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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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再会

 敵を押し返し夜が明けると、避難していた村人たちが徐々に戻ってきた。その中にナシや家族、それに長老もいて、再会した途端、ナシに跳びつかれた。


「カゼ、おかえり!」

「ナシ、ただいま。一時的な帰省だけどね」


 槍を置いて両腕で抱きしめる。彼女のぬくもりが伝わって安心感がいた。

 今のところは守れている。でも、事態は終わっていない。


「まだ奴らはすぐそこにいる。皆と安全な場所に避難していてくれないかな?」

「うん、ここにいたらカゼの邪魔になっちゃうから、大人しくしとく」


 どちらからともなくお互いに離れる。


「その顔、どうしたの?」

「ああ、向こうで手強てごわぞくがいてさ、その時に」


 ナシの手が俺の顔にび、傷跡きずあとでる。


「痛かったでしょ?」

「まあね。でも、皆を守るためならこれくらい平気さ」

「駄目だよ。もっと自分を大切にしなきゃ」


 彼女の顔がゆがみ、目尻めじりにじわりと涙がかぶ。


「約束する。もう無茶はしないって。……ああ、けど、仲間たちが危険にさらされたら、やっぱり無茶しちゃうかも」

「もう。……なるべくだよ?」

「ああ」


 俺は家族に向き直った。


「ただいま、皆。無事とは行かないまでも帰って来たよ」

「おう、おかえり、息子よ……」

「カゼぇ!」

「うわ!?」


 父に話しかけられる途中で母に抱き着かれた。


「心配したんだから! ……ああ、もう、こんな傷をつけて……」


 涙ぐむ母に申し訳ない気持ちになる。


「母さん、ごめんなさい。まあ、生きてるから安心してよ」

「安心できるわけないじゃないの!」


 また抱きしめられる。父を見て助けを求めたが首を横に振られた。

 母の背中をぽんぽんと叩いて落ち着くように言う。


「ナシにも言ったけど、これからは無茶しないようにするから」

「本当に?」

「うん」


 努力はするよ、努力は。

 この先も無茶をするだろうから約束はしたくないんだけど、しないと離してくれそうにないのでうそをつく。ようやく母を離してから父に訊く。


「父さん、弟たちは無事?」

「ああ。抱えて逃げたからな。……お前こそ無事で良かったよ」

「西の国へ行く途中で賊を退治してさ、大変だった」

「途中。そんなに遠いか」

「遠いねえ」


 父としみじみと語る。

 この時代、道と言っても獣道けものみち同然の整備されてない方が大半だから、けわしいの何の。


「カゼよ、よく戻って来た」

「長老、よくご無事で」

「何、見張りに就いていた者が異変を察知して、我らに知らせてくれたのがこうそうしたんじゃ。ナナサトから攻め込まれるとは思わんかったが、撃退してくれたので有難ありがたく思う」

「僕だけの力じゃありません。皆がいてくれたからです。残念ながら、家の半分近くが燃えてしまいましたが」

「命があるだけでもうけものじゃよ。やり直しはきく」

「そう言って頂けると助かります」


 長老は顎髭あごひげを撫でながら問いかける。


「それで、これからどうする?」

「僕らだけで奴らを撃退します。なんて、いさましいことを言いたいんですけど、人手が足りません。村の男衆を借りてもよろしいでしょうか?」

「おお、貸してやるとも。村の存亡そんぼうがかかっておるときに寝ているわけにはいかんからの」

「ありがとうございます」

「ところで、そちらの少年は?」


 俺の隣にいたセリを見て長老が問いかける。


「ああ、紹介します。西の国へ行く途中で友達になりました」

「ナナサト村のセリだ。よろしく」


 その発言で周囲の反応は様々だ。

 ナシと母は露骨ろこつ警戒けいかいするし、父は目を丸くしている。長老は興味深そうにセリを見た。

 対するセリはどこ吹く風で動じていない。

 豪胆ごうたんだな。


「ほほう、ナナサトの。……どうじゃ、カゼを見た感想は」

「強いんだが危なっかしい奴だな」

「そうか、そうか」


 俺への端的たんてきな表現に苦笑する。

 セリの言葉に何か思うことがあるのだろう、ナシと母がこちらをじっと見ている。


「今は皆がいるから、そんな無茶はしませんよ」


 弁解するが、二人とも信じていないようで俺を見ていた。


「カゼが無茶をしそうになったら止めてくれんか?」

「分かってるって」


 訂正ていせい、セリと長老にも信用されてない。

 モズたちがヨシマ村に来た。北の守りは現地住民でも十分だと判断されたようだ。


「それで、現在はどうなってるんだい?」

「夜明け頃に押し返しましたが、それ以降、こちらに攻めてきませんね」

「あれだけの威勢があったのに、静かなもんだ」

「奴ら、いつでもこちらに攻め入れるように陣形を整えてます。対してこちらは、村人たちが燃え尽きた家屋の骨組みを使って柵をこしらえてます。その上で、村中から遠投とおなげ用の石と弓矢、槍などの武器をかき集めている最中です」


