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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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志願者

 俺は集まった兵役の志願者の数を見て言った。


「ちょっと、いや、かなり多くない?」

「多すぎだろ」


 見渡す限りの人、人、人。

 俺とセリがうんざりする中、タナソが狼狽うろたえる。


「どうなってるんだ、一体」

「まあ、国中で反乱が起きる程だからねえ」

「十中八九、口減らしだろうな」


 一方、モズとブヤは冷静にこの状況を見ていた。


「おい、あそこに女がいる」

「本当だ。ていうか、あっちにもその向こうにもいるぞ」


 コウの指摘にセリが他にも何人もいるのを発見した。


「騒動が終わっても、不作の影響は残る、か」

「この人たち、全体で何人いるの? 三百、五百?」

「この中から三十人選べってことかよ」

「明らかに兵役には無理そうな人も混じってるな」


 モズが苦々しい表情でつぶやき、俺は正確な数を知りたくて周りに訊いたが反応が無い。

 コウが人数の制限にぼやき、ブヤが眉をしかめて志願者たちを眺める。

 選ばれずに残される人たちが不憫すぎる。


「僕、連れて行く数を増やせないか、王様に掛け合って来ます」

「分かった。お願いするよ」


 ても立ってもられなくて、俺は王の下へ知らせに行くため、モズに許可を取ってこの場を離れた。


「西の国へ連れて行く兵の数を増やして欲しい? まあ、構わんが、一体何人来たんだ?」

「五百人超えてます」

「そんなにか」


 ゴサクが王の脇にひかえ、王が竹簡ちっかんに筆を走らせながら俺の報告に答える。志願者のあまりの数の多さに王は筆を止めて顔を上げた。


「しかも口減らしのためか、明らかに病人とか、兵役に耐えられそうもない体つきの人、女性まで混じってます」

「……民は何を考えてるんだ」

「そこまで食料が不足しているんでしょう。だから、各村の代表は、せめて西の国へ移住させようと考えたのかもしれません」

「そんな馬鹿な話があるか。西の国だって受け入れられるかどうか分からないんだぞ」


 志願者たちの具体的な状態に筆を置いた王は呆れる。更に俺の推測に木製の机を拳でどんと叩きながら憤慨ふんがいした。


わらにもすがりたい、ということなのかもしれません」

「……よし、それならこうしよう。お前たちも含めて総勢二百人で行って良い。ただし病人や弱者は含まない。これで良いな?」


 ゴサクの見解に王が案を出した。

 俺はその中に特定の人たちが入っていないことに気付いて尋ねる。


「……女性は?」

「力仕事は無理だろうが、飯炊めしたきやケガの応急処置くらいはできるだろう。上手く活用しろ」

「分かりました」


 それくらいなら大丈夫だろう。分業で何とかなる。

 後は長旅に付いていける足があるかどうかだ。これはこれから行われるであろう体力の試験で見れば良いか。


「しかし、女も同行させるとなると……、よし、モミも連れて行け」

「はい?」


 王の前触まえぶれの無い発言に俺は首をかしげる。

 待て、どうしてそうなる。


「許嫁だからな。西の国へ行って賊を追い払ったら、お前はそのまま海を渡って対岸の国で武官として働け。この国の身分証明書を持たせてやる」

ついでに国をって来いってことですか。西の国の騒動が終わったら戻らなくてもよろしいので?」

「俺だっていつまで王でいられるか分からんからな。後継者にはお前の事を話しておくつもりだが、時間を無駄に消費するのは良くない」


 王の言葉に俺ははっと気付く。俺は不老不死だが、俺以外の人間の時間は有限だということに。

 ここまでお世話になったんだ。それにこたえられなければ男じゃない。


「分かりました。なるべく早く国をおこして見せましょう」

「頼むぞ。西の国が安定すれば交易こうえきが盛んになり、色々と商品のやり取りがしやすくなる」

「この国で役立ちそうな品を送りたいですね。……ではまた、のちほど」


 王の下を辞した俺はモズたちの所へ戻る。

 最初に俺を見つけたセリが声をかけてくる。


「おう、カゼ、どうだった?」

