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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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悩み相談

大変長らくお待たせいたしました。おまけその二です。

 夕食を摂りながら分隊長以上で固まり今後の予定を話し合っていたところ、八人の新兵がやってきて真っ先に俺に話しかけてきた。


「悩みを聞いてほしい? どんなの?」

「この間山賊を処刑したじゃないですか。そいつらが夢に出るんです」

「どんな夢?」

「何で俺達を殺したのかなどと、何人も何人も」


 兵たちの話に俺たちは首を傾げた。


「罪のない人々を殺したから処刑したに決まってるじゃない」

「いえ、それは私らでも理解しているつもりなんですが、ほぼ毎晩夢に出られるとほとほと参ってしまいまして」


 俺の言葉に悩み事を口にする兵が肩を落とす。

 夢というのは厄介なもので、自身の意思ではどうにもならないことがある。たまに夢を好きなようにできる者もいると聞いたことはあるが、実際のところ体験したことが無いので分からない。


「僕らにどうしてほしいのさ?」

「何でも良いから助けて欲しいんです」

「僕にはどうしようもないよ」

「そこをなんとかお願いします」


 どうしようか。俺は前世でも今でも医者じゃないんだけども。

 適当に悩みを片付けてたら後々えらいことになりそうだし、親身に話を聞いてあげようかな。


「僕は人生経験が浅いけど、亡くなったおじいさんたちから聞いた話をするよ? それでいいなら」

「分かりました。どんな話でしょうか」

「僕が生まれ育った村では運が良い事に争いごとがなかった。ただ、おじいさんたちの若かった頃は少ない食料をめぐって村同士の争いごとが絶えなかったらしい。当然殺し殺されもあって、君みたいな悩みを抱える人が結構いたって話だよ」


 俺の話を聞いた兵たちやモズたちもうんうんと頷いた。


「その話は俺たちが住んでた村でも聞きますね。詳しくは知りませんがその方たちはどうやって悩みを解決したのでしょうか?」

「人それぞれだって言ってたけど」

「それぞれ?」


 モズたちは頷いていて、新兵たちは眉を寄せた。


「人殺しに何とも思わない奴もいれば、君のように苦しんだ人もいて、折り合いをつけて生きていくと決めた人とか、誰にも相談できずに一人で悩みを抱えて頭が狂っちゃった人もいたそうだよ」

「狂うって……」


 新兵たちが戸惑う。


「僕も実際に見た事無いから分からないけど、特に理由もなく暴れて(なぐさ)めようとした人に殴りかかったり、喚き散らしたりするとか。その点、君らは僕らのところに相談に来た時点で恵まれていると思う」

