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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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捩じれ

 俺とセリは配下の兵たちに手すきの村人たちを集めさせ、これから行う作戦を説明する。

 遠投げができるほぼ全員が仕返しをしたくて参加を希望した。

 運び込まれ、集められた石を各自に配ったら、あっと言う間に底をついてしまったが、これで良い。相手だって馬鹿じゃないし、そう同じ手が何度も通用するとは思えなかった。

 敵を見ると、相変わらず陣を敷いてはいるが、一人一人の間隔が妙に広い。密集していると当たりやすいから、せめて命中率を下げようとしているのか。

 サイコキネシスがあるから無駄なんだけどね。

 最終的に兵と村人たち合わせて二百人強が参加することになった。

 俺とセリはあらかじめ相談して決めていたことを参加者に伝えると、その作戦を実行に移す。

 ず、俺とセリが先頭に立って兵と村人たちを連れ、村の外に出る。横並びに五十人ずつ列を作らせ、兵たちが前で村人たちは後ろに配置。

 遠投とおなげの最大射程まで反乱勢に近づいた所で兵と村人たちの前進を停止させ、俺とセリだけでさらに前進。弓矢の射程外で止まり、大声で彼らに呼びかけた。

 とりあえず、理性的な会話を期待して話しかけてみる。


「オシという人物はいないか!? 今回反乱を起こした人間の一人だ! いたら即刻そっこく引き渡すように! そうすれば見逃すから故郷に帰っても良い!」


 俺の言葉に彼らは互いに顔を見合わせ、戸惑いが広がる。


「オシぃ!? そんな奴知らねえぞ!」

「どんな奴だ!?」


 どんな人かと訊かれて俺は答えにきゅうする。

 ううん、どう伝えれば良いだろうか、悪いうわさしか聞いていないし、それを言うと侮辱ぶじょくされたと思って起こるかもしれない。

 そんな俺を見ていたセリが代わりに声を上げた。


「物を知らない奴に嘘を教えて信じ込ませたり、力尽くで人々を従わせる悪い奴だ!」


 ありのまま聞いたことをそのまま伝えるセリに俺は仰天ぎょうてんした。


「おい、セリ!」

「まあ、見てろって」


 ううん、上手くいくかなあ。

 彼らの間でしばらく話し合っていたが、返答があった。


「そんな奴は見たことも聞いたこともない!」

「あっれー?」


 あれ、じゃないよセリ。


「それよりも食料を寄こせ! あるんだろう!?」

「はっきり言って、この村でも何とか来年まで持たせるくらいの量しか取れなかったんだ!」

「いいや、嘘だ! この村では豊作ほうさくだと聞いたぞ!」


 嘘じゃない、本当のことを伝えたら思いがけない返事があった。

 何言ってんだこいつ。

 セリが俺の代わりに問答を始める。


「はあ!? 誰だ、そんな嘘をお前たちに吹き込んだ奴は!?」

「嘘じゃねえ! そういう話が俺たちの間で持ち切りだ!」

「だから! 最初に言い出した奴は誰なんだ!?」


 今度は彼らを代表して受け答えしてた男が黙り込んだ。

 連中の間でざわめきが起きる。彼らも混乱し始めたらしい。

 そもそも、俺の村が豊作だなんて嘘を広めたのはどのような人物なのか。オシの名前が頭の中に浮かぶ。

 いつまで経っても騒めきは治まらないので、俺は気まぐれに問いかけることにした。


「お前たちの噂は聞いている! ヤタニ村を襲って追い返されたと聞いているが、何故こっちに攻めてきた!?」

「噂でお前の村が豊作だと聞いてだ! それと、ヤタニ村はとっくに攻め落とした!」


 え。

 特大の爆弾が投げ込まれた。


「じゃ、じゃあ、ヤタニ村にいた人たちは!?」

「皆殺しだ! 散々抵抗しやがって……!」

「貴様ぁ!」


 自身でも驚くくらい、腹の底から声が出た。

 ヤタニの村人たちもそうだが、残してきた十人の兵の命も失われたのが心にきた。

 俺のせいだ。俺の立てた計画で死なせてしまった。


「だから駄目だって言ったじゃねえか」

「……そうだね」


 半眼はんがんで呆れるセリに同意した。

 目の前の奴らは見逃すとか許す以前の問題だった。


「とにかく、賭けてたにぎめし一個もーらいっ」


 セリに夕飯の主食を半分持って行かれる。

