ミモザ part2
長編の続きになります。
是非最後まで読んでください。
今日は短編はおやすみです。
花屋、授業は休みでも自分にはもう一つ大きな仕事がある。うちの会社は基本的に希望がない限り部署を移動するということはない。希望があったとしても適性がなければ移動はさせない。少し特殊な給料の出し方なので移動されてしまうとその人の評価の仕方を1から変更しなければならないからだ。その分、他よりはいい給料を出していると思う。今日の仕事はその給料の計算だ。でも、給料の計算はルイが作ったソフトで1時間かからない。名前と評価点などを入れるだけで勝手に計算してくれる。税金の計算も一瞬だ。自分で計算することもないし面倒な入力もほぼない。セキュリティもしっかりしていて今まで外部に情報を流れたことは一度もない。というよりもルイがいることが一番のセキュリティになっている。会社にいるときは基本的に真心と帰るのだが仕事が早く終わりすぎて暇になってしまった。
「あれ。先生今日は出社する日なんだ。」
会社内の自分のデスクがある部屋に学校を終えた隼人が入って来た。
「今日は部活はいいのか?」
「今ちょうどテスト期間中だから部活は休み。そんなことよりも仕事しなくていいの?」
「終わって暇なんだよ。」
「そうなんだ。ルイさんはまだ?」
「あと1時間は帰ってこないと思うぞ。」
「なら適当にくつろいでます。」
隼人は自分の部屋のようにくつろぎ出す。まあ、この部屋はほぼルイのもののようなもんだ。おそらく自分よりも隼人の方がこの部屋に来ていることが多いだろう。自分は平均しておの部屋に月一ペースでしかこないから。
「最近どうだ?」
「順調だよ。ルイさんのおかげで成績も上がって来ているし、何より親がめちゃくちゃ喜んでる。」
「なら良かった。」
「先生は気にしすぎなんだよ。ルイさんも言ってたけど他人のことを考える時間が多すぎる。もっと自分の幸せのことを考えて欲しいって。そんなんだからいつまでたっても大人の余裕を兄さんからは感じられないんだよってさ。」
自分には思い当たる節はなかった。今の自分は十分幸せを感じている。でも、側から見れば違うみたいだ。
「そう言えば最近ルイさんの元気がなくてさ。なんか悩んでるみたいだったから、先生の出番じゃない?」
「そうなのか?そう言えば最近連絡が全くなかったな。台風で体調悪くて気にしてなかった。」
「そうそう。ルイさん台風の時いつも外見て兄さんと姉さん大丈夫かなって言ってたよ。この前倒れたって聞いて急いで病院に向かって行ってたからずいぶん信頼されてんだね。」
「まあ、ルイをうちに招いたのは俺だからな。そこらの本当の兄弟よりは絆はあると思うぞ。」
突然、部屋の扉がひらいた。ルイが帰って来た。もし、話を聞かれていたのなら恥ずかしい。
「あれ、兄さんいたんだ。隼人、今日は兄さんがいるから他の部屋にしようか。」
「ここでやっていいよ。もう仕事は終わったからそろそろ会社内フラフラしようとしてたから。じゃあな、勇人。頑張れよ。」
そうして自分は部屋を出て行った。
2人に気を使い部屋を出る。特にやることもないのでフラッと撮影所にちょこっと顔を出す。この日は女性もので身長が低い人向けの服の撮影のためうちのモデルの恵さんと専属カメラマンのひかるが2人で撮影を行なっていた。基本的には仕事場に人を入れたくないひかるはよくこうしてモデルと2人っきりで撮影をしている。
「そんなんところで見られると気が散るから入るなら入って来てよ。」
ひかるに誘われるがまま撮影所に入った。
「恵さん。お久しぶりです。」
「久しぶりだね。3ヶ月ぶりくらい?」
恵さんはうちで働き始めて5年目。年齢は自分より少し上でモデルの中でもお姉さん的存在。148センチしかない身長がずっとコンプレックスだったらしいが、父さんがこのブランドのコンセプトを服ではなく人に決めたときに自分がモデルをやってくれないかと交渉をした。身長が低い人向けの服を着るモデルさんが当時いなかったため、自分が何度も交渉しに行った。最初は嫌がっていたものの、自分が褒めちぎったらありがたいことに了承してくれた。ついでに既婚者でお子さんも2人いる。
「そうですね。お子さんは元気ですか?」
「元気元気。旦那がいつもヘトヘトになりながら相手してるよ。」
旦那さんは確か今は専業主夫で子供たちの面倒を見てくれているらしい。恵さんは産後すぐに会社に復帰してくれた。育休は一応、3年は取れるのだが働きたいということで戻って来てもらった。
「それより寛くんの方はどうなのよ。お子さんの予定は?」
