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彼岸花 after story 1

彼岸花編のこぼれ話になります

本編では一切喋っていなかったさくらとの物語です

彼岸花 After story



さくらとの最後の授業



授業終わりにさくらに呼び止められた。


「先生。ちょっといいですか?」


どこか幼さが残る可愛らしい声で呼び止められた。その子はニット帽をかぶっていた。


「どうしたさくら?」


「ここだと色々な人がいて話しにくいので時間がある時に私の病室までお願いできますか?」


「そうか。わかった。今日の閉店後にまたくるよ。」


「ありがとうございます。」


車椅子の上で頭だけを下げて、器用にUターンして、待たせてたであろう隼人のもとに向かって行った。今までの自分に対して少し思うことがあったのだろうか。確かに急に自分の様子がおかしくなったのはさくらと、隼人から手紙をもらってからだ。それを気づくことのできないような子ではない。さくらに呼び止められて自分は少しドキッとした。


約束通り、閉店後さくらの病室に向かった。愛には先に帰ってもらっている。もしかしたら長くなるかもしれないから。

時刻は7時過ぎ、本来なら患者でない限り病院には入れてはもらえないのだが、警備の人に事情を話したら入れてもらえた。ここまであっさり入れると防犯は大丈夫なのか心配になる。エレベーターで4階にあるさくらの病室に向かう。さくらの病室は複数人数が入る大部屋ではなく、個室の病室だった。病院によって様々だが個室は症状が重い人やお金持ちが使っているイメージがある。さくらの病室につき、ノックをしてさくらの返答を待つ。


「入っていいですよ。」


さくらからの返答があったので部屋に入る。どうやら夕食後だったようで食べ終わった食器がテーブルの上に置いてあった。


「先生。わざわざ来てもらってすいません。」


「いいよ、そんなことは。大切な生徒の頼みだから。」


もしかしたら顔が引きつっているかもしれないができるだけの笑顔を作る。こうやって2人で真剣な感じで話すことは今までなかった。病室内が微妙な空気に包まれる。すると、扉を叩くとが聞こえた。


「さくらちゃん。食器片付けにきたよ。」


「はーい。お願いします。」


看護師さんが病室に入ってくる。


「あれなんで渡邉さんがいるの?」


「少しさくらと話したいことがあったので、警備の人に事情を話したら入れてくれました。」


「困るわぁ。そう言うことは事前に言ってもらわないと。」


「すいません。」


「でも、まあ、今回だけは許してあげる。私から看護師長に言っておくね。でも、そんなに長くはいないと思うけど9時にはしっかり帰ってくださいね。さくらちゃんも時間になったら先生にバイバイするのよ。先生のこと好きだからって規則は破っちゃいけませんからね。聞いてくださいよ。さくらちゃんったら最近は渡邉先生の話しかしないんです。隼人くんがいながら。」


「そうなんですね。嬉しい限りですよ。こんな可愛い子に好かれるんですから。」


「もう、そんなことは今いいでしょ。早く片付けないと怒られちゃいますよ。」


「はいはい。邪魔ものは出て行けってね。では渡邉さんさくらちゃんのことお願いしますね。」


「はい。任せてください。」


元気な看護師さんは部屋を出て行った。その後、病室内はさっきとは違う感じの微妙な空気に包まれていた。静寂に耐えきれなくなった自分は自ら少しだけ思い口を割った。


「そういえば話って何かな?」


恥ずかしさで忘れていたのか、はっとした表情で自分を見てきた。


「そうだった。忘れてた。看護師さんが余計なこと言うから。」


「そうか?嬉しかったけどなぁ。隼人には少し悪いけどね。」


「隼人の好きとは違くて。もう、なんていえばいいか。」


「わかってるって。隼人はLoveの方だもんな。」


さくらは顔を赤くして俯いてしまった。最初にあった緊張感は何処へやら。それにしてもこの2人は本当にいじりがいがあって面白い。似た者同士だから何か通じ合うものがあってお互いに求め合っているのだろう。


「そろそろ本題に入らないと看護師長さんに怒られそうだから、本題をお願いしてもいいかな?」


少しだけ自分の纏う雰囲気を変えた。真面目な雰囲気を出した。その雰囲気を察したのかさくらも顔を上げて自分の顔を見て話し始めた。


「先生。私の病気のこと気付いてるでしょ。それに私の今の状況まで。」


「ああ。知ってるよ。ほんとは知りたくなかったんだけどね。なんとなく雰囲気で察していたところはあったけど、この前直接日向さんに聞いて真実を改めて突きつけられると少し辛くてね。考えちゃうことがあったんだ。」


「そうだったんだ。」


「このこと受ける時に日向さんには教えないでくれってお願いしてたんだ。他の子と対応が変わってしまうことがあるからって。それから隼人経由でさくらとも仲良くなった。特別扱いするつもりはなかったんだけど、正直なこと言うと2人に会いにくるために授業していたのかもしれない。2人が可愛くてしかたなかったんだ。」


思いもしなかった自分の言葉に少し照れているさくら。


「嬉しい。」


しばらく沈黙があった。さくらが覚悟を決めたように大きく息をはいた。


「日向先生から聞いてると思うけど、私あまりよくないみたいなの。今までもお薬はうってたんだけど今度からさらに強いのに変えるんだって。だから今度からあまり授業にいけなくなっちゃうかもしれないの。」


「なら、今度からさくらのためだけに授業しにここにくるよ。」


「それはいいや。元気になってみんなと先生の授業受けたいもん。それに先生に迷惑かけちゃうし。」


元々、さくらのために始めた授業だからさくらのために何かしてあげたい気持ちでいっぱいだ。でも、元気のない姿を見せたくないのかなと勝ったに解釈した。


「そっか。さくらが言うならそうしようか。」


「体調が良ければ絶対先生のところに行って授業受けるから、心配しないで。」


正直心配しないのは不可能だ。でも、自分には何もできない。


「先生にお願いがあるんだけどいいかな?」


「うん。何かな?」


「私に何かあったら隼人のことお願いしていいかな?隼人のこと守ってほしいなって。」


なんでそんなこと言うのかと思ってしまったが、さくらの顔は覚悟を決めたのかしっかりと自分の顔を見つめていた。9時までまだ時間がある。それなら。


「さくら今限定でさくらと先生だけの秘密の授業しよっか?今先生ができる最高の授業。」


「でも、先生帰らないと。」


「まだ時間はあるし、今はさくらと少しでも一緒に話していたいかなって。」


「先生がいいなら、お願いします。」


そして、さくらとの秘密の授業が始まった。


読んでいただきありがとうございます

このafter storyはそんなに長くするつもりはないので来週には完結したいと思います

その後にさくらが隼人に向けて送った手紙を描こうと思います

どうぞこの後も読んでいただけると幸いです

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