清め
お待たせいたしました。
それでは投稿します。
今回の話も残酷描写がございます。苦手な方はブラウザバックをお願いします。
「洗うのなら、あたしたちの出番だね」
「何で?」
さあ河原まで運ぼうかという時、モミが進み出て来たのを見て首を傾げる兵たち。
「あのねえ、死んでいても女なの! 男どもに肌を晒すわけにはいかないでしょ!」
「それもそうだな」
「とりあえず、俺たちが河原まで運ぶから、清めは頼む」
「任せなさい」
六つの遺体を河原まで運んで行く。
「こいつは楽でいいな」
「この道具、何て言うんだ?」
「担架って商人が言ってた。買うと高いからどうにかして安くできないかと考えたらこうなった」
担架に興味を持った兵たちに訊かれたので、脚色して答えた。
「何せただだもんな」
「ほらほら、しゃべってないでさっさと運ぶ! 日が暮れちゃうよ!」
「へいへい」
軽口を言い合う兵たちをモミが制して急がせる。
河原に辿り着いた俺たちは川の側に遺体を下ろす。
「ご苦労様。彼女たちは私達が洗っておくから、呼ばれるまでしばらくどっか行ってなさい」
「はいよ」
後は女たちの仕事だ。俺たちは河原を後にする。
「全身を洗うよ、服を脱がせな」
「はい!」
女たちを取り仕切る年配、と言っても三十代くらいだが、その女性が指示を出す。
「酷いねえ」
「痛かったろうに、怖かったろうに」
「もうすぐ家族のもとへ帰してあげるからね」
「泥だらけの服も洗っておこうか?」
「そうしな。完全には綺麗にならないだろうけど、やっていないと怪しまれるよ。念入りに洗っとき!」
「はい!」
「終わったら服を着せな!」
女たちの声を背に河原を出て、木々の中で休息をとることにした。
一時間くらい経った頃、モミが俺たちの所に来て声をかける。
「終わったよ」
「分かった、ありがとう。世話をかける」
「早く運ぼう、日が暮れる」
モズが彼女に礼を言うと、急かされた。
「松明を使え、暗くて良く分からん」
「足元に気をつけろ」
とうとう日が沈み、山林が暗闇に覆われる。兵たちが点けた松明の明かりを頼りに山道を降りる。
麓の村までえっちらおっちらと交代しながら運び終えると、モズが村の入り口にいた門番に声をかけた。
「誰だ!」
「七日ほど前にこの村を訪れた、ミマツの国の兵です」
「こんな夜に何用か?」
「この近隣の村を悩ませていた山賊を捕まえて来ました」
「何だと? ……お待ちを。村長に遣いを出します。」
それから程なくして、村長や会合に出ていたと思われる老人たちが松明の明かりと共に、よたよたと歩きながら近づいてきた。
夜なのに騒がしい。どうやら知らせを聞きつけた村人たちが家の外に出てきて、こちらに向かっているようだ。
「お主たちは……!? 出て行ったのではなかったのか?」
「この村が心配で、戻って来てしまいました」
「それはそれは。……それで、山賊はどこに?」
村長に応対したモズの合図で兵たちが山賊を引き出してくる。
「貴様たちか、旅の商人を襲うだけでなく女たちを攫ったのは……!?」
山賊たちの顔を見て居丈高な村長の態度が急変する。
「よう、祖父さん」
「サ、サワジ? どうしてお主が……」
顔面を腫らした少年の挨拶に愕然となる村長。
「俺がこの山賊の頭だよ」
「おお、何という事だ」
村長が膝をついてがっくりと項垂れた。
徐々に集まってきた村人たちが山賊たちの顔を見て驚いている。どうやら村長だけでなく、知り合いや実の孫もいることを知って衝撃を受けているようだ。
「な、何でお前が……」
「そうか、時折、姿が見えないから、どこかで遊び惚けていると思っていたが、そういう事だったのか……」
そんな中、担架を間隔を開け、並べて置いた女たちの遺体を目にした村人たちから悲鳴が上がる。
「何だこれは、どういうことだ……!?」
「彼らが女たちを攫い、殺害しました」
「まさか、嘘だ!」
殺された女たちの中に親族がいたのだろう、遺体に縋り付いて泣き出す者も複数出る。
そして、村の中にいた内通者も時を置かずして捕まった。同じ少年かと思いきや、三十代の男だった。
尋問を始めると、すぐに理由が判明した。
「俺は子供の頃から村で虐められていた。誰も助けてくれなかった。虐めていた奴らがのうのうと生きているのが憎い。だから逐一この村の悪ガキどもにあれこれと教えてやった。ここまでやるとは思ってなかったがな。こんな村は滅びてしまえば良いんだ!」
彼の叫びに俺は頭の片隅から前世の記憶が強制的に戻って来た。
似たような奴がいたわ。
村人たちに虐められて、何十年も経ってから復讐して村全体を不幸に陥れた奴。
確か、村を開発、発展させて町、行く行くは市へと野望を抱いて道路を拡大、延長させようとしたところ、その虐められた奴がたまたま道路が通る地点の地主で、彼だけが死ぬまで反対し続けたために計画が|頓挫。もたもたしてる内に他の村が発展し、取り残され、若者たちが都会を羨んで出て行ってしまい、残されたのは老人たちだけという結果になった。
いや、加害者たちは何を考えて被害者を虐めたのかは知らないが、虐められた方は良く覚えてる。まさか何十年越しに仕返しをされるとは夢にも思っていなかったろう。
虐め駄目、絶対。
翌日から山賊たちの処遇を巡って話し合いが始まった。近隣の村からも代表者がやって来て会合に加わっている。最初はこの村から出た山賊に重い処罰を求めたよその村の者たちは、自分たちの村からも山賊になっていた者がいる事が判明した時点で、意見が弱弱しくなった。
「それでは、近隣の村の者たちを集めて、一部を除き、山賊の頭サワジを中心とした処刑を執り行うということで決定します。宜しいですね?」
一部を除くというのは、攫った女たちや商人を積極的に暴行、殺害しなかった者たちだ。数はタキとツガ、他数名と少なかったものの、サワジのやり方に疑問を覚える者もいたことだ。
とは言え、山賊になっている時点でそれ相応の罰は必要なので、モズ中隊に強制入隊させて、性根を叩き直すことになったのである。
反対する者はいなかった。
今回の話の中の虐めは実際に起きたことを多少脚色しています。
次回の投稿は午後十時半頃を予定しています。
それでは。




