ミモザ part6
長編の更新になります。
旅行を終えてから数日の出来事でいよいよ本編に入っていきます。
3人の絵馬は仲良く隣同士にかけられた。その絵馬をそれぞれ仲良く隣同士で見る。
真心の絵馬には
『家族みんなで仲良くいつまでもいれますように。』
愛の絵馬には
『みんなでいつまでも。』
愛の絵馬は少し言葉足らずな感じはするが2人とも同じような内容だった。自分だけが少し違ったものだったが願っていることはあまり変わらない。自分が書いた絵馬をじっと見つめる2人。
「そろそろ行こうか?」
新幹線の時間も迫っていたため、2人に話しかける。
「うん。そうだね。行こうか。」
2人とともに、神社を後にする。
新幹線の中では3人とも熟睡してしまっていた。自分の両肩には2人の頭があった。自分の膝にはブランケットがかかっていてその中で手を繋ぎながら眠っていた。
家に着くとぐすぐすとひとり泣いているみたいだった。声は完全に母さんのもの。何かあったのかと荷物を玄関においたまま急いで3人揃って向かった。リビングで1人テレビもつけずに暗い部屋で母さんの鳴く声だけが響き、後ろ姿からは何も感じ取れなかった。
「母さん。どうしたの?」
自分の問いかけに母さんは振り向いた。何か手に持っている。
「あら、帰ってきてたの?」
呑気に答える母さんにさらに質問をする。
「玄関入ったら母さんの泣く声が聞こえたから3人で急いできたんだよ。何してるの?」
母さんはすこし恥ずかしそうに口を開く。
「見られちゃったらしょうがない。これよ。」
母さんは手に持っていたものを開いて自分たちに見せてきた。それは自分たちが幼い頃のアルバムだった。ここには自分たちが書いた作文などが一緒になっていた。
「いや、大きくなったなって。作文とか読んでたら涙がね。恥ずかしいけど暗い部屋で1人、3人の作文を読んで泣くのが好きなのよ。」
「何もなかったならいいよ。ほっとした。じゃあ、電気つけて荷物置いたら、お土産買ってきたからそれ開けようか。」
3人並んで安堵し、玄関に置きっぱなしの荷物を自分の部屋に片付けにいった。母さんが見ていたアルバムにはまだ自分がこの家に来る前のものもある。2人の母さんが自分のこう言ったものをちゃんときれいに残してくれていた。特に2人目の母さんはこう言うのに弱くて何気なく書いていた手紙とか、メモとかもしっかり残してくれていた。その手紙にもちゃんとお返事をくれて、それは自分の机の中にあるクリアファイルにどれも大切に保管されている。2人目の母さんが死んだとき自分はそのクリアファイルから手紙を出して泣きながら読んだことを覚えている。それ以降も人生の帰路に立った時などには必ず母さんからの手紙を読むようにしている。何か力をもらえそうだから。
荷物をあらかたかたし、お土産を開けるために下に向かう。自分以外はもうすでに片付け終わっていた。だがおそらく愛は荷物をそのまま部屋に投げ込んだだけだと思う。
「遅いよ。もう結構開けちゃったよ。」
テーブルにはお菓子や置物が散乱していた。お菓子のいくつかはもうすでに封を切られており、母さんと愛がすでにお茶と一緒に楽しんでいた。
「開けるの早いよ。食べるのはいいけどしっかり父さんの分は残しておくんだよ。後、食べ過ぎで夕飯食えなくなるとかはなしにして。」
時刻はすでに5時半。そろそろ夕飯の時間になる。こんな時間にお菓子を食べると夕飯が食べれなくなって、変な時間にお腹が空く。
「わかってるって。そんなことより早く開けよう。」
おそらく、この旅で一番の買い物のガラスの置物に手をかける。真心、愛はそれぞれ自分が選んだものに手をつける。自分が買ったものを確認しようとするが、見覚えのないものが複数ある。
「これ何?買った覚えないけど?」
2人がニヤニヤしてこっちを見る。これらを買ったときに店主と話していたのはこれか。
「店主の方がプレゼントだって。自分の作品を気に入ってくれてありがとうだってさ。」
店主がプレゼントしてくれたのは明らかに1つ数万円するようなガラス細工のコップが3つ。それに加えて、両親にだろうか?梱包されてよくわからないがおそらく置物のようなものが3つあった。
「こんなにもらってきたのか?」
「よっぽどにぃにが買ってくれたのが嬉しかったみたいだったよ。自分が初めて作ったものがちゃんと評価されてこんな嬉しいことはないって言ってたし。」
正直、もらいすぎで少し店に悪いなと思ったが、今から返しに行くのも違う。自分がもし知ったら、返しに行くだろうと見込んで2人は黙っていたのかもしれない。
