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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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失敗

割り込み投稿します。割り込みにあたって前の話も書き換えました。

あと、私は他のなろう作家さんたちを誹謗中傷するつもりはありませんのでご理解下さい。

 俺は今、正座をしている。神様の前で。


「お主、お主は」


 顔を俯かせていた神様は拳でテーブルを叩く。


「何やっとんじゃあああああ!」

「あの、いえ、その、すみません」


 言い訳を考えたが、とりあえず謝ろうと土下座した。


「色々言いたいことはあるが、見返した方がいいの。顔を上げよ」


 恐る恐る神様を見ると、杖を振るい横長の画面を投影した。

 第二の人生はジャンという名のフランス人の男性として生涯を終えた。その中でも懐かしくも情けない、幾つかの山場の内の大きな場面だった。


 画面内で俺の正面に座る複数の人間のうち、真ん中の老人が木づちを叩いた。


「ではこれより、裁判を執り行う」


 そう、裁判 である。よりにもよって被告人席にはジャンこと俺がいた。


「まず、検察より状況を説明する」

「はい、被告人ジャン・ピエールはベルギーのブリュッセルにおいてとある犯行をしました。直接の目撃者はいませんでしたが、被告人が携帯していた持ち物からその可能性が誰よりも高いと確信し、任意同行を求め、犯行を認めたため逮捕に至った次第です」

「被告人、今の検察の発言に相違ないか?」

「間違いありません」

「状況説明を続けます。誰もが寝静まった夜間の短時間による犯行後の朝、事件現場を通りがかった現地住人が発見、警察に通報して事件が発覚。懸命な捜査の末、当時の事件現場付近にいた被告の映った監視カメラが複数ありました。残念ながら現場の監視カメラは被告の妨害で撮影はできませんでしたが、確証は高いです」

「被告人」

「それも間違いありません」


 ジャンは検察の説明をしている間、やや俯いていた。


「被告に問いただしたい。何故、このような犯罪を企てたのか?」


 ジャンは顔を上げ検察を見る。わずかに体を震わせながら勇気を振り絞って答えた。


「芸術のためです」

「芸術? あれが芸術だと言うのですか!? あれは世間では芸術とは形容できない、まごうことなき犯罪です!」


 検察は吐き捨てるように言うと彼の背後から白い布を被せられた物体を台車に載せて運び、法廷中央にまで移動する。


「我々検察は世間を騒がせるのも本意ではないのですぐに証拠を回収しました。そして、それが今ここにあるのです。これが彼の行った明確な証拠です。被告人、弁護士、傍聴人、そして裁判官の方々、どうぞご覧ください!」


