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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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新エピソード書きあがりました。一日一話、順次投稿します。

 トウヤと名乗る兵を加え西へと向かう俺たちは、まず山道や森の中の移動の仕方を新入りたちに教えながら移動する。

 とうげでへばる新兵を(はげ)ましながら登ったり、狭い川は泳いで渡り、広い川なら渡し舟を利用した。

 ときどき食糧を分けてもらいに村に立ち寄る。村を訪れる前に仕留(しと)めた鳥や(うさぎ)を交換条件に、物腰(やわ)らかに高圧的に出ず交渉することを新兵たちに見せて学ばせる。

 そんなことを繰り返しているうち、とある村を訪れたときにそれは起きた。


「兵隊さんたち、お願いしたいことがあって来ました」

「はい、何でしょう?」


 それなりに年をとった老人が三人、俺たちに会いに来た。代表してモズが応対する。


「実は最近、この村々の近くに山賊が住み着いたようでして、彼奴(きゃつ)らの横暴に悩まされておるのです」

「それは大変ですね」


 山賊か。俺の故郷では見なかったな。

 この辺りは山が近くに見えるから、そこに住み着いたかな?


「つきましては山賊を討伐して頂きたいのですが、やってもらえないでしょうか?」

「近隣の村と共同で退治しないのですか?」

「我々もそうしたいのは山々なのですが、働き手を西の国へ兵としてやってしまいましてな」


 どこの村も人手が足りないのは同じか。

 違いがあるとすれば、豊作かどうかは分からないけど、食糧を分けてもらえるくらいには余裕があるということだろう。拒絶された村も幾つかあった。

 故郷ももっと収穫できていれば良かったのだが。(うらや)ましい。


「そうでしたか。……事情は理解しました。部下たちと相談してくるので少々お待ちください」

「お手数をおかけします」


 老人たちが両手を太ももに当て、腰を折ってお辞儀(じぎ)をする。

 そういえば、前世の日本のスーパーマーケットの店員がお辞儀をするときは両手を重ねていたことをふと思い出した。

 良くは知らないが、日本古来のお辞儀の仕方は目の前の老人たちが正解なのではないだろうか。などと頭の片隅(かたすみ)で考える。

 モズが俺たちへ振り向いて言う。


「分隊長以上はこっちに来てくれ。他はこの場で休んでいること」

『はっ』


 場所を変えてモズ含め十四人が円陣を組む。

 内訳は中隊長モズ、副官ブヤ、小隊長のコウ、タナソ、俺の五人。分隊長がトウヤなど六人。偵察隊の隊長セリと副隊長の二人。そして補給隊隊長のモミだ。

 今回、新たに分隊長などに昇格した彼らはカダの町やミマツ騒乱で特に活躍していた者を起用している。


「さて、聞いていた通り山賊狩りを依頼された訳だけど、僕は受けたいと考えている。反対する人は手を上げてくれないか? 別に怒ったりはしないから」


 そう切り出したモズに新たに(にん)ぜられた分隊長の一人が手を挙げる。


「反対と言う訳ではないんですが、質問が」

「……ああ、すまないけど所属と名前も教えてくれないかな? まだ主だった人の名前を覚えきれてなくてね」

「はい。タナソ隊の第一分隊長のイシカです。西の国へ向かうのが目的なので無視してもよろしいのではないでしょうか?」


 彼の顔に明らかに面倒ごとは避けたいという感情が見えた。

 まあ、先を急ぎたいという気持ちは分かる。


「そうすると、今後この村とその周辺からは食糧を分けてもらえなくなる可能性はおろか、国の要請に兵を出してもらえなくなるかもしれない。だから、なるべくなら避けておきたい」

「……分かりました」


 少し不満そうだが、強く反対するわけでもないのか了解したようだ。


「俺からも質問が。コウ隊の第二分隊長のマレマです。今、山賊狩りをする意味は何でしょうか?」

「この隊に新兵を入れてから今まで鳥や兎の狩りはしてきたけど、人間と命を交えて戦うのは初めての人が多いんじゃないかな? この機会に経験を積ませておこうと思ってね」

「理解しました」

「それと、狩るとは言ったけど、なるべくなら死なせないで捕らえるようにしてもらいたい」


 モズの方針に皆が首を傾げた。


「質問です。カゼ隊の第一分隊長のトウヤです。何故殺さないのでしょうか? 生け捕りにするのは手間がかかります」

「そのことなんだけど、山賊になった事情を聞いておきたいと思ってね」

「事情ですか?」


 先頃の模擬戦で力を見せたトウヤは、分隊長を拝命した。

 首を傾げるトウヤ。

 誰も彼もが好きでなったわけじゃないはずだ。はずなんだよ。


「このご時世(じせい)だ、役立たずと見られた者たちが村を追い出されたりしたんだろう」

「あるいは罪を犯して逃げ出したとか」


 コウとタナソが淡々と予想する。

 正解ではあるが、食い詰めてなる奴もいれば、人をいたぶるのが好きでなった奴も中にはいるからなあ。前世の日本でも海外と比べれば治安は良いものの、義務教育をきちんと受けたのか疑わしい人間に会うこともある。

