証拠
お待たせいたしました。
今回は残酷な描写が後半に含まれています。
苦手な方はブラウザバックを推奨します。
身体は拘束されているものの、口が自由な状態のため、罵っている山賊たちを河原に並べる。
「あー、静かにしろ。…………黙れっ!」
ブヤが声をかけるが罵声が止まないので、今度は怒鳴って黙らせる。
「今から尋問する。大人しく答えた方が身のためだぞ? ……お前たち山賊はこれで全員だな?」
山賊たちは神妙に頷いた。
「頭はお前か? 名を名乗れ。どんな理由で頭をやっている?」
「……サワジだ。俺が誰よりも一番になりたいんだ。行く行くはこの地一帯を治める王になりたいんだ」
ブヤの問いにサワジは明け透けに言う。
「野心溢れてるなぁ……」
「それも今日で終わりです」
感心するモズに、マレマが肩の荷が下りたとばかりにため息を吐く。
「真面目に見張りをしていた……そう、お前だ。名は?」
「ツガと言います」
ツガと名乗った少年はびしっとした姿勢で受け答えする。
「ツガ、お前はどうしてサワジという男と行動している?」
「はい、サワジが王様になるからついてこいと言われました!」
捕まったサワジを見て、少しも疑わない瞳ではきはきと言う少年。
「それだけの理由でか?」
「それだけとは何ですか! 王様を目指す、立派な動機です!」
何だろう、根が真っ直ぐなのは分かるんだけど、進むべき道を間違えてる。
ブヤが自身の眉間を揉む。
「ツガ、君は攫った女たちを殴ったりしたか?」
「しませんよ、そんな事! お母さんから女の子に暴力を振るってはいけないって教わるのは普通でしょう!」
なるほど、良くできた両親に育てられたようだ。
「そ、そうか。……では、何故君の仲間が女に暴力を振るうのを止めなかった?」
「それは僕の力不足です! 何度も止めるよう言ったのですが、『あっちに行ってろ』と追い出されてしまい、何もできませんでした……」
「分かった、質問は以上だ」
ツガ少年は悔し気な表情で肩を落とした。
「罠を張ったのは誰だ?」
ブヤに代わりムゼキが質問すると、中の一人がおずおずと手を挙げる。
「俺です、タキって言います」
「親が狩人だったのか?」
「はい。罠の方はむしろ俺自身が考案したりしていました」
タキの説明にムゼキたち偵察隊は苦虫を嚙み潰したような顔だ。
偵察隊を代表してセリが感想を告げる。
「あの仕掛け、なかなかえげつなかったぞ」
「はい!」
何だその嬉しそうな顔は。
「俺たちの仲間が死んでるんだぞ」
「あ、ごめんなさい……」
イシカの苦言にタキがしゅんとなる。
「こいつ、罠のことにしか興味がないんだよ」
「攫ってきた女に手を付けない変人だからな」
タキとの問答に呆れたのか、比較的怪我の少ない山賊が助け舟を出す。
「確かに変人だ……」
「罠設置馬鹿と言ったところか」
ナテとムゼキが変わった生き物を目にしたような顔で品評する。
「いやあ……」
「そこで何故照れる?」
「褒めてねえ」
顔をにやけさせるタキにカヤオとトマリが突っ込む。
「それで、何故タキは山賊になったんだ?」
「サワジが思う存分罠を仕掛けてみないか、って誘われたんだ」
「はた迷惑な」
ブヤが根気強く尋ねると、タキがあっさりと答え、タナソが呻く。
「でも、仕掛けた罠に仲間がかかって死んじゃって、思った場所に仕掛けられなくなったんだ」
「それでか。捜索したこの山に罠が見当たらなかったのは」
セリたち偵察隊が一番山の中を注意深く捜索してたけど、無駄だったのか。
石橋を叩いて渡ると言うし、慎重に越したことはないな。
「せっかく掘った落とし穴も女たちを埋めるのに使っちゃうし」
「そうなのか。……待って?」
「ちょっと?」
「あ、馬鹿!」
タキのぼやきを聞き流しかけ、俺たちの思考が止まる。モズとモミが反応し、山賊の何人かがやばいという表情になる。
「もう一度言ってみろ、何だって?」
「落とし穴が使えなくなった」
ブヤが訊きたかったのはその言葉ではない。
我慢できずに俺が細かく尋ねる。
「いや、だから、その中に、何を、埋めたの?」
「……殺した女たちを放り込んだこと?」
今度ははっきりと聞いた。
「それっていつの話?」
「君たちがここに来るって話を村の中にいる協力者から聞いて。一旦逃げ出す時にかな? 足手まといだからって」
「おい」