 モズの問いかけに俺とセリ、ブヤが答える。

 時刻は太陽が姿をあらわしてから八、九時頃か。

 柵の素材となる丸太は森から切り出してきているものの、数が足りないので、家屋に使われていた骨組みを解体して、その中から丈夫なものを選んで使っている。

 残念ながら遠投げ用の石については、ナナサト村へ続く途中の川が敵に占領せんりょうされてしまっているので、わざわざ上流や下流から石を運び込んでいた。

 遠投げの最大の利点は石を調達しやすいのもあるが、この村では男たち全員と、女でも使える者がそこそこいるということだろうか。

 何故に女が、と思わないでほしい。最初は俺も女は使う必要はないのではと思っていたのであるが、晩御飯のおかずに彼女たちがってきた鳥の丸焼きなどが出るようになったので、何も言えなくなってしまったのだ。しかも、毎日ではないが人間の気配を察知すると、すぐに飛び立って逃げてしまう鳥を獲るようになったことが凄いのである。

 そんなこんなでヨシマ村の人々は腰に麻布と石を詰めた袋を日常的に下げるようになった。

 その結果どうなったのかと言うと。


「この野郎!」

「これでも喰らえ!」

「よくもうちを燃やしやがったな!」


 などと、日が昇ると共に戻って来た村人たちが、恨みつらみであちこちから散発的に石を投げ込んでいた。

 敵は移動を優先したのか武装しているのは槍くらいで、ろくな防具を着ていない上に盾を持っていなかったので、全部とはいかないけど、ときたまサイコキネシスで誘導してあげてるから当たる当たる。

 敵はその嫌がらせに辟易へきえきし、ここまでなら石が届かないだろうという所まで陣を後退させた。

 まあ、実際村人たちの遠投げは届かなくなり攻撃は止んだ。

 そこで俺の出番ですよ。

 村で一番遠投げの上手い俺がさらに遠くへ石を投げて奴らの頭部を狙う。狙われた敵は嫌がるように陣をさらに下げた。

 開いた距離は二百m以上。その間に石で倒された敵があちこちに点々と転がっていた。


「これで少しは時間稼じかんかせぎができたかな」

「本当はこっちから潰しに行きたいんだけどな」


 俺とセリはそんな会話をしながらモズたちと向かい合い、俺たちを見て微笑ほほえむモズたちを不思議に思いながら、今後の方針を話し合う。


「ナナサト村の人たちは目にしていないんだね?」

「ああ、全く。今頃、どこで何してるんだか……」


 モズの確認にセリがぼやく。


「できればセリの地元の人たちと敵対したくはありませんね」

「とにかく今は防御陣地の構築を急がないと」


 タナソとコウは地面に描かれたヨシマ村周辺の簡略かんりゃく地図を見ながら検討している。


「しかし、何故奴らは攻めてん? 数的には向こうが有利だろうに」

「偵察隊からの報告によると、ナナサトの向こうから続々とあいつらが集まって来てるとか言ってたな。……まとめて襲い掛かるつもりなんじゃねえの?」


 ブヤの疑問にセリが補足して今後の予想を言った。


「今のうちに数を減らしておいた方が良いと言うことか。……分かった。カゼ君とセリ君、それに手すきで遠投げのできる者たちを集めてできるだけ敵陣に投げ込もう。しびれを切らして彼らが突撃してきたら防御陣地で迎撃。そういうことで良いかな?」


 そこで、ふと思いついたことを提案してみることにした。


「それなら、向こうにオシがいるかどうか尋ねてもいいですか? 今なら見逃してあげるから引き渡せ、なんてできませんかね?」

「良い案だけど、上手くいくかなあ?」

「駄目もとですよ。殺し合いにならなければ良いだけの話です」


 正直言って奴らを蹴散らして殺したいのだが、元凶のオシを先にどうにかすべきだ。

 モズが首をひねる。


「うっし、なら賭けようぜ。夕飯ゆうめしに出るにぎり飯一個でどうだ? 俺、決裂する方な」

「セリ、君ね……」

「良いですよ、受けて立ちます」

「良いのか?」

「たまには良いと思います」


 セリの賭けに乗り気な俺にブヤが確認を取るが、なるようになれ、だ。


「……他に異論は無いならやってみよう。カゼ君、セリ君、任せるよ」

「はっ」

「あいよ」


 モズの言葉に俺とセリは了承した。

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