「もう返しにはいけないから、ありがたくいただくか。でも今度行った時はしっかりお金を払って買い物しなきゃな。」
店主からもらった置物を母さんに渡す。梱包をといた母さんの目は一瞬で輝いた。
「何これ!?可愛い!!」
梱包の中身はガラスでできた小鳥だった。自分のものと似たようなデザインだが、自分のよりもきれいに纏まっている感じだ。それを見て、自分のものの梱包をとく。
「似てるわね。デザインが。」
急にしっとりした雰囲気を母さんは出す。
「そうだね。でも、自分はこっちの方が好きだな。」
「そうね。わたしもそっちの方が好きかも。」
初めて作ったものにはその人の思いが強く出ていると思う。後から出したものより、1番最初のものが評価される方が喜びも一入。単純にその人の思い入れが強く出ている。形は少し歪だが、初めては苦労するもの。その苦労が作品を輝かせてくれていると思う。
「3つあるけど、もう一つはルイにあげていいかな?」
「当たり前よ。一緒には住んでないけどルイもうちの家族でしょ。」
「今度、私が持っていくよ。」
ルイに渡す役は真心に任せた。買ってきたものの開封が一通り終わり、自分の部屋に飾りに行く。この青い鳥が幸せを運んできてくれるために自由に飛ばせてあげたいがそれはできないので自分が1番、目にするであろう机の上。ガラスでできているため、壊れないようにしっかり固定して、透明な箱の中に入れる。
旅行後の自分の休日はほとんど家にいた。読みたかった本を読んだり、撮り貯めた録画を消費したり。1週間の休みはとてもいいものだった。
多少、休みの期間をぐーたらで過ごしてしまったためすこし体が重い。今日から仕事だと言うのに気がなかなか進まない。休み明け一発目の仕事は花屋での接客。いつも通りに愛と一緒に出勤する。自分のいない期間も愛と結さんで営業していた。力しごとが必要な時は、中村先生がきてくれていたらしい。愛によるとなんかいい感じの雰囲気でなかなか間に入れなかったらしい。自分がいない間はそれを見て楽しんでいたらしい。
「休みはどうだった?」
出勤すると同時に結さんに話を振られる。
「充実してました。気を使っていただきありがとうございます。」
「いいや。今まで休みがほとんどなかったのが問題だったんだよ。今時そう言うのかなり厳しいからね。寛くんのスケジュールのこと考えてなかったから。今度から少し考えるね。愛ちゃんもいて、人手は必要最低限あるし。」
「ありがとうございます。助かります。それで、少しなんですけどお土産を。」
自分は結さんと日向さん用のお土産を渡した。よくあるご当地のお菓子だ。
「別に気を使わなくてよかったのに。」
「お世話になってるので。後これは個人的なものです。」
自分は神社で買った商売繁盛のお守りを渡した。
「ありがと。気が利くね。」
結さんは鍵にこのお守りをくくりつけた。
「じゃあ、早速だけど力仕事お願いしようかな。」
「わかりました。ませてください。」
初日の仕事はかなりハードだった。品出しからその他にも重いものを計2時間は運んだ。中村先生も手伝っていたみたいだが、一応、店員ではないのですこし遠慮していたのかもしれない。自分がいない間にかなり店先がすっきりしたなと思っていたが、裏に大量の花があった。休み明けで体が怠けていた自分にはいいリハビリになった。
2日後に休みが明けたことを日向さんに報告に行く。ここ数日は大事な研修会があったみたいで病院にはいなかった。
「おかえり。休みはどうだったかな?」
「おかげさまでとてもいいものでした。」
「結とも話したんだけどね、今度から寛くんのスケジュールのこと考えようってことになったんだ。さすがに授業をしにきてもらってからは過密すぎた。楽しいことだろうけど、体が基本な職業だからね、健康でいてもらわないと。こっちの仕事だけじゃなくて、向こうのほうにも集中できるようにしなきゃいけないからね。」
「お気遣いありがとうございます。」
「花屋も授業も、急な用事があったら変えられるように調整しておくよ。後、お菓子ありがとうね。」
お土産のお菓子が気に入ってもらったみたいで軽く結さんと言い合いになったみたいだ。
「授業は来週からにするからよろしくね。」
「わかりました。」
生徒にはお土産を買ってない。お菓子とかをあげると食事制限のある子たちは食べられないと思ったからだ。こればかりは仕方ない。
医院長室を後にして、花屋の通常業務に戻る。今日は、愛が大学なので結さんと自分の2人だけだ。平日の昼間。親御さん以外の利用者はいないので、客入りは緩やか。十分に2人で回せるレベル。こうなると結さんとの日常的な会話が増える。
「いいところだった?旅行先?」
