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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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甲板上の攻防

 敵の弓矢による攻撃が止んだすきをついて、俺は他の兵たちに割り込んで、船に乗り込ませてもらう。

 渡しを通ると、甲板上の前半分で剣劇が繰り広げられていた。


「死ねぇ!」

「カヨちゃんのかたき!」

「よくも、よくも俺の家族を!」


 カダの兵たちが特に怒りを表面化させている。その勢いのせいか、殺しに慣れている敵兵の威勢があまりない。技量に劣っていても、一人で駄目なら二人以上でと、寄ってたかって襲い掛かっている。

 親玉は船の後ろにいるようだ。

 甲板上に乗り込んだものの、まだ接敵せってきしてない兵に声をかける。


「すみません、そこの人、手伝って欲しいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」

「あ? 今忙しいから後にしろ! ……何だ、カゼさんじゃないですか」


 良かった、聞いてくれた。

 ……何故にさん付け? 俺、年下なんだけど。調子狂うな。


「耳を貸して下さい。良いこと思いつきました」


 とは言っても、周囲で怒号が飛びっている中、小声で伝えるのは無理なので、普通に声を出す。

 カダ兵は素直に腰を落として耳を傾ける。


「皆の邪魔にならないよう、船の舳先へさきに行って、敵がいる方向に向けて横を向いてもらえませんか?」

「そりゃ構いませんけど、何するんですか?」

「肩を貸して下さい。弓矢で援護します」

「ああ、なるほど。そいつはありがたい、です」


 二人で船の舳先に移動すると、俺はしゃがんだカダ兵の両肩りょうかたに足をのせて立つ。


「良いですよ、立って下さい」

「はいよ」


 視界が持ち上がり、甲板全体を見下ろせる位置になった。

 弓を構えようとして、気付く。

 予想していた敵の数が明らかに多い。つい先ほどまでの攻防で敵の数をかなり減らしたはずなのに、なんで数十人もいるんだ?

 目をらすとカラクリが判明した。

 あいつら、奴隷たちを甲板上に出して、即席の兵士にしてる。

 鎧は来ていないが手に剣を持って、必死な形相ぎょうそうでカダ兵たちに立ち向かっている。

 肝心かんじんの鎧を着た敵は、カダ兵から逃げ遅れた奴ら以外、奴隷たちと入れ替わって後方にいた。

 時間稼ぎしようって腹か。


「何だ、こいつら!?」

多分たぶん、櫂を漕いでいる奴隷だ!」

「それなら俺たちの敵じゃないはずだ。おい、剣を捨てろ、お前たちとは戦う必要は……ぎゃ!」


 奴隷たちを説得しようとした兵が奴隷に斬られた。


「な、何で話を聞いてくれないんだ!?」

「分からねえ、敵におどされでもしてんじゃねえか!?」


 そういえば、奴隷の大半が海の向こうの国の生まれ育ちだったか。会話が通じない以上、説得は不可能だろう。

 ただで殺されるわけにはいかないと判断したのか、カダ兵たちも奴隷たちに向けて剣を振り下ろし始めた。

 甲板上には鎧を着たカダ兵が中心となって乗り込みつつも、数の上ではまだ敵側の方が有利だ。

 戦況は拮抗きっこう状態となる。

 逆転するには敵の指揮官、というか、本命の羽織の男を倒すほかない。けれど、こう人が密集みっしゅうしていては探すのが難儀なんぎだった。

 仕方ない。

 俺は三本の矢をつがえると、後方にいる鎧を着た敵を狙って射た。

 サイコキネシスで誘導された矢は正確に敵の頭をつらぬく。倒したのは岸壁側の船縁で盾を構えていた兵たちだ。奴らの防御に穴が開いた箇所から陸上にした弓隊の矢が射こまれ、側面からの不意打ちに敵も奴隷も関係なく平等に倒れていく。

 拮抗した戦況が崩れ、徐々にカダ兵が有利になっていく。

 不利を悟ったのか、奴隷の一部が剣を落としひざまずき、意味の分からない言葉を叫ぶ。

 どうやら降参すると言いたいようだ。

 また別の奴隷は剣を放り出すと、海へ向かって身を投げ出した。

 少しでも助かる道を選ぼうとする判断は悪くないと思う。けれど、あんなに疲れ切った状態で泳げるものなのだろうか? 後で助けてやらないと。

 奴隷たちの一部の行動が前方から後方へと広がっていく。

 その様子に敵が怒鳴り散らしながら奴隷を斬りつける。

 なるほど、暴力で言うことを聞かせていたのか、などと納得しながら、その男の頭を射抜いた。

 奴隷たちがしゃがみ込んだり海へ逃亡したおかげで、敵への射線が大分だいぶ通るようになった。

 敵の指揮官と羽織の男が兵たちの後ろにいるのが見えるが、敵兵が邪魔で狙いにくい。


「弓隊! もう射るな! 味方を巻き込む! 射るな!」


 同じく甲板上にいたサヘエが船縁で大声を上げる。

 ミマツとカダの兵が跪いた奴隷たちの合間をって敵指揮官へと近寄ると、親玉を守る盾持ちの敵兵が味方に斬りかかった。

 あともう一息というところだ。


「えっ?」


 誰かが疑問の声を上げた。

 跪いた奴隷たちの一部が放り捨てた剣を手に取ると、一斉に親玉に向かっていた味方の背後から襲い掛かったのだ。


「痛え!?」

「誰だ!? 俺は味方だぞ!?」

「違う! 奴隷だ! 奴ら奴隷の恰好かっこうして潜んでやがった!」


 敵を追い詰めたつもりが逆にはさちにあった。敵味方入り乱れての争いとなる。

 俺は台になっていたカダ兵から跳び下りる。


「もういいんですかい?」

「あの乱戦じゃ、味方に当てちゃう。無理だよ」


 弓を背負い直しながらカダ兵に受け答えする。


「台になってくれてありがとう。ここは任せるよ」

「カゼさんはどうするんで?」

「奴らの背後に回り込む」


 そう言うと、俺は船縁の手すりに跳び乗って、手すりの上を走る。

 外周をぐるりと回って敵の側面へ来たとき、羽織の男と目が合った。

 気付かれた。

 だが、飛び道具は持っていないようでにらみつけるだけで迎撃げいげきしてこない。構わず背後へ回り込むと羽織の男の目の前で手すりから降りる。


「お前は捕虜ほりょだ。あらいざらいいてもらうぞ」


 どうせ通じないだろうが、一応言ってみる。

 見るからに仕立ての良い羽織を着ている男が、この船に乗っている賊どもと立場が一緒なわけがない。

 そこへ敵の指揮官が俺の存在に気付き、何事かを叫ぶと剣で俺に斬りかかってきた。

 袈裟懸けさがけに振り下ろされた剣を最小限の体捌たいさばきでかわし、すれ違いざまに両手で敵指揮官の頭を掴んで、己の体を百八十度回転させた。

 男の首は自身の体重に耐え切れず、異様な角度でごきりと鈍い音がすると、敵指揮官は二度と動かなくなった。

 俺は死体を放り捨てて、羽織の男と向き合い剣を抜いた。


「お前、転生者か?」


 羽織の男の言葉に目を見開いた。

 日本語だ。たどたどしくない、西暦二千年前後に俺が過ごしていた頃の発音だ。

 予想していなかった展開に俺は対応に困った。

長くなりそうだったので分割します。

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