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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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河原にて

お待たせいたしました。

 山の中に入り捜索(そうさく)した結果、周囲に山賊がいないことを確認した兵たちが(しゃべ)り始めた。


「どうだ?」

「こっちにはいないな」

「とすると、奴ら、(ねぐら)に一か所に集まっているってことか?」

「見張りも置かずに、一体何してんだろう?」

「俺たちがいなくなったんで、安心しきっているのかもな」

「あー、俺なら酒呑んで寝てるかもな」


 緊張が(ほぐ)れるのは良いことだけど、皆、肩の力を抜き過ぎじゃないだろうか。


「おうい、そろそろ塒に向かうよ。それと、もしかすると誰かが聞いているかもしれないから、お喋り(ひか)えてね」

「分かったよ、カゼさん」


 特に何事もなく塒が見える位置、洞穴から河原を挟んで反対側の(がけ)から見下ろせる場所に辿(たど)り着いた。


「カゼ班、ただ今到着しました。塒の状況、どうなってます?」


 先に塒を監視していた班の中の兵の一人が、俺たちが近づいてきたのを察知して班長に知らせる。

 俺たちへ振り向いたのはトマリだった。


「ああ、ついさっき洞穴前の見張りが交代したところだ。……気をつけろ、今度の見張りの片方は仕事熱心のようだ」

「山賊のくせに?」

「根が生真面目なんだろうな。」


 トマリと話していると、少しずつ皆が集まって来た。

 塒の入り口を観察しながら、状況を逐一皆に説明していく。

 その途中、トマリに肩を叩かれたので振り返る。


「どうしたの?」

「見てみろ」

「……見張りの片方がさっきからふらふらしてると思ってたら、寝ちゃったね。お酒でも飲んでいたのかな?」


 職業は山賊でも、一応見張りなんだから仕事はしろよと心の中で突っ込みつつ、監視を続ける。


「真面目に見張りをしてる方は寝ないな」

「俺たちにとっちゃ厄介だが……、何か不憫(ふびん)だな」



 兵たちがこっそりと洞穴前の見張りを観察しながら、ひそひそと会話する。

 そんな兵たちに声をかける。


「あの見張りも捕まえたら、山賊になった理由を聞いてみようか?」

「そうしようか」


 中隊が全員集合した。とはいえ、二百人の大所帯が一か所に集まるとばれてしまうので、塒から多少離れた位置でである。


「いよいよ奴らを捕らえる時が来た。だが、洞穴の内部はそう大きくない。突入する者の数を制限し、残りは逃げられないよう囲むことにする。何か質問はないか?」


 モズが辺りを見回す。声を上げる者はいない。


「突入する班を決めたいと思う。志願する者はいるかい?」


 そこかしこで手が挙がる。突入するには少し多すぎる数だ。


「ううん、どうしよう?」

「選定は俺に任せて下さい。」


 モズが困った顔でブヤを見ると、彼は笑顔で応じ、手を挙げた者たちを指名していく。


「呼ばれた奴は前に出ろ。お前とお前、それとそこのお前と三つ向こうの……そう、お前だ。他には……」

「なるほど……」


 ブヤの古参(こさん)兵を少しだけ、残りは新兵を呼ぶ選定方法を見てモズは理解したようだ。

 ここでも新兵を教育するつもりなんだろう。

 前に出たのは三十人からなる兵だ。


「まあ、こんなものですか」

「ありがとう、勉強になったよ」

「いえ」


 モズがブヤに頭を下げ礼を言う。


「で、あの見張りどうすんだ? この距離なら俺でも遠投(とおな)げで仕留められるけど」


 セリがこの距離なら朝飯前とばかりに訊いてきたが、モズが首を横に振る。


「できれば生かして捕らえたいから、あえてこちらから姿を見せて、戦うこと自体無駄と悟らせて降伏させたい」

「仕方ないな、分かったよ。……面倒だな」


 遠投げを皆に教えてから大分経つが、皆差はあれどめきめき上達している。特に成長著しいのがセリ含めた二十人の元狩人たちで、弓と違って使い方が異なるためさぞかし苦労するかと思っていたら、同じ飛び道具の範疇(はんちゅう)ということなのか、さして時間をおかずに技術をものにした。

 今現在は飛距離と命中精度を上げる訓練中だ。

 この時点で俺の誘導なしに百m先の的を寸分の違いだけで命中させることができるようになった。

 いや、人間の努力って凄いわ。

 俺の場合、なるべく能力を使わないようにしてるけど、ここぞと言う時や、もしものために能力を使用するようにしているため、能力持ちでないセリたちに素の才能で負けているのではないかと思うことがある。

 後ろ向きは良くないと思うのだが、引け目がある。

 かと言って打ち明けて拒絶されたら元も子もないので、黙っているほかない。


「面倒くさいということは、きちんとした手順を踏めば物事がうまくいくということさ」


 さっさと終わらせようとするセリにモズがそう(さと)す。


「そんなもんかねえ」

「君がカゼ君から教わった遠投げ、あれだって手順通りやらないと投げられないし、当たらないだろう? それと同じさ」

「ああ、それなら分かる」


 首を(かし)げるセリにモズが例え話を持ち出した途端、彼の表情が明るくなった。


「じゃあ、囲むよ」

「行動開始!」


 モズの命令とブヤの号令に俺たちは一斉に動き出す。

 木々や岩陰から飛び出した俺たちを見た見張りが、直立不動からわたわたと(あわ)てだした。

 あまりの人数に思考停止したな、あれは。

 ほら、早く通報しないと接敵されちゃうぞ……っ!?

 足元に違和感。下を見れば足に引っかかって切れた糸が見えた。

 糸!?

 思わず叫ぶ。


「全員後退っ!?」


 空気を切り裂く音を聞いた瞬間、川の水で削られた丸石だらけの地面に伏せる。その頭上を何かが(かす)めて行った。


「ぎゃ!?」


 俺の隣にいた兵が悲鳴を上げる。

 顔だけを上げて見れば、うずくまった兵の右腕に短めの矢が刺さっていた。

 しまった、俺のせいか!


「罠だ、仕掛け矢だ、迂闊(うかつ)に動くな! 糸に注意しろ!」


 俺が改めて警告を発する。

 兵たちが足を止め、周囲を見回している。


「罠だと?」

「どこだ?」

「痛てえ!」

「くそっ、やられた!」


 運悪く引っかかった兵が幾人か仕掛け矢を()らったようだ。

 どうか死人が出ませんように。


「……あった、糸だ!」

()れるなよ!?」


 足元に張られていた糸を見つけ出す兵も現れた。

 とは言え、新兵たちの混乱が酷く、我先に来た道を戻ろうとし、罠にかかって仕掛け矢を喰らう者が出る。


「ムゼキ! どういうことだ!?」


 ブヤに問いただされたムゼキが歯噛(はが)みした。


「畜生、やられました! 前は洞穴(ほらあな)の辺りだけにしか罠が無かったのに!」


 なるほど、今回もそうだろうと先入観を持ってしまったのか。

 と、いうことは?


「ここまで広範囲に仕掛けるか、普通!?」


 セリが迷惑そうな顔で糸を(また)ぎながら、洞穴を目指そうとする。

 俺の目に洞穴から人影のような者が()らいだ。


「行くなセリ! 奴らが出て来るぞ!」

「ちっ」


 俺に止められたセリは舌打ちをすると、その場で弓を取り出して矢をつがえる。

 暗闇から幾人もの山賊が盾のような物を構えながら姿を現した。

明日は午後八時半頃に投稿予定です。

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