消えた山賊
今日は早い帰宅となりました。
というわけで投稿します。
「山賊がいなくなった、じゃと?」
村長の住まう家を訪れた俺たちは、モズとブヤ、それに何故か俺が中にお邪魔し、報告をすることになったのだが、困惑した村長の言葉が出てきた。
モズが代表して応対する。
「はい、残されていたのは塒にしていた洞穴に、多くの罠が仕掛けられておりまして……」
「これで一安心……とはいかず、再び戻ってくるおそれがある、と?」
「その可能性が高いかと」
モズの推測に村長が暫し沈黙する。
「……無理を言ってなんじゃが、ここに留まってくれないものかのう」
「我々はミマツ国王から命令を受けた身でして、留まることはできません」
「そうか……」
「むしろ、警戒しなくてはいけないのは、あなたたちの村人たちかと」
モズの科白に村長がきょとんとする。
「……何の話じゃ?」
「あなたたちが山賊討伐の話を持って来た。そして我々が行ったときにはいなくなっていた。つまり……」
「まさか、村の中に山賊と繋がっている者がいる、と?」
「でなければ、こうも偶然が起きるとは考えづらいのです」
「ううむ。……山賊の仲間がこの村の中にいるということはまずい事態じゃ」
「というと?」
「他の近隣の村々も同じ被害に遭って来たからの。それらから爪弾きに会いかねん」
「それなら裏切り者を捕らえた場合、彼らに突き出してそれ相応の罰を与えてしまえば良いのではないでしょうか?」
「それで済めば良いがのう」
村長が腕組みをして唸る。
それだけで人間の鬱憤が解消されるかは、人次第としか言えないからだ。
「我々がこの村を訪れた際、山賊を退治してもらおうと言い出したのはどなたですか?」
「さあのう。誰も彼もが今の状態に困り果てていたから、似たような考えをしたのは間違いないじゃろうなあ」
「我々が訪れた後、村で会合を開きましたか?」
「開いたとも。もたもたしていると其方たちが去ってしまうからの。急ぎ話し合った」
「その中にいた者たちの誰かが山賊に漏らした、あるいは会合の後、誰かに話したらたまたま其の者が繋がりのある者だった……という可能性は?」
「会合に参加した者たちは皆、儂のような年寄ばかりじゃから、それはないと思いたいの。あるとしたら後者の方じゃが……人数が多すぎて絞り込むのは難しかろうなあ」
「……それでは短期間での解決には至りませんね。我々も長くは付き合えませんし、申し訳ございませんがこの辺りで村を出て行かせていただきます」
「……残念じゃ」
目に見えて気落ちする村長を置いて、俺たちはその場を後にした。
村を出て旅を再開し、段々と遠くなる家々を時折振り返り、見やる兵がちらほらといる。
「あの、本当に去るのですか?」
「仕方ないだろう。いつまでも時間をかけられん。先に行ったナガル王子たちが心配だ」
コウが心残りな声で俺たちに問いかけるが、タナソが窘めた。
旅を再開してから三日が過ぎた頃、モズが突然立ち止まった。
「この辺で良いだろう」
「……では?」
モズの言葉にブヤが確認する。
「あの村へ戻るよ」
「え、何をするんですか?」
モズの宣言にコウが首を傾げる。
漸く俺もモズの言葉の意味を理解する。
「ああ、山賊が塒に戻って来ているかもしれないからか」
「ああ、なるほど、この為だったんですね」
俺の解説にコウも合点がいったようだ。
「人間、そんな簡単に自分の住処を捨てられるわけじゃないと思うんだ」
「普通の人ならそう思うんでしょうが、相手は山賊ですよ? 思い入れなんてあるんですかね?」
モズの推測にナテが反論する。どちらが正しいか、俺には分からない。
「行ってみなきゃ分かりません」
「山賊がいれば捕まえるし、いなければ今度こそ諦めるしかないよね」
カヤオと俺の言葉にナテがううんと首を捻る。
「まあ、実際にこの目で見て確認すればいいだけの事か」
「ムゼキが戻って来たぞ!」
山の麓に待機していた俺たちは、セリの言葉と共に偵察を終えたムゼキにモミが話しかける。
「どうだった?」
「いた! 奴ら、塒の前で二人が見張りをしてる。呑気に駄弁ってるようだぞ」
「モズの考えが当たっていたわけか。やるじゃん」
ムゼキの報告にセリがモズを褒める。
「中隊長、どうします?」
「塒以外にも山賊がいるかもしれないから、この間と同じ編成で行こう。ただし、今度は班ごとに偵察隊員を一人付けて、捜索の効率化を図る。それで、山の各所の獣道を利用して侵入し、各班は最終的に塒を目指す。……ということで良いかな?」
「異議な〜し」
ブヤに今後の行動予定を尋ねられたモズが具体的な指示を出し、セリが俺たちを代表して答えた。
「他にはいないか? では直ちに班を編成し、行動に移れ!」
ブヤの命令に俺たちは分かれていく。
さあ、今度は逃がさないぞ。
明日の次話の投稿は午後十時半頃を予定しております。
それでは。




