証言
視線をモズたちに向けると、足を射抜かれて捕らえられた指揮官らしき男を尋問していたので、そちらへ歩み寄る。
どうもブヤが中心となって指揮官を問い詰めているようだ。
「お前がオシか?」
「違う、俺じゃない!」
「嘘を言うとためにならんぞ?」
「本当だ! それにここにあいつはいない!」
「……ではどこにいる?」
「ヨシマを攻めることになっている、もう一つの集団だ!」
向こうか。今回は外れだったな。とりあえず対象は一つに絞られた。そこは良しとしよう。
そこで俺は何か違和感を感じたが、それが何なのかを探る前に、男の次の証言で雲散霧消した。
「あいつを甘く見るなよ。お前らなんか軽くぶっ飛ばしてやるんだからな!」
「はあ、そうかい」
「たかが反乱勢に何ができる?」
セリは相手にせず、ブヤが威圧した。
皆、男の言うことを信じていない。何倍もの数の差をひっくり返したので自信があるのだろう。
「お前らはあいつの不思議な力を見ていないからそう言えるんだ!」
俺は男の言葉にぴんと来た。
まさか、転生者か? いや、そんなはずはない。神様だってこの時代を選ぶ人なんか滅多にいないと言っていたはず。でも、既に遭っているんだよなあ。
「不思議な力、ねえ」
男の話を疑わしそうに言うコウ。逆にブヤは興味深そうに尋ねる。
「それで、お前が見たオシの力というのは、どういうものなんだ?」
「俺は見たんだけど、良く分かんねえ。あいつにちょっかいかけた奴が手も動かさずに吹っ飛ばされて死んだんだ」
「……なるほど?」
「それ以来、あいつに表立って逆らう奴はいなくなった。そんなあいつがミナト様にどうやって取り入ったのか分からない。俺が話せるのはこれくらいだ」
「そうか。……で、こいつと捕らえた者たちをどうしますか?」
ブヤは体ごとモズに向けて訊く。
「とりあえず、一か所にまとめて置いて、村で手の空いている者に見張らせておこうか」
「分かりました。……カゼ」
「はい」
「この辺りはお前が詳しいだろう。誰か適当な者を探して来てくれないか」
「分かりました」
ブヤに頼まれた俺は、兵たちと輪になって歓談している地元の村人たちへ歩いて行く。
「おお、カゼ、どうしたんだ」
「すみませんが、どなたかあそこにいる捕まえた者たちをどこか適当な場所に集めて、見張りを頼みたいんですけど、良いですか?」
男たちは武装解除させられて座り込んでいる一揆勢を見て頷いた。
「ああ、別に構わない。見てるだけで良いんだろ?」
「いえ、逃げないように見張ってて下さい」
「分かってる分かってる。そう厳しいこと言いなさんな」
んー、自身の強さから来る自信なんだろうけど、過信しすぎるのも問題あるな。
「言っておきますけど、僕たちこれから北から攻めてきている反乱勢と戦わなくてはならないんです。捕虜は五十人以上いますけど、見張れます?」
「あー、向こうに行っちまうのか。……分かった。見張りを多めにしとこう」
俺たちの事情を理解したのか、村人たちは気を引き締めたようだ。
「お願いしますね」
「おう」
そう言って彼らと別れた俺はモズたちに村人たちの了解を得たことを伝えると、すぐに移動するよう指示を受けた。
「ヨシマ村の中を通してもらい、北にいる集団を攻めようか」
特に皆からの異論はなかったため、移動を開始した。
途中、幾つか住宅地の側を通過したが、どれも特に荒らされたような跡はなく、無事だったことで俺は安心した。
当初は見慣れない俺たちを見て住宅の中に隠れる住民もいたが、同行してくれる村人が事情を説明すると、表に出てきてくれた。
ヨシマ村に近づく。計画通り環濠が掘られ始めていて、近くの森から切り出されて来たのだろう、丸太が柵として一部建てられていた。
村の中に入ると住民が一斉に注目してくる。
「おお? カゼじゃないか、あれ?」
「本当だ、戻って来たのか」
無事を知らせるため、俺は笑顔で空いている手を振る。
「タキ、タキはいる?」
「奥さんすまねえ、タキはまだ西の国へ行ってる最中で、この中にはいないんだ」
「姉です!」
「……失礼しました」
などと、隊列が揃っていない行進しながら村人たちと短いやり取りをしてヨシマ村を通過した。
ヨシマ村北側の村に加勢するため歩きながら、同行してくれている村人に声をかけた。
「おじさん、この先の戦ってどうなってるの? 勝ってる、負けてる?」
「一進一退ってところだなあ。向こうは数に物を言わせて押してきて、こっちは一人一人が強いから押し返しての繰り返しだ」
「そうなんだ。ありがとう」
おかしい。
オシって奴は公衆の面前でちょっかいをかけた奴に対して力を使った。
どのような意味で使った?
単純に舐められないようにするためか。圧倒的な差を見せつけて立場が上だと周囲に知らしめるため。
それくらいしか思いつかない。
それにしては、自ら頂点に立てばいいものを、ミナトに取り入って部隊の指揮官におさまる行為。
分からない。
ついでに言えば、その力を積極的に使えばヨシマ村をあっと言う間に叩き潰してしまいそうなものなんだが、それをしようとしない。
ひょっとすると、力の行使に何らかの制限がある?
その仮説が本当なら何か付け入る隙があるのかもしれない。
現場に到着する寸前までそのことを考え続けていた。




