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『死ね』という言葉

ピンセトという女性は、黒い髪で、服装は濃い赤をメインに青、深い緑柄の東の国で流行っている着物というのを身に付けている。


シリンダーの目の前に立っているピンセトとテンビンの様子がなんか少し変だ。

テンビンはいつも目付きが悪い、というかジト目なのだが、ピンセトも今回はまるで敵を見るかのように鋭い目をしていた。


「やぁ、ピンセトとテンビン。私に何か用かしら?」


シリンダーがピンセト達に近付こうとしたとき、ピンセトが手で『止まれ』と合図をしたので、シリンダーはその場で止まってしまった。


「今から極秘任務をすると聞いたんやけど?もしかして、森の洞窟に行くんやないか?」


ピンセトは鉄扇を畳むと、その尖端をシリンダーに向けて言った。


「何故、極秘任務がその洞窟と知っている?」


頭の回転が早い人ならここでうまく誤魔化す事ができたのだが、シリンダーは真面目に生きているゆえに極秘任務の内容がわかる言葉を言ってしまった。


「やはりそうか・・・。そこに行くのはやめた方がええよ?」


ピンセトは鉄扇を再び広げシリンダーに近付いていき、シリンダーの喉元で寸止めをした。


「お前には死相が出てる!」


ハッタリか何か分からないが、どうしても“その洞窟”には行かせたくないようだ。


「誰から聞いたか知らないが、私は調べないといけないのでな」


「・・・・・・・」


ピンセトはしばらくシリンダーを睨んだ後、無理に作り笑いをして。


「そうかえ?・・・・・そこまで言うならもう止めへんよ?」


と言い、鉄扇を引っ込めて来た方向であろう道を戻っていった。しかし、ピンセトは忘れ物をしていた。それは、後ろに隠れていたテンビンである。


ピンセトがどんどん歩いていくにも関わらず、テンビンはその場から動かず、ずっとシリンダーを睨んでいた。実際には、いつもジト目なので睨んでいるかどうかは分からないが。


「テンビン、どうしたんだ?ピンセトはもう行ったぞ?」


シリンダーがテンビンに近付き頭を撫でようとすると、テンビンはその手を強いちからでビンタするように奈払い除ける。


そして、テンビンの口がゆっくりと開いて大きな声でこう言った。


「死ねっ!!」


「えっ!?」


シリンダーは固まりテンビンの言葉を理解するのに時間がかかった。

しかし、理解した時にはテンビンはピンセトの後を追うように走って姿はなかった。


テンビンの「死ねっ!!」と言ったときの表情は、なんとも言い表せなかった。


無表情で毒舌を言うのとは全くの別である。テンビンはシリンダーが憎くて恨みをもっており、本当にシリンダーを殺したいという形相で放った言葉であった。


もちろん、シリンダーには思い当たる節などはない。彼女とは話す機会があれば話すだけで、恨まれるようなことをした記憶はない。


テンビンを追ってあの言葉の意味を突き止めようか迷ったのだが、暗くなる前に極秘任務を終わらせようと思い、テンビンの事を後回しにした。


国王に極秘任務の説明や、いろいろ厄介な手続きなどをしていたので、時間は昼を少し過ぎた時間になっている。


「けど、本当に死相が出ているなら、私はテンビンに真相を聞くことができないな・・・」


シリンダーはピンセトの『お前には死相が出てる!』という言葉を思い出し、その時のピンセトの低くした声を何度も心の中でリピートすると、背筋がゾクゾクと震えた。


「聞かなかったことにしよう・・・」


シリンダーは何度か頷くと、何事もなかったかのように極秘任務の場所を目指した。

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