ミモザ part7
久しぶりの更新です。
とは言っても、1週間お休みしただけですけど。
これからも頑張りますね。
ルイの真剣な面持ちに少しだけ緊張感がある。
「時間がないからもう本題に行くね。俺さ、高校卒業したら早くひかると結婚したいんだ。どうかな?」
ルイからでた予想からかけ離れた発言に戸惑う。
「ひかるも俺ももう働いている身だし、ひかる以上の人がいるとは思わない。だから、早めに一緒になりたいんだ。」
「そうか。俺はいいと思うけど、家とかいろいろな問題はこれから出てくるぞ。第一、ひかるにはもう話したのか?」
ひかるに相談されてから約1ヶ月。話を聞いていてまず頭に浮かんだのはひかるの顔だった。断ることはないだろうが、急な決断に戸惑うことがあるかもしれない。
「まだだろ?ちょうど俺が休みをもらう前に相談されたんだ。このまま自分がルイの隣にいていいのかって。自分の存在がルイがしたいことの邪魔をしてるんじゃないかって。その時は一緒にいた恵さんの力を借りて納得してもらったが、お前が思っている人はそういう悩みを持っていることも考えなきゃいけないぞ。俺もよく真心と愛に言われるけど1人で考えるんじゃなくて一緒に悩みたいんだとさ。しっかり、2人で話し合って自分たちの気持ちを伝え合ってからでも俺はいいと思う。あと、相談するなら俺じゃなくて父さんの方がいいぞ。」
自分の発言にルイは少し考え込んでしまった。そこで、時間が来たのか、父さんたちを連れてひかるが扉をノックする。自分はルイの耳元に近づき、ひかるには聞こえないような小声で、
「大丈夫。ちゃんと話し合ってからでも遅くない。いろんな人の話を聞いてしっかり話し合ってから決めなさい。大きな決断になるんだから。」
ルイにそう言い残し、自分は父さんとひかる、お医者さんを招き入れた。3人が部屋に入ってきてもルイは難しい顔のままだ。その顔を見て心配になったのかひかるが自分に近づいてくる。
「なんの話してたの?」
「まあ、いろいろな。」
自分から話す話ではないので返答を濁す。その対応にひかるは不満げな表情をする。
ルイの状態はそんなに悪くないため、一日様子を見て、退院になる。自分と父さんはルイのことをひかるに任せて家路に着く。そのほうが今のルイにとっていいだろうし。
帰りの車の中。
「どうした?思い詰めたような顔して。」
父さんが話しかけてくる。運転は父さん専属のドライバーがしている。父さんは視覚障害で色の判断ができないし、自分の運転は怖いと父さんにも言われた。狭い空間の中でドライバーの方にも聞かれる可能性があったが忙しい父さんと2人きりの時間はなかなか取れないので相談することにした。
「ルイと少し話したんだ。ルイは早めにひかると籍をいれたいらしくて、自分に相談してきたんだよ。今度時間がある時にルイと時間を作って相談に乗ってやってほしい。」
「そうだったのか。まあ、俺が相談にのったところでルイは自分で答えを出すと思うが。お前に似てな。」
ルイとの血の繋がりはもちろんない。幼少の頃からのつながりもない。多分、たまたま性格が似ていたのだろう。自分とルイはいいところも悪いところもそっくりで、会社の中で自分たちの関係を知らない人間には本当の兄弟だと思われている。
「そうだね。いいところも悪いところも似てるからね。」
「真心から聞いたけど、何か決断しようとしてるんだろ?2人のために。お前が2人のことしっかり考えているのはわかるが、あまり思い詰めるな。結果的になるようになったで十分だ。お前もうちの大事な家族なんだから。」
自分の頭に父さんの手が置れた。もういい歳で少し恥ずかしいのだが、肩の荷が降りた気がした。大きくて暖かい、優しい手だった。
数日後。久しぶりの授業を終えたあと、花屋に部活終わりの隼人が来店した。いつも通りに彼岸花を包み、会計を済ませると少し話があると仕事を結さんと愛に任せて、駐車場にあるベンチに腰を下ろす。
「話ってなんだ?仕事中だから早めに頼むな。」
自分のことを少し怒ったような表情で見つめてくる。隼人に悪いことをした覚えがないのでなぜそんな表情なのかわからなかった。
「ルイさんとなんか話した?」
「ルイとか?ああ、倒れた時にちょっとな。」
「最近、ルイさんがもっと元気がなくて、先生がなんか変なこと言ったのかと思ったから。」
ルイからの連絡は病院での会話以降ない。
「そんなになのか?」
「うん。何か思い詰めたみたいにずっとなんか考えてる。この前だって自分の質問をしてもどこか上の空で聞いてないし。会社の人も最近、あり得ないようなミスをしたり、ため息が増えたりしてるって。」
いつの間にか会社の人間とも仲良くなっている隼人に驚いたが、1番驚いたのは、ルイがミスをしても、自分に連絡が来ないところだ。ミスじたい珍しいのだが、会社のことは細かいことでも毎日真心から聞いていた。そんな話題は一切出ることはなかったし、そんなそぶりすらなかった。
「そうなのか。ありがとう。知らせてくれて。今度なんか奢るよ。」
