました。」


「ルイくんのことかい?いいやこっちの方がお世話になりっぱなしだったよ。行事での機械関係のことは全てルイくんがしてくれていたから、先生方も助かっていたよ。」


ルイはうちのエンジニアなので学校レベルのトラブルは何も問題なくできたと思う。自分の想像よりもルイは学校に溶け込んでいたのだと少し感心した。


「そうだ。今度、一人社会科の先生が定年退職するんだけど、渡辺くんどうかな?」


突然始まった直接の交渉に戸惑った。願ったり叶ったりだが、自分の中での答えは決まっていた。


「お誘いは嬉しいですが、今回はご縁がなかったということで。もちろん先生になるのが夢でしたし、そのために大学で勉強してきました。でも、今はそれよりも大事なものが自分にあるので。」


「そうか。なら仕方ないな。お姉さんと妹さんにもよろしく言っておいてくれるかい?」


「はい。わかりました。」


チャペルにアナウンスが流れた。もうすぐで始まるみたいだ。


「では、失礼します。」


「そうだね。また、いつでもきておくれ。」


自分は軽く会釈してその場を離れ、母さんの隣に座った。


キリスト教の学校だからといって、卒業式の内容は大きく変わることはない。変わることといえば、讃美歌を歌うことと、校長先生の話の前に聖書を読むくらいだ。担任の先生に呼ばれて一人ずつ卒業証書を校長先生からもらう。校長先生と生徒の前にはアクリル板があって、みんなマスクをしている状態だ。いつもとは全く違った形の卒業式は新鮮でもあり、壁みたいなのがあって少し悲しさもあった。


生徒会長であろう生徒の話が終わると、形式的な卒業式は終わりを迎えた。ここからは生徒主体の卒業式が始まる。例年なら、そのまま2年生の生徒会長に司会が移り、そのまま始まるのだが今年は準備に時間がかかっているみたいだ。大きなスクリーンを準備して、その前にはプロジェクターがあった。準備している先生の中にルイが混じっていて、自分の卒業式まで働くのかと少し可笑しかった。


プロジェクターに移されたのは在校生がとったムービーだった。各クラスから始まり、部活動、委員会などに進んでいき、最終的には各教室に仕込んだカメラから、メッセージが送られた。感動で涙している生徒もいた。後々聞いたが、この準備はルイがほとんど関わっていたらしく、動画の編集のアドバイスだったり、各教室の映像だったり、全てのラインでルイが関わっていた。だから、当の本人は本番全く感動はしなかったみたいだ。内容がわかってしまっていればしょうがない。プロジェクターの横であぐらをかきながらノートパソコンを操作している姿はかっこよく感じた。


「最後に、ルイさん。」


予定にはなかったのか、驚いたようにルイはプロジェクターに目を向けた。


「お手伝いありがとうございました。」


スクリーンに映る全ての生徒が深く頭を下げていた。ルイはそれに応えるようにカメラに向けて腕を上げていた。


卒業式を終えると各教室に分かれて最後のホームルームをするのだがそこには自分は行かずにグラウンドに足を運んだ。センバツに出たことで、卒業生から応援の意味を込めて、寄付金が集まり、自分たちが卒業するとともに綺麗にしていた。


「やっぱりここにいたか。」


後ろを振り向くと、監督がグローブとボールを持ってこっちに歩み寄っていた。


「久々にキャッチボールでもどうだ?」


自分は着ていたジャケットを脱いで監督とキャッチボールを始めた。特に言葉はなかった。ただ、ボールを取る音だけが響いた。


10分くらいで引き上げて、グラウンドの淵に座り、監督と話した。


「今は楽しいか?」


「楽しいですよ。いろんな人に囲まれて少し問題も起きまずがそれを乗り越えて。充実してます。」


「そうか。俺はお前にプロに行って欲しかったんだがな。行けると思ってたしな。」


「そうなんですか?」


「ああ。初めて見る才能のある選手だったから、お前への思い入れも強かったからな。でも今が充実しているのならよかったよ。」


「兄さん。やっぱりここにいた。」


ルイが自分を探してグラウンドまできた。


「もう帰るよ。母さん待ってるから。」


「わかった。急ぐから。監督ありがとうございました。」


「ああ。元気でやれよ。」


「はい。」


自分は監督にグローブを渡して、急いでいるルイについていった。




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