第二の転生直後
あれ、作者名がかぶってる(滝汗
どうしよう
目を覚ました。
視界に広がる青空と白い雲。そして遥か先に見える大地。
「ん?」
大地は日本列島だった。
「ちょ」
まさかまさか。
浮遊していた体が落下を始める。
今、どのくらいの高さにいるのかとか、パラシュートついてないかとか混乱する。
「うひいぃぃぃぃぃいぃ」
パラシュート無い! 死ぬ! え、何で、転生じゃなかったの!?
様々な思考が飛び交う中、ふと違和感を覚えた。
「これだけの高さから落下してるのに、風圧を一切感じない?」
改めて自分の体を見る。体が透けて向こう側が見えている。
一体どうなっているんだ。
とりあえず、普通の状態ではないと分かったのか、少し落ち着いてきた。
日本列島を見下ろす。
「あれ?」
よく見ると普段地図で見る形と随分違って見える。具体的には関東平野や濃尾平野、大阪辺りなど平野部がことごとく海になっている点だ。
「ああ、思い出した。そういえば歴史の授業で昔は海だった所があるって習ったっけ」
生まれ故郷は海の底、か。
郷愁を感じていたが、どんどん地表に近づいていくのが分かる。なんとなく関東地方に引き寄せられてるような気がする。
「そっちに何かあるのか?」
長野県を越えて群馬県上空へ滑空するように移動する。そのうち、大分高度が下がったのか、だんだん人が住んでいる集落らしきものが見えてくる。
その近辺を探ると、ある者は海で漁をしてたり、畑で農業をしている姿があった。
また、人々が槍を手に互いに争う風景も目撃した。
もっとよく観察しようと思ったのだが、空中を横に滑る俺はその光景が流されて行ってしまうので、見物できなかった。
そうこうしているうちに、移動していた体がとある村の上空で停止する。
ここまで見てきた集落と比べて、大きくもなく小さくもなかった。
「この村になにかあるのか?」
今度はゆっくりと降下を始める。降りていく先を見ると、とある女性の一団が集まっているようだった。彼女たちの中心にまだ少女と思しき女が大きなお腹を抱えて苦しんでいる様子が見える。
「えっと、つまり、あの女性が俺の母親となるのか?」
そうこぼしている間に俺は彼女のお腹に吸い込まれて行き、意識が途絶えた。
次に目を覚ましたとき、身体中に激痛を感じた。全身を絶え間なく絞られる様な感覚を味わいつつ、心から絶叫する。精神が狂いそうになるほどの混乱で、産道を通っている最中の痛みだと自覚するのは翌日になってからだった。
「おんぎゃー!」
呼吸できるようになると、第一声は痛みから来る泣き声だった。
誰かに抱かれあやされる。まるで、もう怖いことはないのだと。
安心感が満たされ、強烈な睡魔に襲われる。逃れることができずにあっさり意識を手放した。
目を開けられるようになるまでしばらく時間がかかったように思える。時計が無いというのは不便なものだ。
最初は視界がぼやけていたが、だんだんはっきり見えるようになってきた。
どうやら今は誰かに背負われているらしい。視界が限定されているので後頭部しか見えない。いや、視線をずらすと何とか見える。他にも人がいた。外見からして十代に満たない子供達だ。どうやら森の中で食べられる野草を摘んでいるらしい。そして、彼らの背にも赤子がちらほら見える。子守りを親に任されているようだ。
同年代の子達は俺の友達になるかもしれないと思うと、将来が楽しみになった。
ふと、尿意を催した。まずい、このままでは決壊し背負ってる人物に迷惑をかけてしまう。
とりあえず大声で泣き声をあげてみる。
背負っていた人物は慌てて俺を地面に寝かせる。同時に俺が正面から見た人物はまだ六、七才くらいの男児だった。家族なら兄にあたるのかもしれない。
彼は様子を見るためか産着を開く。外気にさらされ少し肌寒く感じた俺は、前に衣服が何もない状態と判断し、これ幸いと放尿した。幼児目掛けて。
幼児はとっさにかわそうとしたが少しひっかかってしまった。うかつ。悪いことをしてしまった、申し訳ない。
幼児はため息を吐くと、小便を終えた俺を背負い直し、野草摘みを再開した。
今日の仕事を終えたのか子供達が家に帰る。家は俺が小学生のときに社会科見学で博物館に訪れたときに見た竪穴式住居まんまだった。ただ、博物館で見た代物より、一回りも二回りも大きい。
俺を背負っていた幼児はそのうちのひとつに入る。幼児が三十代くらいの女性、恐らく俺の母親だろう、に声をかけながら野草入りのざるを差し出す。彼女は野草をまな板の上にのせると石器でできた包丁で切り刻み、火をかけてある壺の中に投じた。ぐつぐつ煮えているので、もうすぐ出来上がるのではなかろうか。
母と兄は何やら会話を始めたが、言語が日本語と違う。いや、発音は所々日本っぽいんだけど、意味が分からない。勉強のし直しかと思い気が重くなった。