「ほんと?駅前にあたらしいラーメン屋ができたからそこに行きたい!!」
「わかった。今度な。」
家に帰るや否や自分は真心を部屋に呼んだ。真心は何かを察していたみたいで少しおどおどした感じで自分の部屋に入ってきた。
「何を聞かれるかわかってるみたいだね。」
真心は静かにうなずく。
「なんで隠してたのかな?細かいことでもいつも報告してくれるじゃんか。しかも、ルイのミスだったら尚更。」
「仕方ないじゃない。ルイに黙ってて、って言われたんだから。」
やっぱりそうか。なんとなく目星はついていた。真心が誰の頼みもなく自分との約束を破るわけがない。ルイが携わる仕事はどれも重要なものばかりで下手したら会社が大きく傾くことだってある。
「今回はあまり大事じゃなかったからいいけど、ルイの仕事はうちの中核の部分が多いから尚更黙っていて欲しくなかったな。」
「私もいるし、ルイもミスにすぐ気づいて直したから問題なかったよ。ルイから言われたのは兄さんに心配かけたくないからって、言われたら何も言えないじゃない。」
「そうかもしれないけど、もしそのミスが大事で取り返しがつかないものだったら?うちにはいっぱい社員がいるんだよ。僕たちはその人たちの生活も背負ってるんだ。真心やルイだけでも解決できるかもしれない。でも、人手は多い方がいい。だから、俺がいるんじゃないか。」
真心は俯いている。
「今回のことは仕方ないけど、次からは念押しでお願いしていいかな?」
「じゃあ、私にルイとの約束を破れっていうの?」
少しだけ真心の声のボリュームが上がった。真心の言葉に自分は返答に困った。
「他の人なんてどうでもいい。大切なのは家族だと思う。寛は違うの?」
「違わないけど・・・。」
「私は小さなお願いで大きなミスを犯してしまったとしても、それが家族の願いならいいと思う。前から、寛が言ってたことだよね、これ。自分は家族のためなら周りにどう思われようがいいって。」
確かに言ったことがある。今もそう思っている。でも、何か自分の中で引っかかって仕方ない。それが何かはわからない。
「話はもういい?そろそろ夕飯だから。」
怒った真心は勢いよく扉を閉め、部屋から出て行った。
真心が出て行ってから自分の頭の中はぐっちゃぐちゃだった。今までの自分ならあり得ないことだった。なぜなら、真心が言っていたことは最近まで自分が本気で思っていたこと。でも、その考えが今の自分の中でどうしても納得できていなくなっていた。
「どうしたの?すごい音したけど?」
心配してくれてか、しばらくして愛が自分の部屋にきた。
「ごめんな。心配させて。」
「珍しいね。お姉ちゃんと喧嘩なんて。」
「いや、多分自分が悪いんだ。自分の中で考えが整理できてないんだ。」
「そっか。なら、いい方法知ってるよ。」
愛は自分の机の中からスケッチブックを取り出して自分の前に置く。
「考えがまとまらないのなら、何を悩んでいるのか書くの。そうしたら、何か見えてくるものがあるかもしれないよ。」
愛にしては不自然なくらい優しい。
「私ね。2人には仲良くして欲しいの。寛の事はもちろん、お姉ちゃんも大好きだから。お姉ちゃんはライバルだけど、それ以上に3人でいることが好きなの。だから、しっかりしてね。私たちはもう、寛から離れる気はないから。」
「そうだね。俺がしっかりしないと。決断するって言ってしまたからね。」
「そうだよ。待ってる身にもなってよね。」
自分はペンをもち、横で愛に見守られながらスケッチブックを開き、ペンを走らせる。
2日後。ルイに会いに行くために出社する。今月はもうすでに、ノルマは達成しているため、無理やり行くこともないのだがルイのことが心配になり結さんに無理を言って花屋を休ませてもらうことにした。あの日から、真心とは口を聞いていない。父さんにも母さんにも心配されたが、心配はいらないと説明した。愛とはあの後、3時間も話した。自分が今思っていること、考えていること、悩み、ずっとある違和感、何もかもスケッチブックに書き出した。愛が言っていたように視覚化することで不思議と自分が悩んでいることがいろいろなところと繋がっていった。今まで自分は世間のことなんてどうでもいいと言ってきたが、それは口だけだったこともわかった。むしろ、誰よりも気にしていた。自分の置かれている状況を肯定するために自分に嘘をつかせていた。自分がスケッチブックを書いている横で愛は笑いながら見守っていた。なんで笑うのかと聞くと、自己分析できていそうで全くできてなくて面白いだとか、泉のように出てくる自分の悩みが面白かったらしい。スケッチブックにはビッシリと自分の頭の中のことを書いた。その枚数は計3枚に及んだ。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
続きを楽しみにしていてください。
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