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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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束の間の休息

 意外にも反乱勢は早くに仕掛けてきた。

 門が修復されないうちに再び侵入したいのか、それとも、俺たちの存在を疑っているのかどちらか、あるいは両方か。

 襲撃されたとの知らせを受けた俺は、部下たちに休んでいるように言うと、一人休憩を切り上げて門へと向かう。

 様子を見に行ったが、迎撃に当たったタナソとコウの二小隊は無理なく相手を撃退したようだ。野盗どもがうの体で逃げていくのが分かる。

 指揮をっていたブヤを見かけたので声をかけてみる。


「ブヤ副隊長、こちらの被害はどうですか?」

「カゼか。……かすり傷程度のものだ。それよりも休んでいるよう言われていたはずだが?」

「すいません、ちょっと心配になってしまいました」

「……まあ良い」


 ブヤはこちらをちらりと見ただけで、視線を小隊に向ける。


「もう少し俺たちを信頼しても良いんだぞ。寄せ集めとは言え、カダで実戦を経験して、明らかに皆戦い慣れてきた。お前が心配するほどやわじゃないつもりだ」

「はい」

「それに、毎晩お前に稽古をつけられているせいか、個々の動きが格段に良くなってる。お前がいなかったら、とっくの昔に死人が出ていただろう」


 さすがに誇張し過ぎではないだろうか。


「そんな大げさな」

「本当だ。自慢じまんしていいぞ」

「しませんよ。ずかしい」


 本気なのか冗談なのか良く分からないことを言われ、否定すると突然、ブヤが俺の頭に手を伸ばしわしわしとでてくる。


「ちょ、副隊長?」

「お前はそれで良い」


 ……良く分からない。

 調子に乗るな、という解釈かいしゃくで良いのだろうか。


「そろそろ戻れ。休憩が終わるまでまだ時間があるだろう」

「はっ」


 大人しく指示に従うことにした。

 休憩場所に戻ると、皆に大したことはなかった、引き続き休憩するようにと告げ、さっきまでいた場所に座り込んだ。


「セリ君とカゼ君はいるかい?」

「俺はここです」

「モズ隊長、こっちです」


 俺とセリはそれぞれ部下たちと世間話をしていたため、少し離れた場所にいたが、セリがモズに近い場所にいたので、こちらが立ち上がって二人に近寄った。


「何でしょうか」

「村長と話はついたよ。僕らが村を出る前にヤタニの人たちにこちらの事情を話し、理解してもらう予定だ」

「納得するのか?」

「してもらうよ」


 セリのうたがわしな声にモズが断言した。


「ただ、条件として十人だけこの村に残ってもらうことになった。所謂いわゆるはったりというものだね」

「うげ、せっかくの戦力が減る」

「村人たちに見捨てられたと思わせないようにするためだから、我慢がまんしてね」


 セリがうめくとモズがたしなめた。


「誰が残るんですか?」


 俺の質問にモズはそうだねえと少し考えて言う。


「この後は南北を駆け回ることになるので、体力に自信のない者やケガで長時間走るのが難しい者に残ってもらおうかと考えてるんだ」

「分かりました。三つの小隊に知らせて選びます」

「よろしく頼むよ。村を出るのは夕食が終わって、相手が寝る頃を狙うので、その直前に部隊を集合させてもらえないかな。話は以上」


 早速さっそく、各小隊に連絡をしようと動きだそうとしたところで、ふと気づく。


「モズ隊長。今回の騒動が終わったら、村に残る兵たちにはどこで落ち合うか、事前に伝えておいた方が良いのでは?」

「そうだね。……分かりやすく都の入り口の前にしようか」


 と、モズが答え終わったとき、彼の体がくらりとれた。


「おい、隊長? どうした?」

「ああ、何でもないよ、セリ君。ちょっと立ちくらみがしただけで……」


 俺はその言葉にぴんときた。

 昼間は皆の指揮や会議、村長などとの交渉に加え、夜間は王様への報告書や各村への連絡などの書類を書いたりしている。

 過労かろうだ。

 俺はセリに目配めくばせする。


「モズ隊長、夜間に皆が集合する時までゆっくり休んでいて下さい」

「え、でも」

「そういや隊長、ここんとこずっと働きづめじゃないか。後は俺たちに任せておけよ」

「そ、そうかい? 助かるよ……」


 俺たちの勢いにモズは押し切られて、適当な場所で横になる。そして、間もなくして寝息を立ててしまった。

 それを見た俺たちは頭を抱えた。


「やべえ、俺ら隊長に頼り過ぎてた」

「……今度から書類作成の手伝いしようかな」


 俺がつぶやくとセリが顔をこっちに向けて驚く。


「え、カゼ、お前できるのか?」

「生まれ育った村でね、ちょっとだけ」

「へええ」


 みょうなところで感心するセリに、ふと思いついたことを訊いてみる。


「セリは読み書きできるの?」

「いや、できねえな」


 そんなきっぱりと断言しなくとも。


「自分の名前と簡単な計算くらいできないと馬鹿を見るよ」


 それで文字の読み書きできない人は、契約書けいやくしょの内容を理解できずに署名しょめいしちゃうんだよね。例えそれが遠回とおまわしに自身の死につながるような事でも。……いや、内容を理解できたとしても、あまりの文章量の多さに面倒臭くなって省略する人もいるな。前世の俺もそうだったし。


「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。……でも、まあ、俺の名前くらい書けなきゃ格好悪かっこうわるいか?」

「……今度、時間があったとき教えようか?」

「良いのか? ありがてえ」


 俺の提案を受けて喜ぶセリを見て思う。

 村同士が仲が悪くても、個人的な友情は持ってもいいんじゃないかなと。

 すると、ブヤたちがいる方から声が聞こえてきた。


「おおい、そろそろ交代の時間じゃないのか!?」

「あ、そうだった。皆、休憩終わり! さあ、立った立った!」

「うっす」

「はいよ」

「さて、もうひと働きしますかね」


 俺の言葉に皆が腰を上げる。

 空を見上げると太陽が傾いて夕方になっていた。

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