「合わせて二百人までだったら良いって。弱者や病人は除く。あと飯炊きに女性を連れて行っても良いって許可が出た」

「そうか、ご苦労様。それで、どうやって彼らから選ぼうか」


 俺をねぎらったモズが選抜せんばつ方法を考える。


「西の国へ歩いて行かなければなりませんから、単純に体力勝負で行きましょう。弱い者からふるい落としていけば、しぼれるでしょう」

「それで行こうか」


 ブヤの進言にモズが頷いて、目の前でたむろしている集団に向けて大声で呼びかける。


「皆、待たせてすまない。これより西の国へ行くための人を選ぶ試験に入る。まず、良い知らせと悪い知らせがある。良い知らせは、当初三十人を選ぶ予定だったけど、志願者の人数を考慮こうりょして百三十人を連れて行けることになった!」


 その言葉を聞いた志願者たちがおおっと希望に満ちた声を上げる。

 モズは皆の声がおさまるのを待ってから、続きを口にする。


「続いて悪い知らせなんだけど、西の国へ行くためには相当な長い距離を歩く。時には川を渡り、山を登る必要がある。だから、体力で劣る者や病人は連れて行けない。途中で倒れられたら見捨てて行かなければならないんだ!」


 彼の発言を聞いて、自身を理解している者がいるのだろう、明らかにせ細った者や病人が項垂うなだれた。


「では、試験の内容を説明する。歩く。それだけだ!」


 モズに説明を任されたブヤが発言し、どんな試験の内容か身構えていた志願者たちが拍子ひょうし抜けした顔になる。


「歩けなくなった者から順に失格とする!」


 続けて放たれたブヤの言葉に皆の顔が引き締まった。


「事前に言っておくが、強制はしない。病人が無理に参加しても死を早めるだけだ。今のうちに辞退することを勧めておく!」


 ブヤの温情おんじょうな言葉をかけられた志願者たちの中から、ぽつぽつと抜け出す者たちが出た。その数、四十人以上。


「試験は全員横並びで歩くことになる!」


 モズから指示を受けた部隊の兵が三十人ずつ、二つの集団に分かれ、百mくらいの距離をとって二列に並ぶ。前後の間隔かんかく一人二十m空けている。


「今、君たちの手前に立っている兵から、奥に立っている兵の所まで歩き、引き返して来い。戻って来たらまた行くように。これを繰り返す。では、皆、並べ!」


 ブヤの号令に志願者たちがのろのろと動き始める。


「遅い、駆け足!」


 ブヤの怒鳴どなり声に皆が慌てて並ぼうとする。その中から痩せた者たちがよろけて倒れ込んだ。


「今倒れた者は失格とする!」

「そ、そんな」

「酷い」

横暴おうぼうだ」


 起き上がった彼らが抗議するが、ブヤが怒鳴り返した。


「黙れ、もう試験は始まっているんだ。言ったはずだ、残された者は見捨てていくと!」


 残念だけど、ブヤの言う通りだった。たったこれだけの動作でつまづくようでは話にならない。


「並んだな!? では、歩け!」

『歩け!』


 ブヤの合図に列を作った兵たちが唱和しょうわする。

 その声を受けて皆が歩き出した。


「遅い。もっと速く。そうだ、その調子だ!」

「おい、そこの人、失格!」

「君も失格だ!」


 体力が無い者や無理を押して参加した病人は早々に脱落し、小隊長以上の俺たちが失格したことを告げて回る。

 それ以外の志願者たちは最初、往復二十回までは皆順調に歩いていた。だが、三十、四十と数を増すごとに脱落者が増えていった。

 何とか倒れずに食いついている者も周回遅れが出始め、その者たちも失格となる。

 皆についていけず、泣きじゃくりながら地面を握りしめようとする失格者を、俺は気の毒に思いながらも顔をらした。

 試験は続く。

 往復回数が八十に到達する頃には試験開始から参加人数が半分以下まで減っていた。


「どうします? そろそろ日が落ちますが」

「ううん、人数はまだ結構いるけど、試験の続きは明日以降にしないか?」

「そうですね、分かりました」


 大声を出し続けたブヤが、少しかすれた声でモズに訊くと、試験を持ち越す提案が返ってきた。


「ようし、()()()試験はここまでとする。続きはまた明日だ。休んで良いぞ!」

()()()試験終わり。休め!』


 ブヤたちの言葉を聞いた志願者たちが、その場に崩れるように座り込んだ。

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