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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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交渉

 翌日、俺たちは大勢の人に見送られながらヤブイワ村をった。

 研ぎに出した剣は結局どれもいまいちな出来だったが、刃毀はこぼれが残るものの目立たなくなっていた。

 どうも新品同様に仕上げるよりも、全体的にマシにしようとしたらしい。

 全く手を付けられなかった者が新品を持つ者をねたんだりして問題を起こされるよりは良いか?

 一路ヤマカミ村を目指して進んでいたが、こちらへ向けて移動する集団を偵察隊が発見した。

 それによると、武装がまちまちで反乱勢らしいとのこと。


「それと、様子が変です」

「というと?」

「進撃してくる、というよりは逃げているといった感じです」


 偵察隊員の報告に俺たちは首を傾げる。


「何からでしょう?」

「ヤマカミ村に強い奴がいたとか?」

「いえ、私の知る限り、反乱勢を押し返すほどの人物はいなかったと思います」


 俺とセリの疑問に、ヤマカミ村出身のコウが否定した。


「では、一体……」

「とにかく、彼らと接触してみようか。場合によっては話を聞けるかもしれない」


 モズはそう言うと、偵察隊員に反乱勢と話す機会をもうけられないか接触してくるよう指示し、行軍を再開した。

 しばらくして、代わりの偵察隊員が俺たちの下にやって来て、是非話し合いがしたいという返事があったので、俺たちは行軍を続ける。

 くだんの勢力と出会ったのはそれから間もなくのことだった。

 彼らは飛び道具を使うことはなかったし、雄叫おたけびを上げて突撃してくることもなかった。

 お互い武器を構えたまま、大声で話せる距離まで近づくと双方そうほう停止した。

 彼らの方から一人進み出てきた。どうやら代表者らしい。

 こちらは当然、モズが前に出た。

 代表者が問いかけてきた。


「ミマツの国の鎮圧部隊とお見受けする! そちらの返答次第によっては降参したい! どうか!?」


 俺たちは顔を見合わせた。

 モズが話しかける。


「それは良いことだ! 同じ国の生まれた者同士、できれば殺し合いなどしたくない!」


 彼らがモズの話を聞いて、おお……と感嘆し、安堵あんどする。

 代表者は緊張した面持おももちで言う。


「その気持ちは我らも同じ! だが、その前に質問に答えて頂きたいことがある!」

「何か!?」

「ヤブイワ村を攻めた反乱勢を火攻めにしたのは貴方たちか!?」

「彼らと戦ったのは事実だが、火を放ったのは我々ではない! そこは信じて欲しい!」


 嘘です。俺が苦しまぎれに火を放ちました。良心が痛む。

 というか、何故そのことを彼らは知っている? ということは……。


「嘘だ! その男は嘘をついている! 俺は見たんだ、皆が炎に巻かれて息絶えていくのを!」


 彼らの中から一人の男が進み出てきた。体のあちこちに包帯が巻かれてある。恐らくあの火災の生存者だろう。


「黙っていろ! 質問しているのは俺だ! ……誰かそいつを取り押さえろ」


 彼らの中から三人が進み出てきて、無言で包帯を巻いた男の手足を掴むと、暴れる男をなだめながら集団の中へ消えた。


「見ての通り、今の者が事態を知らせてくれた! その上で訊きたい! 我らの首領しゅりょうを、ミナト様を知らないか!?」


 ミナトという人物はヤマカミ方面に逃げていない、ということか。


「いや、こちらが知りたいくらいだ! 捕らえた者の証言によれば、森で火災が起きた時、その中にいたはずと聞いている! 今はその焼け跡になった森を、ヤブイワ村の兵たちが捜索中のはずだ!」


 モズの言葉に彼らの反応は様々だ。

 うつむいたり、肩を落としたり、座り込む者が多数だ。

 彼は大層人望があるようだ。

 けれども、代表者は気丈にも立っている。


「ミナト様の生存は絶望的か……。最早、我らの命運めいうんは絶たれた! 貴方あなたたちに降参を申し出る!」

「……分かった、受け入れよう! 君たちは即刻そっこく解散、それぞれの故郷に帰るように!」


 モズの言葉に彼らが戸惑う。


「……捕らえないのか!?」

「現在、国内では各地で反乱が起きている! 鎮圧するのが我らに課せられた使命だが、降参する相手を処罰している時間が無い! できれば、大人しく故郷に帰ってもらえると助かる! これ以上、お互いに死体を積み重ねたくない!」


 モズのうったえに感じ入ったのか、彼らの中からこちらを拝みだす者たちがいる。

 モズの主張に同感する。食料の問題は解決していないが、負担は軽い方が良い。


「……すまない、恩に着る! 皆、故郷に帰るぞ!」


 代表者の号令に元反乱勢はぞろぞろと歩き出した。


「すまない、代表者の方、ちょっといいだろうか!」


 去りかけた代表者がこちらに向いてあゆみ寄って来る。


「……何だ?」

「貴方たちが呼ぶミナト様のことなんだが、良ければどのような姿をしているのか教えて頂けないだろうか? 生死が確認されたら知らせよう」

「それは助かる。しかし、それなら私が直接確認しに行った方が良いのではないか?」


 代表者が提案してきたが、モズは首を横に振った。


「……いや、それはした方が良い。僕らはこの地に留まっていられない。貴方を置いていけば、反乱勢に恨みを持つ村人たちがどのような行動に出るか分からない」

「そうか、それなら仕方がない」


 そうして、代表者からミナトの背丈や恰好かっこう、髪型などを訊いて別れた。

 去って行く彼らを眺めてセリが言う。


「いいのかよ、ミナトっていう奴のこと言って。生きていると分かったら取り返しに来ないか?」

「それは無いと思う。ミナトと直接会ったわけじゃないけど、餓える人々を思って立ち上がったのだろうから、これ以上の死人は出したくないはず。むしろ止めると思うよ。あと、助命嘆願はされると思うけど、反乱を起こした張本人だからね。首謀者はどの道死刑だよ。……生きていたら最後の別れくらいはさせてあげようかと思ってね」

「……モズ隊長がそう言うなら」


 モズはしみじみと語り、セリは引き下がった。


「それで、これからどうします?」

「念のため、今の反乱勢が本当に故郷に帰るのか、見張りを出す。それと伝令をヤマカミ村に走らせて、彼らがもう来ないことを知らせて、僕たちはヤブイワに引き返してからヨシマへ向かおうかな」


 タナソに訊かれたモズが答える。

 おお、いよいよ俺の故郷か。皆無事だと良いな。

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