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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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予定

 一頻ひとしきり笑った後、ブヤが真剣な顔に戻って言う。


「ただ、問題がある」

「と言うと?」

「俺たちは子供のころから訓練を受けていたので、武器の扱いは一通りできる。だが、試験を合格した者たちは余り訓練を受けていないようだ。彼ら彼女らにいきなり複数の武器を扱わせるのはどうかと思ってな」


 モズの問いにブヤが理由を説明した。


「言われてみれば、そうですね。どれか一つにしぼって訓練させますか?」

「かと言って、武器は消耗品だ。使えなくなれば別の武器が必要になる。となると、何を選ぶかだが……」


 タナソが同意して案を出すが、ブヤの表情はすぐれない。


「素手と遠投げに使う布と石は問題ないとして、……槍ですかね?」

「剣は短いから、相手の届かない所から一方的に突き刺す、というのは魅力みりょく的ですよね」

「それでいこうか。なるべくケガが少ない方が良いだろうしね」


 コウが武器の持ち歩きの利便性を第一にして、俺はそれに頷き、モズが了承した。


「本当は弓も欲しいとこなんだが、慣れるまで時間かかるからなあ」

「弓矢で狩りをしたことがある人にだけ持たせましょう」

「そうしよう。……合格した男どもはそれでいくとして、女たちはどうするか」


 セリが弓をほっしたが、あれは年単位で訓練しないと身につかない。タナソが妥協案を出し、ブヤが同意したところで、女性たちの訓練方法をどうするか考える。

 俺含めて皆が悩む。男所帯なので、体力面で劣る女性への対応の仕方が分からないのだ。


「駄目です。いくら考えても良い方法が思いつきません」

「こうしましょう。護身術を学んでいたモミなら良い案があるかもしれません。ちょっと彼女を呼んで来ます」

「分かった」


 一番最初にタナソがを上げた。皆も良い案が思い浮かばないようだ。

 女性は女性で何か良い方法を思いつくかもしれないと俺は考え、打開策を言ってみたらモズに頷かれた。

 女性たちが夕飯の後片付けをしている所へ走る。

 彼女たちは駄弁だべりながら、てきぱきと手を動かしている。

 俺は適当な人に声をかける。


「すいません、モミさんいますか?」

「何だい、坊や?」


 いきなり坊や呼びされた。

 いや、まあ、二十代くらいの女性が対応してくれてるんだけど、彼女からしてみれば子供か、うん。

 ちょっと落ち込みながらもここに来た理由を説明する。


「坊や……。あ、いえ、明日から貴方たちにも身を守るための戦い方を、念のため覚えてもらうことになったんですが、ここにいる女性たちの中で、彼女が一番そういうことに詳しいので話を訊きたいんです」

「ああ、そうなのかい。……モミ、あんたを呼んでる兵がいるよ!」

「はいはい、何ですか。って、カゼ、どうしたの?」


 女性が呼ぶと少し離れた所でき火を消していたモミが小走りでって来た。


「モズたちが君と相談したいことがあるんだって。来てくれる?」

「ああ、うん、分かった。お姉さん、火の始末、よろしく」

「あいよ」


 俺が説明をはぶいて言うと、何かあると理解した彼女は、年上の女性に後を任せて一緒に歩き出す。


「どう、あのお姉さんたちと上手くやっていけそう?」

「大丈夫、皆優しいから安心した」

「仲間外れにされなくて良かったよ」


 女性たちには女性たちの序列じょれつ、付き合いというものがあるから極力きょくりょくれないでおきたいが、何か起きる前には相談や仲裁ちゅうさいが必要になると考えて、それとなく聞いてみるが、色よい返事が返ってきたので、ひとまず大丈夫そうだと安堵あんどする。


「あ、心配してくれたんだ」

「……旅の仲間としてだぞ?」

「はいはい、そういうことにしておく」


 モミの先ほどとは別の意味の笑顔に俺は念のため釘を刺しておくが、彼女はにこにこと笑い、機嫌が良さそうだ。

 ううん、いきなり許嫁ができたと言われても、どう対応したら良いのか分からない。びを売るなんてもってのほかだから普通に接してるけど、『冷たい』とか言われたりしないだろうか?

