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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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選抜

 翌朝、昨日の試験を通過した志願者たちの前に立った俺たちは、今日の試験内容を発表した。

 女性はケガに対する応急手当の試験を行い、その後、用意された食材を使い、夕餉ゆうげの準備をさせて味を見るというもの。

 男は体術や槍を使った戦い方を見るため、部隊の兵が一対一で相手をし、使えるかどうかを兵たちに判断してもらう試験だ。

 女性の試験は、単独行動を求められやすいセリ率いる偵察隊が見て、残りは男たちの相手だ。

 俺たち部隊の一人につき志願者五、六人を受け持つことになった。

 適当に間隔をけて俺は志願者たちと相対する。


「君たちが使う槍は一組につき一本しかないから、持ち回りで使うように。まず最初は誰が相手だい?」

「俺がやります」


 事前の説明の後、俺の問いに若者が進み出た。試験を通過しただけあって、体格はなかなかのものだ。


遠慮えんりょなくかかって来て。これでも生まれ育った村ではかなり強いんだ」

「そうですか、ではお言葉に甘えて」


 若者は槍を構えると、全力で俺の顔目掛けて突いて来た。俺はひょいとかわす。

 これはあくまでも戦えるかどうかを判断する試験だ。今はちょっと下手でも、西の国へ行く途中で訓練してやれば上達するだろうから、大目おおめに見るつもりだ。

 見るつもりだったんだけど。

 息切れしてひざをついた若者に声をかける。


「もうこれ以上は動けなさそうだね。次の人に交代して休んでて。一巡ひとめぐりしたら今度は体術を見るから」

「あ、ありがとうございました……」


 なんか弱くない? いや、まだ一人目だし、全員を見てからでも遅くはない。

 そう考えて一巡いちじゅんする。

 ……全員弱かった。

 え、何、俺が強すぎるわけじゃないよね? 最低限、賊を一対一で相手にして生き残れるくらいの強さで相対あいたいしたんだけど。

 続けて体術を見る。

 皆、それなりの訓練を受けているようだけど、やっぱり弱い。

 全員がへばったところで休憩を入れてあげる。

 その間に俺は、同じく休憩に入って手のいた兵たちを連れてブヤの下を訪れる。


「ブヤ副隊長」

「どうした?」

「志願者たちのことなんですけど」


 ブヤが試験をしていた者たちに休んでいるよう言い、志願者たちから距離をとる。


「何だ?」

「彼ら、弱すぎませんか? これじゃあ、西の国へ連れて行っても使い物になりませんよ」


 俺が兵たちを代表して批評ひひょうする。

 ブヤが兵たちに尋ねる。


「他の者たちも同じ意見なのか?」

「そうですね、彼らの動きが全体的に鈍いです」

「駆け出しの素人しろうとと言った感じですね」

「ううむ」


 ブヤは俺たちの感想に腕を組み、困った口調で言う。


「実を言うと、俺が受け持ってる奴らもそうでな」

「一体、どういうことなんでしょう? 普通は優秀な者を中心に各村から出てくるはずなんですが」

「反乱のせいで、いざという時、使える者は手元に残しておきたかったということでは?」

「あり得る」


 俺の疑問に兵の一人が推測を口にし、ブヤが頷いた。


「とりあえず、一通り試験を行った後、人数をしぼろう。話はそれからだ」

「分かりました」


 俺と兵たちはそれぞれの持ち場に戻ると、引き続き試験を行う。

 試験を行ううち、志願者たちの戦い方にそれぞれくせがあることが見えてきた。牽制けんせいに引っ掛かりやすかったり、ひたすら力で押してきたり、頭を使って俺を出し抜こうとしたりと様々だ。

 彼らの癖を見て、こいつは旅先で使い物になりそうだと思った者を合格させることにした。


「はい、僕との試験、終了だ。ご苦労様。じゃあ、これから合格者を発表するね」


 地面に座り込んだ志願者たちがごくりとつばむ。

 俺は二人を指差した。


「君と君、合格。おめでとう」

「や、やった」

「ありがとうございます!」


 不合格者たちは唇をみ締めうつむいた。


「合格理由なんだけどね、君は他の人よりもちょっと動きが良かった。すじが良いね。これから僕たちがしごいてあげるから、もっと強くなれると思う。もう一人の君は頭を使って俺と戦ったところかな。考えることは大事だからね」

「じゃ、じゃあ、俺が落ちた理由は何ですか?」


 俺の評価に喜ぶ二人とは別に、ひときわ体格の良い、不合格者の一人が訊いてきた。


「君の場合は力に物を言わせてきたのが原因かな。別にそのこと自体は悪くない。雑魚ざこは何とか倒せると思う。でも、その無茶な行動はいつか命を落とす。旅先で持たないと判断したよ」

「そうですか……」


 俺にはっきり言われたのが心にきたのか項垂うなだれる。


「力任せだけじゃなくて、何年かに渡って技術を身に付ければいい線いくと思うよ。……君は故郷に居場所ある?」

「いえ、俺はえらくなるんだって言って、家を飛び出してきたんです」

「それなら悪いけど、家族の下に帰った方が良い。今回の募集ぼしゅうは単なる警備けいびじゃなくて、賊との命のやり取りだから。僕がいつでも未熟みじゅくな君のそばにいて、助けられる友人なら良かったんだけど、生憎あいにく僕は全員の安全を守らなくちゃいけない立場なんだ。最悪、君が死ぬことになっても、他の仲間を守らなくちゃならない時もある。だから、ごめんね?」

「……はい」


 俺がさとすように言うと若者は涙ぐんだ。

 周囲を見回すと、同じように合格不合格を言い渡された者たちの明暗めいあんが分かれていた。

 気付けば太陽は傾いて夕日に差し掛かろうとしていた。

 そういえば、モズが読み書きの手伝いが欲しいって言ってたな。


「つかぬ事を訊くけど、この中に読み書きできる人、いる?」


 突然、関係ない事を訊かれて皆戸惑っていたが、全員首を横に振った。

 俺が異常なだけで、識字率は非常に低いらしい。


「そうか、いや、何でもないんだ。……そろそろ夕飯にしようか。合格者も不合格者も食べていくと良い」

「分かりました」

「ありがとうございます」


 俺が志願者たちに声をかけて女性たちが夕餉の準備をしている場所まで歩く。

 周囲の試験が終わった兵たちや志願者たちも同様だ。

 さて、味の方はどうだろう? 美味うまければ採用だ。

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