ミモザ part18
料理のできる2人が組んだのでいつもよりも量は増え、質もよくなった。特にルイの作ったローストビーフは好評で後でレシピを教えてもらったりした。父さん以外の3人に片づけを任せて自分はルイを連れて父さんの部屋に向かった。
「寛です。ルイから話があるみたいなんで連れてきました。」
入室の許可が出たので部屋に入った。相変わらず真っ白で本ばかりの部屋。夜なのに目がチカチカする。ルイは初めて入ったらしくて、部屋の雰囲気に驚いていた。
「そうか。ルイは初めて入るんだな。どうだ?かなりへんな部屋だろ?」
「はい。変というか落ち着かないです。」
「それもそうだ。立体感がなかなか感じられない部屋だからな。俺は色が識別できないから光の加減でしかものを識別することができない。だから、俺が1番わかるもので全面を覆ったんだ。」
「すこしやりすぎな感じもしますけど。さすがに本のタイトルくらいは見えても問題ないでしょう。」
前に父さんに初めて相談してからはこの部屋にちょくちょくくるようにしていた。父さんと話す時間が自分にとって大切な時間になると感じたから。そのためにはこの部屋になれなくてはいけなくて少しずつこの部屋になれるように率先してこの部屋の掃除をし始めた。父さんがいるときは部屋に訪れて会話をするように意識した。
「見えないからいいんだよ。どの本に今日は出会うのか毎日楽しみだろ?なんでも見えてしまったらそれに目がくらんでしまう。目移りもする。運命も出会いも運によるものだ。それを大事にできないのは人間として大きく損することになるからな。何が自分を支えるものかは自分ではわからない。それも運命で出会いだ。だからこそ、日頃からそういうことになれる必要がある。俺はそうして生きてきたからな。」
最近気づいたのは意外と父さんは自分語りが好きなこと。ただうるさいだけのおじさんの自慢話ではなく、どこか自分たちの悩みを見透かしたように的確な自分語りをする。単純に響く言葉が多い。
「ルイからの話はある程度予想がついてるよ。おめでとう。自分の子供たちの決断に親として誇らしいよ。ルイにとっては俺よりも寛の方が父親みたいなところがあるのかもしれないがね。」