 検察が物体を覆っていた布を取り払う。

 それを見た方々からどよめきやざわめき、唸り声が法廷内に熱気と共に満ちる。

 検察は物体を良く見せるため複数のディスプレイを設置し隅々にいる人にも見えるようにしていたので、効果は絶大だった。

 そこにあったのは少女を模った像だった。所謂観光名所に指定されている小便小僧に対を成すようにして作られた小便少女。あれが台車の上に載っている。

 裁判官はある程度間を取ったところで木づちを叩く。


「静粛に、静粛に!」


 法廷内が静かになったのを見計らい、検察が自信満々になる。


「どうですか皆さん、彼の犯行がもたらした結果を! このようなおぞましき行いをした被告人にそれ相応の報いを与えてもらえませんか、裁判長!」

「素晴らしい」

「は?」


 静かな法廷内で、しかし裁判長の呟きは傍聴人席まで響いた。


「あ、あの、裁判長? 一体何の発言をしておられますか?」

「素晴らしいと言ったのだ。見ろ、あの色合い、まるで生きているかのようだ」


 裁判長がした発言に両隣の裁判官も同意する。


「私が生きている間にこのようなものを目にするとは思わなかった」

「神は実在するのですね」

「どうしたのですか、裁判官の方々、はっ!?」


 うろたえた検察が何かに気づいたのか、傍聴人席を見るとそこに座っていた彼ら彼女らはうっとりとしていた。


「美しい」

「一体どのような技法で体現したのか」

「欲しい」


 口々に発せられる言葉は羨望のそれ。ここで検察は何か致命的な過ちを犯したことを知る。

 確かに認めよう。被告人の技術でそこに実在する少女のように塗装されているのである。


「おかしいですよ、被告人は犯罪者のはずです。批判されこそすれ、褒められるようなことはないのです!」


 裁判長が木づちを叩いて場を鎮めると、検察に顔を向けた。


「なるほど、確かに彼は犯罪者だ、犯してはならない罪を被ってしまった」


 検察はその言葉に違和感を覚えたが、犯罪者と認識しているようなので安堵した。


「彼の罪はただ一つ。所有者に許可を取らなかったことだ」

「いや違うでしょう!? 合っていますが問題はそこじゃありません!」

「何かあるのかね?」

「世間を騒がせた罪です! 我々が証拠を回収するまでの僅かな時間、証拠を目にした民衆は何をしたとお思いですか?」

「まあ、写真に収めたのではないのかね?」

「ええ、そうしているのが普通の人々でした」

「つまり、普通でない人物がいた?」


 検察は頷いてディスプレイを指差した。


「その証拠を収めました。ご覧ください」


 今度は法廷内にどよめきと怒号が巻き起こる。


「これは!?」

「なんと冒涜的な!」


 周囲を睨む検察は怒りを抑え込んだまま話す。


「このような見苦しい行為をした者たちはまとめて捕らえました。どうですか、裁判長、皆さま。これでも被告人が善行を成したと言えるのですか?」


 画面には直飲みをする男たちが記念撮影をしていた。白人、黒人、東洋人、難民もいた。


「しまった。扉を施錠するのを忘れていた」

「気づくのが遅いわ! どうするんだ、この状況!?」


 ジャンがうっかりしていたと苦笑する態度に検察の怒りが爆発した。


「人類皆兄弟」

「そこじゃねえ!」

「静粛に、静粛に!」


 騒ぎが一向に治まらないので裁判長が木づちを叩く。

 検察が絶叫した。


「終わったよ、人類!」


 神様が杖を振るうと空中に投影されていた大画面が消えた。


「何やっておるんじゃ、お主」

「いえ、つい、第二の人生だから、日本での人生を振り返ってですね、そういえば両親の言いつけを守るばかりで、青春を謳歌してなかったな、と」

「それで、これか」

「はっちゃけました」

「はっちゃけすぎじゃろ!?」

「でも、頑張りましたよ? 莫大な罰金刑で済んだけど、立体像の塗装に関する商談が舞い込んでくるようになって、ちょっとしたお金持ちになりましたし。ただ、残念なことに若くしてガンで死んじゃったんですよね。あの後どうなったのか気になるんですけど」

「わしがお主を殺したわ!」


 テーブルを叩く神様。額に血管が浮き出ている。


「ええ? 酷くないですか?」

「美術を担当する神たちから苦情が入ったんじゃよ。『美術史に載ってしまったじゃないか、どうしてくれる』と。対応に苦慮して死なせることでお茶を濁したわ」

「あ、一応、俺の名前、歴史に残ったんですね」

「恥として思わんのかい」


 がっくり項垂れる神様に申し訳なくなった。


「いいじゃないですか、男なら何かでかいことをやれ、と昔誰かに言われたことがありまして」

「方向性が間違っとる。あーこの話題止めじゃ、止め」


 神様は茶を飲んで一息つくと真面目な顔になる。


「で、第二の人生の総評じゃが、お主、相当ひねくれておるな」

「そうなんですか?」

「自覚なし、か」


 はあ、お茶が美味い。


「そう指摘してくれる人、今までいませんでしたねえ」

「交友関係は無いでは無いが、極端に狭いし」

「他人を利用して金儲けしてやろうといった奴らが近づいてきたら、関わり合いになろうと思いませんよね?」

「驚いた、本能的に感づいておったぞこやつ」

「はい?」

「しかしな、疑り深すぎて親切に接してきた奴も遠ざけるのもどうかと思うんじゃが」

「借金背負った辺りから怪しい奴らが俺の周辺をうろつく様になりましたからね」

「ある意味でろくな人生送れなかったのう」

「止めさしたのは神様ですけどねー」


 どちらからともなく笑いだす。神様、目が笑ってないですよ。


「では、総評はこの辺にしといて、いよいよ次の転生をしなければならんのじゃが」

「お、待ってました」

「お主、馬鹿じゃし、頭良くないしで、早々古代日本から退場しそうじゃのう」

「酷いなあ、否定しませんが」

「いや否定せんか。今回は特別にチートを複数与えることにした。とはいえ、超人すぎるのもどうかと思うので、人並みと比べて優れてる程度にしとこうかの」

「具体的には? 一般人とプロアスリートくらいですか?」

「まあそれが妥当じゃろ。あと、訓練次第で更に強くなれるようにしとく」

「あっさり死なれると困るんでしょ? 病気や飢え、怪我や毒に対する耐性もつけて欲しいです。それと怪我をしても回復が早くなるとか」

「回復? そういえば、お主のいた日本でいたな、ペリリューじゃったか」

「そうそう、異能生存体とか言われてる」

「実例あるんじゃし、採用」

「ちなみに、あの人、転生者とかだったりしませんか?」

「いや? あやつ自身の力だけで成し遂げよったぞ?」

「すげえ」

「神をやっているとたまにあのような者と巡り合える。それが楽しみでの」


 何か分かる気がする。


「俺より強い奴に会いに行く、みたいな?」

「意味が違う気がするが? ところで、転生するのはこんな条件でいいかの?」

「んー、もう一声欲しい。人には見えない力が使えるのは駄目かな?」

「魔法は駄目じゃぞ」

「超能力、サイコキネシスとかバイロキネシスは?」

「念動力はいいとして、発火能力?」

「火を起こす力は便利」

「採用はするが、人間は対象外な。不自然すぎる」

「それで十分です。それと、不老不死が欲しいんですが」

「いや、それは駄目じゃろ、古代なら神に崇め奉られるじゃろうが、時代が下るにつれ、現地住人に不審に思われた挙句、捕まってろくな目に遭わないぞ?」

「一代限りじゃ歴史に変化を与えられませんよ。それに、第二の人生に止めをさした神様がいるんですから、まずい事態になったら何とかしてくれるでしょう?」

「お主は、はあ、人使いが粗いのう」


 茶を飲んで一息つく。


「そうじゃ、ステータス表示やスキル表示はどうする?」


 お茶を飲む手を止める。


「はい? そんなのあるの? 古代日本に? いらんいらん、そんなことしたら世界観ぶち壊しですよ」

「古代日本といっても候補の世界が幾つもあってな、魔法有りの世界もあるにはある」

「魔法はあると便利そうですけど、それやられると史実が大幅に乱れそう。だからいりません。というか、何で世界が幾つもあるんですか?」

「正確には宇宙が広すぎるからじゃな。それぞれの銀河にある地球型惑星を生物が生存できる環境を整えて種を撒き育っていくのを観察する、それがわしらの役目じゃよ」

「神様、神と言ってますけど、あなた、本当のところどうなんです?」

「別に隠してはおらぬし、皆がそう呼ぶから言わせておっただけじゃな」


 居住まいを正すと、神様はこう言った。


「わしはこの宇宙全体を駆け巡る、地球人類超越文明出身の人間じゃよ」

次も割り込み投稿します。

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