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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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激突

 状況を整理しよう。

 村の入り口、環濠かんごうが掘られたところに、簡素な丸太を十本並べ、縄で固定されて橋として機能し、村側の方に三角形に組まれた柵を置いて、即席の防御陣地として置かれており、その後ろに兵と村人たちが手に槍や弓矢を持って応戦している。


「これでもらえ!」

「手伝ってくれ、こいつしぶといぞ!」


 橋を渡り侵入しようとするぞくを柵越しに槍で突き、立ち塞がる兵。

 環濠を降りようとして矢で射落とされる賊や環濠から這い上がろうとしてふちに手が届かず、槍で突き殺される賊。

 大まかに分けて三つの死に分かれた。


「矢をどんどん持って来て!」


 三本同時に矢を放ち、そのどれもが確実に死をもたらすのを見た村人たちが矢を集めて持ってくる。

 運ばれてきた矢は山積みになり、俺が掴みやすいよう一人が矢を三本ずつ用意してくれる。

 ありがたいことだ。

 合氣道の先生が言っていた。多数の敵を相手にするときは、如何いかに自分が疲れずに相手を効率良く殺せるかが問題だと。

 その回答が集団での遠投とおなげであり、俺のサイコキネシスなんだろうと思っている。

 ちなみに俺は村の入り口からほど近い東側のちょっとしたやぐらの上で三人の村人と一緒に弓を引いて矢を射ていた。

 十回射たところで賊は環濠の中を埋め尽くし、こちらに侵入しようとこころみ始めた。誰も彼もが俺を脅威と認識したのか、盾を持たない賊はせめてもと腕を掲げ盾にしようとするが、サイコキネシスの誘導はそこまで甘くない。

 腕で顔を隠せるのはせいぜい全体の半分程度で、残りはがら空きである。故に、空いてる箇所に容赦ようしゃなく射込んでいった。また、仲間が射た矢もサイコキネシスで賊の頭部に誘導する。

 まれに弓矢を装備している賊もいたが、弓が二度と使えないようにつるをパイロキネシスで発火させてもらう。

 橋の上は賊の死体で埋まり、それらを乗り越えて賊が突撃するものの、兵の槍衾やりぶすまの前に沈んでいく。橋は奴らの体重でたわみ今にも折れそうな具合だ。まあ、元々あんな大人数が一度に渡ることを想定して作られたわけじゃないだろうし、遠からず折れるかもしれない。

 一方、環濠の中も阿鼻あび叫喚きょうかんの地獄絵図だ。

 すぐに突破できるだろうと環濠を甘く見て自ら中に降り、むき出しの土に手をかけて登ろうとするも、乾いた土はぼろぼろと崩れてしまい、一向に登れない上に、兵と村人たちが槍を下に向けてぐさぐさと刺してくる。たちまち環濠の中も死体が量産される。


「くそ、登れねえ!」

「どうすんだ、これ!?」

「死体だ、死体を積み上げろ! それを足場にして登れ!」


 しかし、敵もさるもの、仲間の死体を抱えて環濠の底に並べ始めた。


「させるか! 弓矢を持っている者は死体を抱えてる奴を狙え!」

『はっ!』

「はい、カゼさん!」


 櫓の下にいる兵や村人たちに指示をすると威勢のいい返事がくる。

 おい、ちょっと、今さん付けで言った人誰?

 弓で矢を射る行動は止めてないけど、兵たちから出た発言でないのはすぐに分かった。

 ヨシマの村人から? 一体何故? しかも声から察するにいい年したおっさんの声だぞ。

 そういえば、この村に帰って来た時、俺が西の国へ行く途中までのことの説明を頼んだ兵いたよな。

 もしかして、何からん事吹き込んだのか?

 困る、非常に困る。西の国から戻って来たら、しばらく穏やかな生活をと思っていたのに、年上の相手に気遣きづかわれるのは精神的に疲れそうだ。

 そんな事を考えながらも手は止めない。

 そうこうしている内に死体はあちこちで徐々に積み上がり、賊がよじ登って来た。


「槍を持っている者は上がって来た奴を突き殺せ!」

『はっ』

「はい、カゼさん!」


 いや、本当勘弁して下さい。

 上がって来た賊は即席で作った柵を退かそうと手をかけるが、大の大人一人で持ち上がるほど軽くはない。たちまち槍を突き込まれて死体でできた坂道をごろごろと落下していった。


「何をしている! 柵を早く退かせ!」

「駄目だ、重い……ぐえっ」


 それからしばらくの間は柵を退かそうとする賊を倒す作業にいそしんだが、他の場所でも死体が積みあがってきたようで、柵に手をかける賊が一度に二人、三人と増え、徐々に柵がずらされ始める。


「誰か、柵が動かないようにしがみついて!」

「おい、そいつが邪魔だ、殺せ!」


 俺に狙いを定めたいらしく、指差してきた男を即座に射殺す。しかし、既に指示された発言は取り消せずに、俺の視界ににいた何十人もの目がこちらを向いた。


「ああ、くそっ、きりがない!」


 四十何回目かの矢を放ち賊を射倒すが、一向に奴らの数は衰えを見せない。

 それもそのはず、後から増援として駆けつけてくるからだ。

 戦なんだから殺し合いになるのは覚悟していたし、どちらかが倒れるまで終わらないことも知っている。けど、能力を使ってでも殺しきれないほどの、大人数での本格的なぶつかり合いはこれが初めてではないだろうか。

 既に環濠の中にある死体は半ばまで埋まり、先ほどから賊がよじ登ってきてはこちらに槍を突いてきたり、柵を退かそうと持ち上げようとしていたりとせわしい。

 一方、俺たちの方も死人はあまり出ていないが、怪我けが人が加速度的に増えてきた。一番多い怪我が槍を持った手や腕を傷つけられる場合だが、これは他の人に代わってもらい、後方で治療を受けることで犠牲を少なくしていた。

 だが、この状態もいつまで持つか。


「矢はどれくらい残ってるの!?」

「まだまだあります、遠慮なく射って下さい!」

「分かった、ありがとう!」


 矢を補充していた村人が答えてくれる。

 まだ大丈夫。

 唐突に村の入り口前にかっていた丸太の橋が、死体と生きている賊の重みに耐えきれず、折れて環濠の中に生者死者共々落下した。

 これで賊は環濠を渡るしかなくなった。

 まだいける。


「報告! 反乱勢の一部が北と東に移動しています! 側面から回り込むつもりのようです!」


 不味い。

 環濠と柵は仲の悪いナナサトに向けて作ってあったが、それ以外はまだ手付かずなのに賊は気付いたようだ。

 櫓から見下ろすと、目の前にいた奴らの中の矢の届かない後方にいる集団が左右に分かれて行くのが見える。


「モズ隊長に今言ったことを伝令して!」

「はっ!」


 本当は側面に回り込もうとする集団、どちらかに向かいたいところなんだけど、ここを離れたら皆が放つ矢の誘導ができなくなり、奴らを押しとどめることが難しくなる。

 かと言って、側面の対応をおこたると、村の中にまで侵入されて挟み撃ちにされてしまう可能性もある。

 今はモズ隊長の判断と、ヨシマ村の男衆の力に任せる他ないと考えた。

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