 悩んでるうちにモズたちの所に到着した。


「待たせたわね。相談って何?」

「明日から女性たちにも戦闘訓練をしてもらう予定なんだけど、覚える技術が複数あってね。満遍まんべんなく覚えさせるか、一つか二つに絞ろうかと思っているんだけど、どっちが良いかな?」


 彼女の話し相手に、皆を代表してモズが会話をする。


「複数って、何があるの?」

「素手と短刀、剣、槍、遠投げの五つだね」

「色々あるのね。……遠投げ? 何それ」


 おや、王族出身なのに遠投げを知らない? そこまで調べられてないのか?

 まあ、彼女の場合は市場調査が趣味のようだし、武器については興味無いのかもしれない。


「石を弓矢よりも遠くに投げて敵にぶつける方法だね」

「へえ、そんなのあるんだ。簡単そうね。ううん……、他は、剣は重そうだから持たせたくないわね、技術もるし。素手と短刀は私が良く知ってるから教えてあげられるわ。槍は……どうだろ?」

「槍については敵の届かない所から刺せるから便利だと思ったんだけど」

「良いんじゃない? ……あ、でも、それじゃあ覚えるのが四つになっちゃうか」

「そうなんだ、どれも捨てるにはしくてさ。君に選んで欲しいと思ったんだ」

「ううん、槍があるなら素手は必要ないかな? でも、無いと困る事もあるだろうし」


 皆が困っていたので、女性の立場であるなら答えを出せると期待したんだけど、彼女も迷っているみたいだ。

 そこで黙って聞いていたセリが口を挟む。


「困るって何が?」

「……丁度ちょうど良い。あんた、こっち来て手を出しなさい」

「何だよ?」


 セリは立ち上がると彼女に近付き、無造作むぞうさに右手を突き出した。


「例えば、こう」

「お? ……痛たたたた!?」


 彼女がセリの右側に移動しながら百八十度反転しセリと横並びになると、モミの左腕がセリの右腕を絡める。

 傍目はためから見て彼氏に寄りう彼女っぽい感じだが、セリが何故か痛みを訴え始めた。


「で、こうすると」

「痛い痛い、動くなって!?」


 モミの移動に合わせてセリが歩き出す。

 いや、無理矢理歩かされているな、あれは。

 二人がこちらに向き直って理由が判明した。

 モミが絡めたセリの腕を締めながら、右手で彼の右手を掴んでひねり、梃子てこの原理で腕をめている。

 ああ、思い出した。前世の合氣道で見た技だ。


「捕まえた人を、このままの状態でいくらでも連れ回せるわけ」

『へええ』


 彼女の簡潔な説明に皆が感心する。


「分かった、分かったから、離せっ」

「はい、ありがとね。……という訳で、必要な技も教えた方が役に立つと思うんだ」


 セリの抗議こうぎにモミが解放しながら主張し、ブヤが頷く。


「なるほど、無暗むやみに使用武器を限定するのも良くない、と」

「そうゆうこと。あたしとしては誰でも覚えられる、単純な技を組み合わせた訓練をさせたいと思ってるんだけど」

「時間が無いから即席そくせきで育成するとなると、仕方がない、か」


 彼女の説明にブヤが了承りょうしょうした。

 何だっけ、自分が得意とする技をかけるために、相手を望んだ位置に誘い込むとか、前世の先生が言ってたな。それをやろうってことか。


「それじゃあ、明日からの訓練からそれでお願いするよ」

「分かった。訓練するのは良いんだけど、武器は?」

「そのことなんだけど、合格者の数を一気に増やしたから、数が揃っていないんだ。今調達しているところだから待って欲しい。なので、明日は素手と遠投げを中心にやってもらいたいんだ」

「そう。ならしょうがないわね。……他に言う事ない? それじゃ」

「ああ、おやすみ」


 モズに頼まれた彼女は不承ふしょう不承ぶしょう頷いて、去って行こうとしたが、途中できびすを返して戻って来た。

 モズが不思議そうな顔で尋ねる。


「どうしたんだい?」

「モズ隊長に訊きたいことあるんだけど、あれからどう?」

「あれからって。……ああ、彼女たちの事か。うん、三女と上手くいってるよ」


 何の話かと思えば、彼女がモズに女性を紹介するというものだったか。

 どうやら良い方向に話が進んでいるらしい。


「そうなんだ、良かった。良い男がいないってなげいてたからどうかなって思ってたんだ」

「王族も大変だね」

「じゃあ、今度こそ」

「おやすみ」


 今度こそ彼女は女性たちの下へ帰って行った。


「さて、俺たちも寝るか」

「そうしよう」


 コウが音頭おんどをとって、俺たちも就寝しゅうしんするために鎧を脱ぐ。

 こうしてこの日もつつがなく終わった。

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