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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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火計

「来ました!」


 森の外に出て三つの小隊を横に並んだ状態で迎え撃つ準備を済ませたところに、森の中を見張っていた偵察隊が全員こちらに駆けてきて報告した。


遠投とおなげ準備!」


 ブヤの命令に兵たちが動く。

 兵たちは持っていた石と、そこらへんに落ちていた手ごろな石をかき集めて、足元に転がしていた。

 そのうちの一つを手に取り、麻布に包んで片手にぶらんと下げる。

 俺たちのいる陣地から森の入り口までおおよそ百五十m。習いたての初心者ならともかく、俺なら十分()()射程内だ。

 やがて、森の中から姿が見えないが反乱勢と思わしき怒号が聞こえてきた。

 その声に驚いたのか、無数の鳥が空へと羽ばたきどこかへと飛び去っていった。


「奴ら、どうしたんでしょう?」

「……さっきまで俺たちが片付けた連中を見つけたんじゃないか?」


 俺の疑問にブヤがあっさりと答えを言う。


「ああ、それは……」

「これで、話し合いの余地は無くなったというわけだ」


 むしろ、あそこまで殺されておいて、話し合いができるほどの冷静さを持っているほうが、普通、人間としてどうかしていると考えた方が良いか?

 それはそれで、指揮官としては失格なんだけど。

 ひとしきり森から怒号が鳴り響くと、少しの間静かになったのち、地面がかすかにれ始めた。その揺れがだんだん大きくなってくる。大勢が歩く足音も聞こえてきた。

 これだけの音を響かせるって、反乱勢は一体何人いるんだ?

 足音が近づくにつれ、森から逃げ出していく鳥が増えていく。

 少しして一揆勢が姿を現した。森から虫がわらわらと湧き出るように、何十、何百と出現した。


「うお」

「うわ」

「へえ」


 兵たちがうめく。


「ええと、数にして二百かそれ以上か……参ったねこれは」

「モズ隊長、冷静ですね」

「焦ってるよ、これでも」


 そう言っている間に、相手はどんどん森から出てこちらへゆっくりと近づいてくる。

 揺れが酷い。

 後から後から出てくる反乱勢に、俺はこれ以上出てこられたら負けると判断し、切り札を使うことにした。

 反乱勢の背後の森の木々に念じ、間もなく視界に映る森からごうと火の手が上がった。

 俺のもう一つの超能力、パイロキネシスである。

 普段は火をおこしたりするときに重宝させてもらっているが、他人にばれないよう控えてきた。けど、今回は出し惜しみをしてたら死ぬ。だから遠慮なく使わせてもらおう。何、これだけの集団になれば誰がやったのか分からないだろう。

 何の前触れもなく森が()()()()()燃え上がったことで反乱勢の後方の足が止まり、驚愕の声が上がる。その声も間もなく悲鳴へと変化し、大混乱におちいった。

 前方にいた反乱勢も後方の騒ぎに気が付いて前進が止まる。


「……遠投げ始め!」


 森の炎上と、相手の混乱に呆然としていたブヤが我に返り、命令を下す。

 石を振り回し始め、頃合いを見計らって思い思いに投げ始める。

 相手の数が数なので、出し惜しみは無しでそれぞれの石をサイコキネシスで誘導する。

 それぞれの石がかたよりもなく、反乱勢の先頭に直撃した。

 石が彼らに届いたのが全体の四割といったところか。後は手前にむなしく落下した。


「おおっ?」

「当たった、当たったぞ!」


 初投げで目標に当てたことに驚き喜ぶ兵たち。そんな者たちをブヤは叱咤する。


「いいから次! 喜ぶのは後にしろ!」

『はっ!』


 慌てて次弾を投げる兵たちを見て、俺も投げる。

 反乱勢は見慣れない攻撃に困惑していたようだが、それが必殺を伴うものと知ると、こちらへ向けて駆け出した。とはいうものの、森の火災に気を取られているのが大半で、突撃してくる者は少ない。

 故に、前進してきた者たちは早々に石弾せきだんに沈み、森の外で混乱している集団にも石が降り注いだ。

 見る見るうちに数をすり減らしていく反乱勢は、最早もはや組織としての機能を失っていた。


「全員、槍に持ち替え! 突撃!」


 石弾を投げつくした俺たちは、ブヤの号令に槍を構え駆け出す。

 混乱から立ち直れていない反乱勢に槍を突き込む。倒れ伏す敵。煙に巻かれて崩れ落ちる敵。森の近くで吹き荒れる熱風から逃げ惑う反乱勢に踏み潰される仲間と様々だ。

 そのうち、十数人が武器を捨て降参の意思を示したため、生け捕りとなった。


「我々の勝利だ!」

『おおー!!』


 勝鬨かちどきを上げる俺たち。

 戦う前は不利な状況だったのに、一転して大勝利である。味方にケガ人こそ出たものの死者はいない。

 完全な反則行為だけど、皆が生き残るには仕方のない行動だったと俺は考える。


「いやあ、それにしてもあの火事は運が良かった」

「あれがなきゃ、俺たち今頃詰んでたね」

「そうそう」

「ところで、あの火事、何かいきなり燃え出したけど、誰がやったんだ?」

「どうでも良いじゃないか、そんなこと」


 兵たちも首を傾げてたけど、特に気にしてはいないようだ。

 それよりも。

 俺は燃え盛る森を見て頭を抱えた。

 どうやって消せばいいんだ、これ?


「モズ隊長、つかぬ事をお聞きしますが」

「何だい、カゼ君」

「あの火事、大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫も何も、自然に消えるのを待つほかないだろうね」

「まあ、田んぼの稲は収穫を終えていますし、燃えるとしたら近くに積んである稲わらくらいでしょうか」

「誰が火を付けたのか分からないけど、勝てたから良しとしとこう」


 モズが火をき上げる森を見ながら、どこか投げやりな口調で言った。

 人間の手で消せるかどうかの範疇はんちゅうを超えてるし、しょうがないか。

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