 某野党が主張していた死刑制度廃止しろ、欧米を見習えとか言っていたのは極論だとは思うが、刑務所に行く犯罪者が()()()()()()のは国民の税金に優しいのが長所だが、短所もあるのであのままで良いのではと判断している。


「……生かして捕らえたら、どうするんですか?」


 その意味が分からないという顔でモズに尋ねるトウヤ。

 もしかしてとは思うが、こいつ、犯罪者は罪の軽重(けいじゅう)関係なく殺してたのか? 思い切り良すぎでしょ。欧米か。


「僕はこの部隊に入れて戦力を増やしたいと考えてるよ。勿論、殺人などの罪を犯した者はそれ相応の罰を下すけど」

「ええ? 入れるんですか?」


 モズの意見にトウヤが心底嫌そうな表情で問い返す。

 トウヤって意外と顔に感情が出るんだな。出し過ぎだろ。


「非情な言い方だろうけど、僕は同郷、ミマツ生まれの君たちの命を最優先に守りたい。彼らは僕らの先頭に立たせ盾にする」

「うわあ」

「そんな扱いしたら戦のどさくさに紛れて逃げ出すか、逆恨みされて背後から刺されそうなんですが……」


 モズのはっきりとした物言いにコウが呻いて、タナソが問題点をあげる。


「最悪の事態にはならないよう、戦働(いくさばたら)き次第で報酬(ほうしゅう)も与えるさ。例えば無罪放免にしてどこかの地で農民になって暮らしてもらうとか、部隊に正式に入れて一端の戦友として接してもらえるとかね」

「なるほど……」


 この説明には理解しやすかったのだろう、トウヤが(うなず)く。


「まあ、盾として扱うけど、必要なら肩を並べて戦うし援護もする。ある程度の信頼は勝ち取らないといけない」

「そうですね」


 彼の言葉に(しき)りと頷くトウヤ。

 理解を深めることができて何より。

 モズの考えに俺は彼が変わったなと感じた。ミマツ騒乱の最中は敵味方の区別なく、どうすれば犠牲者が出ないか苦心していたのを時折見ていた。

 武力に関しては副官のブヤに任せきりだったからな。

 環境がそうせざるを得なかったのか、俺たちと交流して考えを変えたのかは分からない。

 そこまでつらつらと考えていたら、ふとモズがミマツ国の王女の一人と付き合いだしたことを思い出した。

 まさかとは思うが、将来国王の重臣になる可能性があるのか、モズが?

 そのための戦功を、手柄を得るための行動なのか?

 そうでなくとも政治的に上に行くことは約束されている立場だ。

 あながち間違いでもないのかもしれない。

 他に質問や反対をする人は出なかったので、俺たちは山賊狩りをすることに決めた。


「お待たせいたしました。あなたたちの依頼を引き受けましょう」

「おお、ありがとう」

「これでこの辺りの村は安泰だ」

「商人が安心してやって来れますな」


 モズの優しい語りかけに緊張がほぐれた老人たちは安堵した。


「それで、山賊はどこを根城にしていますか?」

「そうじゃった」


 老人の一人がそれほど高くない木々に覆われた山の一つを指差す。


「やつらの住処はよく分からんが、大体あの辺りによく出おる」

「あの辺りの地形を詳しく教えてもらえないでしょうか?」

「そうじゃのう……儂がまだ若い頃駆け回ったことがあるが、それ以降は若い者に任せきりで入ったことがないから、今はどうなっておるのかわからん。ただ、この村の側を流れる川の上流の河原に洞穴(ほらあな)があったのう。もしかすると、そこを(ねぐら)にしているのかもしれん」

「おじいさん達の村に狩人はいませんか? できればその方に案内してもらいたいのですが……」

「残念ながら腕の良い狩人も兵として引っ張られてしまってのう。自慢の孫なんじゃが……」

「それはお気の毒に。……自力で探すことにします」

「すまんのう」


 老人達は礼を言うと村の中に戻って行った。

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