「はあ」


 新兵たちは納得がいかないようだ。逆を言えばまだそこまで状態が悪化していないという事でもある。


「心に抱えているものを吐き出すのは悪いことじゃないと思っているよ。それだけでも気分が楽になるはずだからね」

「そんなもんなんですかね」


 そろそろ僕が説明するのにも限界がある。代わりに誰か新兵たちをなだめてくれないかな。


「分隊長や小隊長たちも悩んでいたことがあったんですか?」

「どうだろう? 生き残るのに必死だったから、あんまりそういう事について考えていなかったなあ」

「悪は倒すべきもの、俺に落ち度などない」


 俺の言葉に続いてトウヤが胸を張って言う。

 またこいつは。その自信は一体どこからくるのか。


「悩みというものはその者の心が弱いから抱えるものだと思っている。強くなれば問題ない」


 さすがブヤ副官、その境地にたどり着くまでに結構な人数がふるい落とされる事を含めて言ってるのが凄い。


「殺し殺されの世の中が当たり前のことだったから、疑問に思わなかったなあ」

「夢に見たことないな」

「悪いな、参考にならなくて」


 モズ、コウ、タナソの順に返答があった。

 ナテが新兵たちに質問した。


「俺たちは小さな頃から人殺しのための訓練を積んできたから心構えというものはできてるけど、君たちは習わなかったのか?」

「いえ、両親と一緒に農作業をしていたのが大半だったので、訓練をしたことはほとんどありません」

「私も同じです」

「俺も」


 口々に新兵たちが殺人が未経験だったことや、そのための訓練ですらろくにしていない事を告白されて俺たちは(うな)った。


「あー、そこが違うのか」

「あれ、住んでいた村によって訓練するしないの違いがあるの?」


 しみじみとした発言をするセリに俺は訊いてみた。


「あるぞ」

「農作物の収穫が乏しくて、訓練する余裕がなかったりとかが多いけどな」


 イシカの説明に俺は過去を振り返る。


「……僕の村は恵まれていたんだな」

「ミマツで最初に集められた俺たちは誰もが訓練を受けていたからな。あの時は余裕があったんだよ」


 俺の言葉にマレマが当時の状況を語る。


「俺たちの場合は誰を行かせるかで相当もめましたからね」

「結局、私たちは半ば追い出されるような形で出てきました」

「訓練を積んだ者たちは既に出て行った後ですから」

「私が見た感じでは、才能のある人を置いて、あまり役に立っていない者が選ばれてましたね」


 次々と証言する新兵たちの現状に俺は気が重くなった。


「そこら辺の事情は俺が以前聞いていた話だな」

「そうか、訓練と言うから肉体的な面ばかり見ていたけど、精神的な強さを鍛える面もあったのか」


 ブヤとモズが頷き、トマリが誰に対してなのか呟いたので僕が助け舟を出す。


「どうすれば彼らは心に余裕を持てるようになるんでしょうね?」

「精神を、人殺しをする前の時点に戻すには相当難しいですよ。これもおじいさんから聞いた話なんですが、心にひびが入ったら元に戻ることは二度とないと聞いた覚えがあります」


 その言葉は現世のおじいさんたちからだっけ、前世の漫画からだっけ、思い出せない。


「そんなにか?」


 精神的に強いブヤは実感がわかないようだ。(うらや)ましい。


「俺らどうすればいいんですかね」

「とりあえず、定期的に何か悩み事があったら、僕たちのところに相談しに来ればいいんじゃないかな」


 困り顔の新兵たちに俺は現状打開策として相談の窓口を設けた方が良いだろうと判断して発言した。

 負の感情に押しつぶされて、自殺に追い込まれるよりはましだと思う。


「後は経験を積むほかないだろう」


 ブヤの考えに新兵の一人が恐る恐る彼に尋ねる。


「経験って人殺しの、ですか?」

「そうだ。殺せば殺すほど感覚が麻痺して何も感じなくなる。要するに慣れるって事だ」

「えええ?」

「それはそれで嫌だなあ」


 眉をしかめる新兵たちにタナソが諭す。


「俺たちは何年もかけて人殺しの訓練に参加していたから慣れているが、お前たちの場合は訓練もそこそこに短期間で実戦を経験して慣れて行く他ないと思うよ」

「そうですか」


 新兵たちが肩を落とした。

 この道を選んだ以上避けては通れないので、前へ進むしかないだろう。


「あとはそうだなあ、戦でここで死ぬんじゃないかと思うような経験をすると、度胸がついて大抵のことには動じなくなる。強靭な精神が生まれてくるとは聞いたけど」

「なるべくならそんな目にあいたくないです」


 俺の案に新兵たちが引いた。心なしかブヤ以外の古参も引いてるような気がする。


「まあ普通そう思うよな」

「これはカゼが悪い」

「なぜですか」


 コウとタナソの発言に俺は抗議した。


「そんな命の危険に関わるような事態に(おちい)ったら、俺たちの命がいくつあっても足りない」

「ごめんなさい」


 トマリの説明にそれもそうだと思った俺は素直に頭を下げた。


「もうそろそろ寝る時間だよ。明日も早いからこの辺で解散しよう」


 話もそれ以上出なくなったのを見計らってモズが手を叩いて合図した。


「君たちも何か悩み事があったら遠慮なく訊いてくれ、答えられる範囲でなら返すから」

「はい、ありがとうございます」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


 モズの呼びかけに新兵たちは頭を下げて後にした。

次回の投稿はまたもや未定です。

ある程度書きたまってから投稿します。

それでは。

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