ミモザ part13
数日がたった。真心からルイたちの動向は聞いている。ルイは仕事でのありえないミスもなくなり、すこしだけ明るくなったらしい。詳しいことは聞けていないらしいが、近いうちに自分にも話し合いの報告が来ると思う。一方の自分の日常はあまり変わらず、今まで通りに花屋と授業、会社の仕事に追われる日々を送っていた。少しだけ変わったところといえば、『結婚』という言葉に少し過敏に反応するようになったくらいだろう。夜にニュースを見ていると事実婚についての報道があった。国に結婚の報告をしているものと、それ以外のものの違い。例えば、大きな病気をして、最後の時、みとってもらえない可能性があったり、様々な保証を適用することができなかったりするらしい。そのニュースをふたりと一緒に見ていた。顔を見合わせて、何も言葉を発さない。2人もお互いに考えることがあるみたいだ。このニュースを見て僕らは家族になれない。そう思っていた。この時、自分の中にある選択肢が出た。でもこれは、自分がずっと避けていたことで、自分にとって大切なものを失う可能性があった。隣を見て、2人の顔をそれぞれ確認する。自分の悲しげな顔に心配したのか愛が声をかけてきた。
「どうしたの?」
「いいや。自分の中である答えが出たんだけど、その選択を取っていいのか少し悩んでるんだ。」
「そうなんだ。」
愛は詳しくは聞かなかった。その選択には、自分が入る必要がないと思ったのだろうか?真心は手を握り、心配そうにしている。
「大丈夫だよ。」
自分は真心の手を握り返す。その日は、そのまま2人には何も語らずに終わった。
いつも通り、花屋の業務に入る。何事もなく、いつも通り。なんのミスもなく、仕事をこなす。午後からは大学の授業終わりの愛が入り、自分は病院で授業をする。最近は、みんなで映画を見て、その感想を聞いたりしている。一つの映画に何時間もかけながら見る。途中で止めたりして、主人公の感情の変化とか関係性の整理をしたりする。これが意外に好評で、家で真似してくれていたりする。隼人も参加してくれているため、準備に時間がかかるものも積極的に取り入れるようになった。隼人にもいい影響が出てきていて、学校で書いた作文で県から表彰を受けたらしい。前に診察に来ていたお母さんから聞いた。最近は前向きに夢に向かって頑張っているらしい。部活に勉強、学校生活も前よりも明らかに良くなっていた。でも、自分の準備の手伝いをしているときにたまに悲しげな表情になる。さくらとの別れがあってからまだ、数ヶ月しか経ってない。いろんなことで悲しさから気を逸らせているのかなと思った。そう感じた時は優しく頭に手を置き、何も言わない。自分からいうことはもう何もない。もう全部隼人には伝えた。あとは、自分で乗り越えるしかない。その隼人からルイのことは聞かないようにしている。あいつらがしっかりと自分から言ってくるのを待つことにした。もし、ルイに何か問題があれば隼人が真っ先に自分に言ってくるだろうから問題はないのだと思う。
仕事終わり、結さんに話しかけた。
「結さん。明日、午前までにしていただけませんか?」
「別にいいけど、どうしたの?」
「少しいかなきゃいけないところがあって。突然のお願いになってすいません。」
「わかった。何か事情があるみたいだから、いいよ。」
「ありがとうございます。それに、もうひとつお願いがあるんですけど、いいですか?」
「いいよ。何かな?」