 彼はヤタニ村が陥落したことについては衝撃を受けていないように見える。肝がわっていると言えば良いか。

 とにかく、このやり場のない怒りを連中に叩きつけるとしよう。


「交渉は決裂けつれつだ! 今からお前たちを叩き潰す! 遠投げ用意!」


 俺が左手を上げるとそれを合図に、後ろにいた兵と村人たちが石を入れた麻布を振り回し始めた。

 それを見た敵集団が脅威きょういを理解して突撃を開始する。


不味まずい! 突撃! 奴らを殺せ!」


 敵の周囲には隠れる場所は無い。故に前進を選ばざるを得なかったのだろう。

 殺意さついあふれる連中に俺とセリは兵が並ぶ所まで後退する。


「放て!」


 俺の号令に一斉に投げられた二百あまりの石は、ゆるやかな放物線を描いて前を走っていた連中の頭に降り注いだ。


「次弾急げ!」


 命令しながらサイコキネシスによる誘導を行う。

 どうも、俺の力は視界に映るモノしかとらえられないようだ。奥を走っている連中には命中率ががくんと落ちている。

 それでも、たった一度の攻撃で百人前後が倒れたのは良い傾向だ。敵は目の前で崩れ落ちた仲間を見て動揺している。


「放て!」


 二度目に放たれた石も順調に敵集団の頭をかち割っていく。敵も狙われているのが頭だと理解したようで、腕をかかげて盾にしているが、果たして。

 手持ちの石はまだ余裕がある。だが、敵にかなり近づかれている。後二度しか石を投げられないだろう。

 どうすれば時間をかせげるか。

 パイロキネシスは人体発火は無理だ。せいぜい衣服を燃やす程度しか……。ああ、でもそれでいけるか?

 サイコキネシスと同時に使用したことはないが、試しにやってみるか。

 三度目から俺とセリも遠投げに加わって投げる。敵は腕を盾にしていたおかげで頭部への致命傷ちめいしょうは防いだが、当然腕は折れて使い物にならなくなった上、痛みで突撃を中止する者が続出した。


あちっ!?」

「熱ぃ!?」

「何だ、何だこれ!?」


 加えて、突然、視界に映っていた敵集団の服の一部が燃え上がり、敵が突撃を中断する。

 だが、燃えたのは最前列で後方は無傷だ。

 結果。


「おい、急に止まるな!」

「何やってんだ!」

「おい、押すな!」

「止まれ、止まってくれ!」


 全体が停止したわけではないので、前列にいた者は押し倒され踏み潰された。

 四度目の投擲とうてき。停止していないが前進がとどこおりかけた敵に石弾が降り注ぐ。


「畜生! 何もたもたしてんだ、手前てめえら! あと少しで届くんだ、さっさと行け!」


 敵集団の中から威勢のいい声が聞こえてくる。敵指揮官の姿は見えないが大体の位置は分かった。

 五度目に投げられ誘導された石は、それまで満遍まんべんなく落ちるようなことはなく、指揮官がいるらしい所一帯に落下した。


「うおおおおっ!?」


 先ほど命令していた男の悲鳴が聞こえる。

 命中したか?

 六度目の投擲は石の不足により中途半端で終わった。もう飛ばせる石は無い。

 敵の前進はゆっくとしたものに変化したが、止まらない。

 潮時しおどきだな。


「皆、村の入り口まで後退だ! 走れ!」


 あそこなら左右からの援護が期待できる。一応、用心のため槍を持って来ていたが、この場では無用で済みそうだ。


「よくもやりやがったな!」


 敵指揮官らしき声は途絶えていなかった。

 外したか。


「突撃だ、突撃!」


 首をひねり後ろを確認すると、突然逃げ出した俺たちを見て唖然あぜんとしたものの、敵指揮官の命令に我に返り、こちらを追って駆け出した。

 村の入り口に陣取っていた、モズたちにセリが報告する。


「モズ隊長! かなりり減らして来たぜ!」

「分かった! 皆、手筈てはず通りに!」


 俺たちが入り口を駆け抜けると、村人たちが用意しておいた柵を運んで道を塞ぎ、槍を手にした兵がその後ろに並ぶ。


ひるむな、かかれえ!」


 数が三分の一くらいになったが戦意せんい旺盛おうせいな敵集団が目の前に迫っていた。

 敵は槍が多かったが、棒を持ってる奴もいる。同じ武器を行き渡らせるほどの豊かさはなかったか。

 既にこちらの兵と村人たちは槍を構えて応戦の構えだ。

 左右の離れた場所から弓矢で攻撃する村人もいる。

 こうして、村の入り口での交戦が始まった。

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