今まで黙っていたひかるが少しだけ反応した。会社内で自分たちの関係を知っている人は少ない。正直、受け入れてもらえるかどうか自分が不安だからだ。その少ない人の中でも恵さんは話しやすく、2年前にすこし相談したことがある。
「そうですね。まだですよ。自分たちは結婚もしてないですし、自分たちの子供が世間からどう思われてしまうか不安なところもあります。」
「でも、子供は欲しいんでしょ?」
「そうですね。2人とも子供が好きですし。」
「だったら男としてしっかり決断しなきゃ。いつでも相談乗るから、いつでも連絡頂戴ね。私、あなたたちのこと大好きだからなんでも力になるわよ。」
「ありがとうございます。」
写真を確認していたひかるが自分たちによって来た。
「あの、私も相談したいことがあって。2人に。」
今までひかるから相談をしたいと投げかけられたことはなかった。緊張からか少し姿勢を正した。
「いいよ。俺は時間があるし。恵さんはどうですか?」
「私も大丈夫。可愛いひかるちゃんの頼みだからね。」
ひかるは撮影所にあった椅子を持って真剣な面持ちでそこに座った。
「もしかしたら私がルイの邪魔をしてしまっているんじゃないかって心配で。ルイならもっといい大学にも行けただろうし、海外の大学にだって行けたはず。なのに、うちから一番近い大学に入って、今でも私のそばにいてくれる。最初は嬉しかった。でも、よく考えてみたら私がいたせいでルイの可能性を潰してしまっているなら申し訳なくて。」
ひかるは涙ながらに自分の中にあった不安をぶちまけた。少し職人気質で、弱音を吐かない彼女らしくなかったが、それほどルイのことを思っているからかその発言なんだろう。自分は恵さんに合図を出して話始める。
「ひかる。まずは涙を拭こうか。」
自分はハンカチをひかるに渡してさらに続ける。
「俺も疑問に思って、前にルイに直接聞いたことがあるんだ。お前ならもっといいところに行けただろって。そうしたらルイは、『学ぶことは今どこでもできるけど、好きな人と一緒にいつまでもいるためには近くないといけないでしょ。それに、いい大学に行ったとしてもそれは履歴書で自慢できるだけ。社会に出ればそんなことどうでも良くなって成績で評価される。うちで面接するときも兄さんよく言ってたじゃない。どんな大学に行ったとしてもそこから何を学べるが大事だって。確かにいい大学の方がいい先生はいるかもしれないけど、それはひかるから離れてまででも自分が欲しいものじゃない。』ってさ。だから問題ないと思うよ。学ぶことはいつからでもできるし、ルイが言ったみたいに今じゃ場所を選ばない。でも、ひかるといる場所はここしかないから、ルイはここにいることを選んだんじゃないかな。ルイに聞いてみな。きっとそんなこと心配してたのって笑うと思うよ。」
自分の話を聞いて号泣しているひかるのもとに恵さんが近づき、彼女を抱きしめる。
「頭のいい人の考えることはよくわからないけど、あなたは好きな人のために悩める優しい人だよ。こんなに若いのにきちんと相手の未来まで思いやれるなんて素敵なことじゃない。ルイくんもそこのところがわかっているからひかるちゃんと離れたくないんだよ。一度しっかりと2人で話しなさい。悩むのはそこから。ルイくんからなんか言われてから悩んだらいいじゃない。自分の中の予想だけで悶々と悩むより、その人がいるなら直接聞ける距離にいるなら聞かなきゃ。話合ってまた悩みができたらまた私たちに相談に来てもいいのよ。ねえ、寛さん?」
恵さんは首だけを回し自分を見て来た。急にこっちを見られて少し驚いた。
「そうだな。いつでもいいよ。もうひかるとは長い付き合いだし、何より、家族みたいなものだからね。」
「ありがとう。今日聞いてみる。」
「なら良かった。」
時間的にはもうそろそろ帰宅の準備をしなければならない時間帯だった。恵さんは最後に頑張れとだけひかるに伝え、撮影所を後にしていった。ひかるも片付けをしているときに隼人から言われたことを思い出した。
「ひかる。最近なんか、ルイが悩んでるって聞いてさ。なんか聞いてないか?」
「ごめん。わからないかな。ルイって変なところあんたに似ていてあまり自分のこと話さないからさ。今日覚えてたら聞いてみる。」
「そうか。なら、そうしてくれ。」
自分も片付けを手伝っていると、真心が呼びに来た。ルイが多分ここだろうと言っていたらしい。自分もひかるに対して頑張れを伝えて真心と一緒に家路についた。
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