表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
85/90

せせらぎの中で

予定通り投稿します。

 奇襲(きしゅう)は選択肢になかった。強襲(きょうしゅう)もだ。

 洞穴の広さからして、山賊は大した規模ではないだろうと判断した上で、数の暴力で押し切るという簡単な仕事だったはずだ。

 それが一転。罠にはまって身動きがとれなくなった所で、山賊に反撃されるのは想定外だった。

 一応、洞穴に向けて矢を射かけられる事を想定していたのか、山賊は竹で出来た束を抱えて出て来た。


「ふん。俺たちだけのために随分な大人数だな」


 山賊の(かしら)らしき少年が鼻を鳴らして毒づいた。というか、姿を見せた者たちが皆若い。恐らく成人すらしていないのではないだろうか。


「ガキじゃないか……」

「だからどうした」


 兵の一人が言った言葉に返す頭らしき男。

 先ほどまで見張りに立っていた生真面目な少年が、頭の登場により立ち直り、槍を構えてこちらを(にら)んでいる。立ち振る舞いからしてそこそこできるようだが、それだけだ。


「いつまで寝てる、起きろ!」


 一方、見張りのくせに寝てしまった少年は頭に胴を(したた)かに蹴られ、(うめ)き声を上げながら起き上がる。


「お前たちは包囲されているぞ、降参しろ!」


 コウの呼びかけに頭は眉をひそめた。


「罠にかかっておいて、まだ自身の立場が分かっていないように見える。あれを見てもまだ同じ事が言えるか?」


 頭が手を頭上に挙げると、崖の上の木々の中から複数の人間が姿を現した。頭と同様に皆少年ばかりで構成され、弓を構えて俺たちを狙い始めている。


「貴様らがここに来ることは想定済みよ」


 一応、こちらも弓を構えたり、遠投(とおな)げの準備に入っている兵がそこかしこにいる。

 数では相変わらずこちらが圧倒的優勢だが、まともにやり合えば少なからず死人が出るのは必至(ひっし)

 迂闊(うかつ)に動けない俺たちに彼らは優位に立った。

 とでも、奴らは思ったか?


「ただでは逃がさん」


 頭の演説は続く。

 声色からして、もう勝った気でいるんじゃなかろうか。

 起き上がりながら遠投げ用の布を(ふところ)から取り出した俺は、丸石を退()け、その下にある砂利を握れるだけ(つか)み、布の中へ放り込む。

 試したことは一度もないが、やってみる価値はある。

 周囲の兵と同様、俺は布を振り回し始める。


「うん? 貴様ら、何をしている? 見慣れぬ物だが、武器かそれは?」


 遠投げの情報自体、こちらまでは伝わっていないらしい。これは好機。


「……貴様ら、今すぐその動きを止めろ!」


 ただ、頭も俺たちがそこらにある石ころを使っていることから、何かやばいと感づいたのだろう、俺たち全体に聞こえるように大声を上げた。

 だが、もう遅い。回転速度は十分、狙いも良し。


「りゃ!」

「……やれ!」


 俺は布の一端を放し、掛け声を上げながら小石をぶちまける。

 即席の散弾だ、喰らえ!

 俺が小石を投げつけてから半秒ほど遅れて頭が合図すると、崖の上から矢が放たれようとする。

 だが、それよりも早く、能力で誘導された小石は、崖の上に陣取っている山賊の顔に(ことごと)く命中した。


「ぶっ!?」

「うわ、何だ!?」

「目、目が!?」


 山賊が咄嗟(とっさ)に顔を(おお)ったため、手から外れた矢があらぬ方向へ飛んでいく。


「おい、お前たち、どうした!?」

「今だ、投石!」

「おう!」


 狼狽(うろた)えた頭に好機と判断したブヤが遠投げ寸前の兵に命令し、兵たちが一斉に投石する。

 外れていく石もあったが、訓練のおかげか大部分が山賊の手や足、中には胴体に当たるやつもあった。


「ひいい」

「痛え、痛えよお」


 あっと言う間に崖の上の山賊が無力化されたのを見た頭が呆然(ぼうぜん)とする。


「ば、馬鹿な」

「足元の糸に注意しながら前進!」


 俺たちは慎重(しんちょう)に、ゆっくりと歩みを進める。


「来るな、来るなぁ!」

「抵抗しても無駄だ!」

「降参しろ!」


 二人の見張りと竹束(たけたば)を抱えた山賊共々(ともども)、頭が逃げ腰になる。

 時折投げつけられる石を竹束で防いでいるが、それだけで抵抗する者は無い。

 その内の一人が竹束を捨てて両手を上げた。


「降参する、攻撃しないでくれ!」

「おい、タキ、何を勝手なことをしている!?」

「頭、もう諦めましょう!」

「ふ、ふざけるな!」


 山賊同士で内輪揉(うちわも)めが始まり、その間にとうとう接敵した俺たちは山賊を殴って蹴って、地面に転がして両手を後ろで(しば)る。

 崖の上にいた山賊も投石の痛みで逃げ出すことも(かな)わず、坂道を登って行った兵たちに捕らえられた。

 頭は最後まで銅剣を振り回して抵抗していたが、多勢に無勢、背後から背中に蹴りを入れられ、もんどりうって倒れたところを取り押さえられた。


「畜生!」


 洞穴の中へと再びムゼキ他一班十人が入って行く。しばらくして、山賊に(さら)われたらしい女性二人が連れ出されてきた。暴行されていたようで、体のあちこちに青あざが見える。


「中にいたのはこの二人だけです」

「攫われたのか? 他にはいなかったか?」

「いませんでした」


 ムゼキの報告を聞き、二人の女にざっと事情を聞くモズとブヤ。

 薬草の採集に二人でいたところを囲まれ、武器で脅されて連れ去られたって言っている。


「この辺りの目に見える罠は解除したぞ。ただし、まだ見つかっていない罠もあるかもしれないから、ここから離れない方が良いと思う」


 セリの報告にモズが(ねぎら)う。


「お疲れ。それで、損害は?」


 兵たちからの報告をまとめた各分隊長が集まり、集計した内容をブヤが告げる。


「矢に毒は塗られていませんでしたが、古参兵が一人と新兵が三人死にました。怪我はしましたがいずれも新兵で、七人いますが命に別状はありません」

「死にすぎだ……。僕のせいだ」


 モズが目に見えて気落ちする。


「良い方に考えましょう。仕掛け矢はどれも粗末(そまつ)なもので、当たり(どころ)さえ悪くなければ死なずに済む程度の威力(いりょく)です」

「この被害で軽い方なのか……」

「頭に当たっちゃ、どうしようもないですよ」


 ブヤの(はげ)ましにため息をつくモズを慰めると、俺は右腕を負傷し、女性兵に手当てされている兵へと振り返った。


「ごめん、僕が避けたばっかりに……」

「気にせんでください。幸いにも軽い怪我で済みました」


 兵は笑顔で返すも、どちらかといえばにやけているように見える。

 隣に女性がいるからなんだな? (うらや)ましくないぞ。

明日は午後八時半頃投稿予定です。

それでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