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彼岸花 part16

寛の授業のスタートです。

3日後。外は生憎の雨だった。前日は緊張のあまり眠れなかった。眠れないなら眠れないでやることはある。今度こそ失敗できない大切な授業。教育実習の時のようなことは許されない。隼人やさくらの両親のためにも。いつも以上に確認作業をした。家を出るとき、真心から、


「がんばってね。なんならもう一発背中に気合入れる?」


「いらないいらない。痛くてそれどころじゃ無くなるから。」


真心と愛に背中を叩いてもらった日。きれいに縦に並んだ赤い翼が自分に生えた。その日は痛くて、お風呂にすら入れなかった。母さんがそれに気づき2人を叱っていた。


いつも通り、何も特別なことはしないで愛と一緒に家を出た。店ではいつも通りに結さんが準備をしていた。でも少し表情は暗めだった。


「大丈夫なの?普通にうちで働いて。何か準備してた方がいいんじゃないの?」


もちろんさくらの葬儀には結さんもいた。今日の授業の重要性も自分が欠ける思いの強さも知っている。


「問題ないです。こう見えて寛は緊張しいなのでいつも通りにしてないと心臓が口から出てきちゃうんで。いつも通りにすることが大事なんです。昨日なんて緊張のあまりほとんど寝てないみたいでしたし。」


愛が笑いながら答える。


「愛の言う通りなので。問題ないですよ。いつもよりは少しだけ早く病院の中には行きますけど、心配しないでください。」


「ならいいけど。」


結さんと愛といつも通りに通常業務を行う。途中、保護者の方が来店して今日の授業頑張ってという言葉をいただいた。実は授業をするにあたってあらかじめ保護者の方々には連絡をしておいた。今日の授業は中学生以上もしくは保護者の方限定にしてもらった。保護者の方の参加の人数を聞いたところ何か特殊な用事がある人以外は全員参加してもらえることになった。その中にはもちろんさくらの両親と隼人の母親がいる。


授業が始まる時間が迫ってきた。自分の中で緊張感が急激に上がった。笑顔も引きつり、不自然に笑っている。それに気づいた愛が自分を裏に連れて行った。


「緊張してるでしょ。顔が引きつってうまく笑えてない。」


「そっか。出ちゃってたか。申し訳ないな。」


「緊張してるのはわかるけどさ、緊張で失敗したら元も子もないわけだからもう少しリラックスしたら?」


「そうだよな。ならこの前みたいに背中叩いて気合入れてくれるか?今回は少し手加減して。」


「しょうがないな。」


愛に背中を向けて痛みに対して準備をする。後は見えないが手に息をかける音が聞こえる。


「行くよ。」


いよいよくると思ったら、背中に柔らかい感触があった。


「緊張してるならこっちの方がいいでしょ?気合なんていらないから。いつも通りに寛らしくいれば大丈夫だよ。絶対成功する。だって、私が好きな人だから。」


「そうだな。ありがとな。」


自分は体を回転させ、自分よりずいぶん小さい愛を抱きしめた。


「落ち着いたよ。やっぱり愛は偉大だな。」


「そうでしょ。何年寛のこと見てきたと思ってるのさ。大抵のことは私にはお見通しだからね。」


「わかった。よし、頑張りますか。」


そういうと愛から離れた。


「そうだ忘れてた。」



何かを思い出したように愛に近づき、


「ありがと。愛してるよ。」


簡単な言葉を伝え、感謝を行動に表した。その直後、愛の顔は真っ赤だった。


授業まであと30分。いよいよ準備をしに病院に向かう。


「結さん、もうそろそろ時間なんで行ってきます。」


「行ってらっしゃい。頑張って。」


愛にアイコンタクトでメッセージを送り病院に向かった。


病院に着くと、いつもより早い時間に隼人がいた。


「学校はどうした?」


「ここ1週間は行ってない。」


「そうか。」


隼人の精神状態がわかるので怒るといことは適切ではないと思った。


「怒らないんだね。」


「まあ、怒ったところでっていうのがあるからな。それにその気持ちは分からなくもないし。」


隼人は母親と一緒に来ていた。軽く会釈を交わし、準備に取り掛かった。自分が準備をしていると、いつも通りに隼人が手伝ってくれた。


「ありがとな。」


「手を動かしていた方が気が紛れるから。」


着々と準備が進む。準備をしていると続々と人が集まってきた。いつもよりは人は少ないがどこかで噂を聞きつけたのか、病院内の手の開いていた先生方も集まってきた。その中には中村先生もいた。


「どうして今日こんなに人がいるんですか?」


「医院長先生が宣伝してたから気になって見にきてるんじゃないかな。」


「今日の内容、あまり先生方には聞いて欲しくない内容なんですけど。あと、あまり自分の恥ずかしい姿は見入られたくないんですけど。」


「でも集まっちゃたんだから仕方なくない?このあと医院長先生も来るからね。」


「はあ・・・。」


ため息をついた。


「手止まってるよ。」


隼人に注意されて再び準備に戻る。


授業開始の時間になった。子供たちのためにやるはずの授業になぜか大人の人数が多いという異様な空間ができた。大人がかなりの数集まるとかなり威圧感がする。自分は深呼吸して、気持ちと緊張感を落ち着かせる。そして、勝負の授業が始まる。


読んでいただきありがとうございます


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