モミが頭を抱えながら尋ねると、予想外の答えが返ってきた。コウがどすのきいた声を出す。
ひょっとしなくとも、俺たちが山狩りすると決めたからか。何か罪悪感が出てきたぞ。
「タキ、埋めた場所に案内してくれ」
「良いけど、どうするの?」
「本当なのかどうか掘り出して確かめる」
「攫った証拠を村に持って帰りたいの。協力してくれる?」
ムゼキが頼み込み、モミもタキにお願いした。
「おい、タキ!」
「……協力するよ。あれはやりすぎだと思っていたし」
サワジがタキを止めようとするが、彼にも思うところがあったようだ。
「どうします?」
「掘り出すにも人手がいるし、山賊の中で五体満足の奴だけ連れて行こう。残りは兵に見張らせておく」
「了解しました」
ブヤの問いにモズが今後の方針を決めた。
「タキ、女たちと言ってたけど、何人埋めたか分かるかい?」
「五、六人くらいだったかな」
モズの問いにタキが大まかな人数を答える。山賊は三十人もいないのに、結構な数の女性を攫っていたらしい。
「それなら僕たちで運べるね」
「どうやるんですか?」
「背負うか、二人がかりで運ばせようと考えてるけど?」
モズは兵たちに素手で運ばせるつもりか。
そういえば、前世で楽な運び方があったな。試してみるか。
「運びやすい道具、作りましょうか?」
「そんなのあるのかい? じゃあ頼もうかな」
「了解しました。カゼ隊で作ります」
モズの良い所は便利そうだと思ったら許可をくれる事だ。前世の会社もこうだったらなあ……。
近くに竹林があったから、切り出して遠投げ用の布と組み合わせれば、即席の担架が作れそうだ。
銅剣で適当な竹をばっさばっさと切り出し、片手で持ちやすい太さを選んで切り揃え、二本の竹を兵たちから借りた布で繋ぎ合わせる。
思いの外簡単に出来た。
タキに先導され、問題の場所までやって来る。
彼が指差した地面は他と違って木の葉が積もっておらず、むき出しの土が見えていた。
「何で俺達が掘り出さなくちゃいけないんだ」
「殺した責任はとってもらわなくちゃ困る。遺体をこれ以上傷つけないためにも素手で掘るんだ」
「1度掘った土だから退け易いだろう?」
素手で柔らかい土を掘り出す山賊たちが愚痴を言うので、ナテがもっともな正論を言い、命令する。トウヤが冷めた目でちっとも優しくない声を奴らにかけたのを聞いて、俺が彼に話しかける。
「意外だね」
「何がだ?」
「トウヤなら殺し殺されは当たり前の事だから、山賊のやった事に怒らないのかと思ってた」
「俺にも姉や妹がいる。同じ事をされたらと思うと怒らずにはいられん」
「それは僕も、兵たちも同じ気持ちだと思うよ」
段々と穴が深くなっていく様子を俺たちは眺める。
「くそっ」
「文句を言わず掘る!」
モミが愚痴を漏らす山賊を叱咤する。疲れ始めたのだろう、山賊が穴を掘る速度が遅くなってきた。
「なんだもう疲れたのか? 日が暮れてしまうぞ」
兵の一人がはやし立てるが、山賊の動きが鈍い。
「もういい、そこをどけ、後は俺達が掘る」
しびれを切らした兵たちが山賊を穴から追い出すと、素手で掘り始める。
やがて、土の中から白っぽい物が見え始めた。人間の肌なのだろう。
「見つけた!」
「掻き出せ、穴を広げるんだ!」
兵たちが色めき立って掘る速度を上げる。
「代わってくれ、疲れた!」
「任せろ!」
交代で穴を掘る兵たち。
「本当にあったな」
「しかし」
「これはひどい」
埋まっていた女たちを引き上げ、地面に寝かせるとその状態が大まかに明らかになった。
泥だらけで分かりにくいが、殴られたのだろう、顔が腫れ、体のあちこちが青あざだらけだ。
兵たちの中には正視できず、顔を背けている者もいる。
女たちから泥を取り除いていた兵があ、と声を上げたのでブヤが尋ねる。
「どうした?」
「直接の死因は殴られたのではなく、首を絞められたようです。跡が見えます」
「……そうか」
遺体を目にした兵たちが会話する。
「この遺体を家族に見せるのか?」
「さすがにまずいだろう」
このままの姿で帰すわけにはいかないだろう。
俺は彼らに助け舟を出す事にした。
「近くに川があるんだから、洗って綺麗にしてから親元に帰せば良いんじゃない?」
「なるほど、そうか」
「それで行こう!」
手足を泥塗れにした兵たちが作り立ての担架に遺体を載せていった。
明日は午後十時半頃に投稿予定です。




