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バレンタイン特別編 甘い?辛い?しょっぱい?バレンタイン

一日遅れてしまいましたがバレンタインの特別な話です。


バレンタインデー。元々は聖人バレンタインを祭るための日。バレンタインは愛の尊さを説いて、皇帝に抵抗したため処刑された。のちに功績が認められて恋人の守り神として祀られるようになったという。


日本には色々な年間行事があるが、ハロウィンに続いてバレンタインの正式な意味合いを知っている人は少ないと思う。日本の企業もうまいこと関連付けて商売をしているものだ。バレンタインとお菓子企業がいい例だがさらにジューンブライトというのも日本の企業が仕掛けたものだ。6月はヨーロッパでは乾季に入ってよく晴れるため結婚式が行いやすい。でも、ここは日本なので梅雨だ。本来、日本のブライダル企業は売り上げが落ち込む時期。しかし、ジューンブライトというのを輸入してきてからは売り上げは好調らしい。これも、戦略の一つなのかなと感心する。


ということで、もっぱらバレンタインの最中なのだが、毎年この日は必ず家でボヤ騒ぎが起きる。これも慣れてくると余裕が出てきて、季節の変わり目を感じることができる。もうすぐ春かなって。


例によってうちの困った2人は料理ができない。にもかかわらず難しいことにチャレンジしようとする。向上心はいいのだが、毎年なんでそうなるのと言いたくなるような問題を起こす。今年もキッチンからは普通聞くはずのないような叫び声が響いていた。流石に心配になったので声をかける。


「手伝おうか?」


「寛は手伝わないで。」


手伝おうとすると拒否させる。これも毎年恒例。キッチンには付箋が大量についたバレンタイン特集の雑誌が置いてあった。今日のために準備してくれたんだなと少し嬉しい気持ちになったが、キッチンに置いてあるチョコレートには必要ないであろうものを見たときに、ゾッと寒気がした。それを見て見ぬふりをして、自分は現実から目を逸らすためにT Vをつける。どこもかしこもバレンタイン特集。今年はコロスケの影響で自分に高級なチョコを買うのがブームらしい。この自粛期間に少しでも心の栄養になればいいなと思う。自分がチャンネルをザッピングしているとキッチンから「できた」という声が聞こえた。気になったのでその様子を見に行く。


「うまくできた?」


「今、固めているから楽しみにしててよ。」


えらく自信満々の真心と愛。キッチンはぐっちゃぐちゃだったが、おそらく完成品であろうものは綺麗にできていた。


「そうか。楽しみだな。なら、2人ともお風呂入ってきな。顔にもチョコついてるから。片付けは俺がやるよ。」


「本当?ならお願いします。お姉ちゃん行こう。」


真心は申し訳なさそうな顔をしていたが愛に連れて行かれてお風呂場に向かった。


「さて、片付けるか。」


あちこちにチョコが飛び散っていた。チョコのついたヘラもそのままシンクに投げてあった。自分が心配していたものは少し丸くなった感じで置いてあった。


片付けを終えると、仕事で出ていた父さんが帰ってきた。自分は父さんと顔を見合わせて、真剣な面持ちで1回うなずく。


夕食後、自分はトイレに行く。自分の胸を2回叩いて気合いを入れる。トイレから戻り、席に着くと2人から綺麗に梱包された、チョコレートをもらう。


「はい。バレンタインのチョコ。」


「ありがとう。」


自分はそれを手に取って開ける。


形は綺麗にハート形で一見美味しそうだ。


「綺麗にできたね。」


「そうなんだよ!少しは成長してると思うんだ。食べて食べて。」


愛に促されるがまま、父さんと一緒のタイミングで口に運ぶ。


最初はよかった。ちゃんとしたチョコレートの味がした。おそらく市販のチョコレートを溶かして型に流したのだろう。そこまではいい。歯を進めていくと、何か固いものにゴリッと歯が当たる。頭の中はチョコレートを食べていると思っているのに、なぜか口の中に塩味を感じる。それもかなり強く。チョコレートの甘さなどどこへやら。海水を口に含んだみたいだ。その後に、強烈な辛味が襲ってきた。鼻に抜けるツーンとした味。何が入っているのか、一瞬で判断できた。


「これ何入ってるの?」


「気づいた?隠し味に岩塩とワサビを入れて見たんだけど。どうかな?」


隠す気がない隠し味。むしろ隠し味はチョコレートの方で、わさびと岩塩をそのまま口に運んだみたいだ。わさびの辛さが目にくる。正直な感想を言おうとするが、目だけを動かして、父さんのほうを見る。父さんも自分の顔を見て、「耐えろ」とサインを送ってきた。


「少しワサビが効きすぎだと思うけど美味しいよ。」


無論、美味しいはずがない。芸人さんではない限り味合うことのできない、強烈な味だった。


父さんと自分は強引に喉に流し込んで、ワサビがキマっている目で2人に、


「ありがとう。おいしかったよ。」


と、笑顔で感謝を伝えた。


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