「はい。いいところでしたよ。ご飯もおいしいし、温泉もよかったです。今度、慰安旅行ができたらいけたらいいですね。」
「無理よ。高すぎる。」
「確かに。高かったです。」
少し自分は肩を下ろす。
「でも、愛ちゃんめちゃくちゃ喜んでたよ。2人の時。寛くんでよかったって。」
普段、自分にも話さない事を結さんには話しているみたいだ。まだ、出会って数ヶ月だと思うのだが相当仲良くなったな。愛の人間関係のスキルにすこし驚いた。
1週間という長い期間仕事を禁止されたことが今までなかった。大学在学中も毎日のように会社のメールを確認をしていたりした。仕事用のパソコンはパスワードを変えられていたため開くことは叶わなかった。仕事を禁止されたとしても、仕事がなくなるわけではない。花屋の閉店後、家に帰りパスワードを元に戻したパソコンを開いたら、尋常じゃないメールの数が届いた。数は99+となっていて、その全てにある程度目を通さなければいけない。休みをもらった意味とは?と疑問を持つほどだったが、それだけ自分が必要とされていると思い、仕方なくメールを開く。
深夜の3時。メールの確認がいよいよ後半になろうとした時、珍しくルイからのメールが届いていた。いつもならプライベート用のアドレスに送ってくるのだが、おそらく、ルイなりに気を使って仕事用のところに送ったのだろう。だが、休み明けでかなり体をいじめてしまったのか睡魔が限界に達してしまった。どこまで読んだのかのいい目印になると思って、ルイのメールを読まずに寝てしまった。
次の日も、その次の日も色々と立て込んでしまってルイのメールを読むことができなかった。そして、自分がルイのメールを確認したのは5日後になってしまった。
5日後。ルイが倒れたという連絡が来て、結さんにかなり急だが休みをもらい、会社近くの病院に向かった。
病院に着く。病室でルイは寝ているみたいで隣にはひかるが座っていた。ルイたちの姿を確認して、すこし安堵した自分はルイの容態を確認しにお医者さんのところに向かう。診療室には父さんも来ていた。
「お前も座れ。ちょうど今から聞くところだ。」
父さんの隣に自分も腰を下ろす。
お医者さんの話によると、どうやら倒れてきた撮影機材からひかるを庇ってルイが下敷きになったみたいだ。命に影響はないみたいだが、すこし頭を打ったみたいで今、意識が戻っていないらしい。救急車の人の話を聞くとひかるはパニックになっていて、撮影をしていたモデルさんが連絡をくれたみたいだ。処置が終わっても、あの場所からまったく動かずにいるらしい。お医者さんと話していると看護師さんが自分たちを呼びにきた。「ちょうどよかった。目が覚めたみたいです。」
「詳しいことは俺が聞くから、寛は先に行け。」
父さんのいう通りにして、自分はルイがいる病室に向かう。病室の前で自分は少しだけ入るのに躊躇する。ひかるが泣きながらルイに頭を撫でられている。こんな姿自分には見られたくないだろうなと思ったが、あまり時間もないし隣で案内してくれた看護師さんもどうしましょうかみたいな顔をしている。ひかるには悪いが早めに病室には入らせてもらう。自分なりの気遣いで姿を見せないまま少し強めに病室の扉を叩く。
「はい。入っていいですよ。」
ルイから返答があったため看護師さんと入室する。必死で涙を拭ったのだろうかヒカルの目元は腕で擦ったようなあとがあった。でも、まあ目が真っ赤なので隠すことはできていないが。
「大丈夫か?」
「うん。なんともないよ。少し痛い部分があるくらいで。ひかるに怪我なかったからよかったよ。」
ルイがひかるの頭に手をおくと、ひかるの目は再びうるっとし始める。
「そうか。なら心配はないな。」
元気そうなルイの顔を見てすこしだけ安堵した。
「じゃあ、俺は父さんに報告しに行くからゆっくりしてな。」
「いいや。ここはひかるに行ってもらおうかな。顔洗ってきた方がいいんじゃない?そのついでにさ、父さんたち読んできてくれるかな?」
ひかるはわかったと言って、看護師さんと父さんたちを呼びに行った。病室にはルイと自分の2人だけ。
「話があるんだろ?2人っきりになるってことは。」
「そうだよ。兄さん、最近忙しくて自分からのメール読んでないでしょ?だからいい機会だからここでと思って。」
「長くは話せないぞ。」
「いいんだ。ちょっとした相談だし、兄さんなら喜んでくれるから。」
自分はさっきまでひかるが座っていた椅子に腰を下ろした。
最後までありがとうございます。
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