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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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渡河

 草木も眠る丑三うしみどき。……よりは大分早いけど、皆が寝静まった頃、俺たちは動き出した。

 兵を十人残して、皆は反乱勢が攻めてきた方と反対側の門から出て、一路いちろ北へ向かう。


「静かに歩け、音を立てるなよ」


 隊長から小隊長たちに、小隊長から部下へと小声でささやいて伝えられ、そろりそろりと村から離れてゆく。

 今回の行動については、村長から村人たちへ事前に知らせて隠蔽いんぺい徹底てっていさせたため、見送る者はいない。

 前方の暗闇から人影が静かに小走りで近づいてきた。


「偵察隊より報告。これより三百歩先まで人影見当たらず。ゆっくりとなら前進しても問題ないそうです」

「分かった。……小隊、これからゆっくりと歩くぞ。引き続き足音をなるべく立てないように」

『分かりました』


 俺は報告をもとに小隊が歩く速度を少し早めさせる。

 俺のとなりにいるモズが小声で偵察隊員に指示を出す。久方ひさかたぶりにたっぷりと睡眠すいみんをとったためか足取りはしっかりとしている。


「君は後方にいる各小隊にも知らせてから、持ち場に戻るように」

「はっ」


 彼は短く返事すると後方へと駆けて行き、その姿を闇夜やみよけ込ませた。

 ゆっくりと歩き始めてからしばらくして、何度目か分からない、偵察隊が寄せてきた報告に変化がおとずれた。


「前方と左右の偵察隊より、ここからしばらく先まで人影無し。音を立てて歩いても問題ありません」

「皆、聞こえてるか、これよりいつも通りの歩き方だ。……それと、見失わないように、自分の左手を前の人の左肩にのせるんだ」

『はっ』


 俺の指示に多少鎧のこすれる音がひびく。


「…………のせたか? では、小隊前進」


 かちゃかちゃと鎧と武器の擦れる音と忍ばなくなった足音が辺りに溶けてゆく。

 本当に野盗の耳に届いてやしないかと思う。

 ええい、男は度胸どきょう

 もう踏み出したんだから後戻りはできない。前に進むのみ。

 この頃になると、普通に声を上げていた。


「偵察隊より、この先に川があります。既に対岸までなわを張ってあるので、それをつたっていけば容易よういに渡れると思います」

「分かった、ご苦労様くろうさま。川での補助ほじょをよろしく」

「はっ」


 モズにねぎらわれた隊員は闇に消えて行った。

 やがて部隊が川に到着すると、偵察隊によって縄のある場所に案内された。


「流れはそんなに早くありませんが、水量が多めなので川底に足が届かない場所が幾つもあります。気を付けて下さい」

「それはしょうがない。耐えるしかないね」


 偵察員の観測結果にモズは肩をすくめた。


「対岸の様子は?」


 俺の問いかけにすぐ返事がきた。


「今のところ人影は見当たらないとのことです」

「分かった。皆、慎重に。あせらず。けれど、急いで行こう」

『はっ』


 兵たちが一人ずつ川に入り、縄を掴んで進んでいく。

 モズが俺に尋ねてきた。


「今の、良い言葉だね。誰から教わったんだい?」

「何がですか?」

「慎重に、焦らずっていうの」


 言われて気付き、記憶をさらう。

 ……そういえば、誰からなんだろう。この時代の言葉ではないことは確実だから、前世の現代日本でかな?


「……誰から教えてもらったのか覚えていないんです。本当ですよ?」

「そうか」


 モズはちょっと残念そうだ。

 順番待ちをしていた俺が先に川に降り、続けてモズが入る。


「うわっ、冷たい」

「確かに。上がったら焚き火に当たりたいところだね。……って、準備が良いなあ」


 モズの台詞せりふに対岸を見ると、偵察隊が所々に焚き火をおこしていたので、俺は感動する。

 両岸はちょっとした斜面となっているため、遠くからは焚き火の明かりが見えることはないだろう。


「偵察隊には感謝しかありませんね」


 そう言って、俺は皆と一緒に一列になって川を渡る。


「モズ隊長、気を付けて下さい、ここ、意外と深いです。足が届きません」


 前の兵から注意されたように、俺も後ろのモズへ注意をうながす。


「うん、どれどれ。……まあ深いことは深いけど、足が届くよ?」

「ええ? くそう、背か。背丈の問題かあ」


 川の流れに逆らいつつ、腕の力だけで縄を掴み移動を続ける。


「ははは、今は我慢だ。先を急ごう」

「分かりましたよっと」


 やがて、川を渡り終えると皆はそれぞれ適当な焚き火で濡れた体を乾かし始める。

 小隊長以上は一か所に固まって今後の方針を語る。そこへ偵察隊が報告してきた。


「ヨシマ村、ヤブイワ村に出していた伝令が戻ってきました。それによりますと、ヨシマは沼を盾にして有利に戦を続けており、頑強がんきょうに抵抗しているとのこと。一方ヤブイワは近くのヤマカミ村と共同で対処していますが、苦戦しているとのことです」

「そうなのか。ありがとう」


 報告を訊き終えたモズは俺たちに向き直り、問いかける。


「僕としては当初の予定通り、ヨシマ村とヤブイワ村の間を北上して、反乱勢を叩きたいと考えているけど、皆はどう思う?」


その言葉にタナソとコウが顔を見合わせ、タナソが発言する。


「隊長、そのことなのですが、できればヤブイワ村、ヤマカミ村を先に助けてもらえないでしょうか」

「理由は?」

「情報が足りません。我々には反乱勢力がこれから行く先で、どの付近にどの程度の数がいるのかすら分かりません」

「そうだね」

「その上で、既におおよその位置と数が判明している勢力を叩く方が効率的かと」


 その意見にモズは考え込み、コウがたたみかけるように言う。


「このまま北上して反乱勢と遭遇そうぐうするかどうかは、正直分かりません。ならば、ヤタニ村のように助けて加勢し、撃退しましょう」

「うん、もっともな話だ。……というわけで、カゼ君。タナソ君たちの意見を採用したいんだけど、良い?」


 え、そこで何で俺に振る?


「え、良いんじゃないですか? 僕が考えたのよりも具体的だし分かりやすいから。……って何呆けた顔してるんですか」

「……てっきり、君は『自分の考えた作戦じゃなきゃ嫌だ』って言うのかと」

「そこまで子供じゃないし!」

「いや、子供じゃないか」


 セリの突っ込みに皆が笑う。笑うとは言ってもあたたかなものだった。


「じゃあ、服が乾いたらヤブイワへ向かおう。他の皆にもこのことは出発前に伝えること」

『はっ』


 火の始末をした俺たちはヤブイワへと向かう。

 途中、何の問題もなく部隊はヤブイワに到着した。

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