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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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森の中

 後退してきた兵たちの突然の台詞に数秒、静寂せいじゃくが訪れる。


「モズ隊長!」

「……総員、戦闘準備!」


 俺の言葉に我に返ったモズが号令をかける。

 その言葉に小隊長たちがそれぞれの部下の下へ走る。森の中の道を歩いていたので、先頭は偵察隊で次が俺の小隊と細長く続く。 


「奴らの位置と様子を見てくる! お前ら来い!」


 セリはそう言うと、偵察隊を率いて森の奥へ消えて行った。


「後は我々に任せて、ヤブイワ村の方々は少し休んでいて下さい」


 モズは後退してきた彼らにそう言って前を向く。

 俺たちは槍を構え、左右を警戒しながら前進する。

 しばらくして、偵察隊の一人が戻って来た。


「報告! 反乱勢はこの先の森の中を道伝みちづたいに進撃中! ただし、反撃を警戒してかゆっくり移動しているとのことです! なお、向こうに我々のような偵察隊はいない模様!」

「ご苦労様。引き続き見張りを頼むよ。何か変化があれば知らせるように」

「はっ」


 モズの指示に偵察隊員は再び森の奥へ走っていく。


「せっかく遠投げの準備をしたのに、無駄になっちゃった」

「それを使うのはまたの機会にしようか。とりあえず、どこで迎え撃つか決めよう」


 俺は残念そうにため息をつくと、モズは気を取り直すように言った。

 準備に時間をかけすぎたのが裏目に出たか。ヤブイワ村の兵たちがそこまで追い詰められているとは思っていなかったのだ。

 人の手の入っていない、天然の森の中を俺たちは進む。

 やがて、こちらに後退してくる偵察隊の姿が木々の隙間すきまから見え始めた。

 背中から近づく気配を感じ取ったのだろう、皆一様にちらりと視線をこし、前へと視線を戻す。

 セリを見つけたモズは、彼に背中から声をかける。


「セリ、状況は?」

「あんま良くねえ。奴らの後ろがどうなっているのか分からねえが、見えてる奴だけで俺たちと同じか、それ以上の数がいやがる」

「分かった。……ここで反乱勢を待ち伏せしようか。カゼ君の隊を道に、タナソ君の隊を右側に、コウ君の隊を左側に配置して三方から挟み込もう」

「はっ」


 俺のそばでモズの指示を聞いた部下が、他の隊に知らせに走る。


「セリ君たちは新手が来ないか見張っているように」

「あいよ」


 セリは配下に指示すると、隊を二つに分け、左右の森の中へ消えて行った。

 それから五分ほど経った頃、道の先から多数の足音が響いてきて、反乱勢が姿をあらわした。

 俺たちを見て立ち止まる彼らにモズが声をかける。


「引き返すんだ、この先に君たちが望む食料はもう無い!」

「いいや、そこを通してもらう! 次の秋の収穫までの食料を手に入れなければ、えて死ぬしかないんだ!」


 反乱勢の先頭にいた男が刃先に血の付いた槍を持って叫ぶ。


「この先には避難してきた村人でいっぱいだ! 彼らを養う食料もままならない! 進めば共倒れになるぞ!」

「俺たちに死ねということか!? 構うものか、やれ!」

『おおっ!!』


 男の命令を受けた反乱勢が駆け足でこっちへ来る。


「仕方ない、迎撃!」

『おう!』


 俺の命令に答える兵たち。その場から動かず三人で横並びに槍を構えて相手を待つ。

 あと少しで刃を交えるといった所で、右側の茂みから一斉に槍と共にタナソ隊が跳び出てきた。


「ぎゃっ!?」

「ぐぅっ!?」


 たった一撃。それだけで相手は半壊し、たちどころに大混乱におちいる反乱勢。一拍遅れて俺たちが前進し攻撃を加える。


「やばい、退け……!」

「そうはさせねえよ」


 その言葉と共に今度は左側の茂みからコウ隊が姿を現し、槍を突き出す。

 完全な不意打ちにより反乱勢の前衛は逃げる間もなく殲滅せんめつされた。

 そこに、偵察隊が奥から駆けてきた。


「報告! 次も同じくらいの数がもうすぐここにやって来ます!」

「分かった!」


 モズが答え、俺が皆に指示を出す。


「皆、今やったことを繰り返すぞ! 急いでここにある死体を森の中に隠して、持ち場につけ!」

『はっ!』


 息絶えた、もしくはかろうじて息のある一揆勢を抱えて森の中へ運び込む。続いて、道に落ちている武器も拾って隠す。

 こうして、表面上は何の変哲もない道に戻った。

 そこへ、次の集団が姿を現すと、先頭にいる男が訊いてくる。


「……お前ら、どこのもんだ? ヤブイワ村の者じゃないな」

「その通り、僕たちは国から派遣された兵だよ」

「そうかい。……俺たちの前に行った奴らはどうした?」

「この先に食料はないから引き返すようにと言ったんだけどね。聞き入れてもらえないから倒させてもらったよ」


 モズの返答に男とその周囲にいた反乱勢の雰囲気が変わる。向こうが押しているという余裕の表情から憤怒ふんぬのそれへと。


「野郎。お前ら、かかれえ!」


 彼らが突撃しようと駆け出した瞬間、またもや側面からの奇襲によってあえなく倒れることになった。

 これを繰り返す。


「こ、これで、何人、倒したかな?」


 一見、単純作業に見えるが、人一人を運ぶのも体力がいる。それもごく短時間で。

 少し息切れしながら傍にいた兵に訊く。


「よ、四百はったと思います。ですが、死体を隠す場所がもうありません」

「それに、鼻が馬鹿になっていると思うのですが、血の臭いが辺りをただよってます」


 兵たちの報告を訊いてさとる。

 ここも限界か。


「モズ隊長、待ち伏せ場所を変えましょう。そこで……」


 そこに偵察隊員が駆け込んできた。


「報告! 今までとは比べものにならないくらいの人数がこちらにやって来ます!」


 恐らく、先遣せんけん隊からの報告がいつになっても届かないのを怪しまれたか。


「モズ隊長、どうします? もう一度だけ待ち伏せをしますか? それとも……」


 今度ここで待ち伏せが成功しても、後から来る奴らの波に飲み込まれてしまうだろう。


「……後退だ。森の外で迎え撃とう」


 モズはわずかに考え込み、すぐに決断した。


「……分かりました。全員集合! これより後退する! ……偵察隊も森の外へ後退するように伝えて」

「はっ」


 俺たちは次の場所で迎撃の準備をするため、駆け足で森の外に出た。

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