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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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夜間襲撃前

 会議が終わり解散した後、埋葬が終わって休憩していたミマツの国出身の者たちを集めて、これからの事を説明する。

 皆は大体納得したが、誰がどこに配置されるかで少しめた。


「広場正面は俺に任せろ」

「オラは広場左側に行くだ」

「じゃあ、右側だな」

「海側から攻めるわ」

「泳げる?」

「……頑張る」

「無理すんな、広場から行け」


 部隊とか編成へんせいとかしてないから分散配置が大変だった。最終的にどこそこの村の出身は広場の左右とか、泳げる奴は海側などと分ける事で解決した。人数がかたよらないよう、なるべく均等に分けたつもりだが、大丈夫だろうか。

 肝心の海側から攻める者たちの人員だが、幸いなことに、ミマツは海に面した沿岸国家なので、泳げる者たちは結構いた。流石さすがに全員を採用すると広場側の人数が足りなくなるほどだったので、遠泳に自身のある者のみを選んだ。

 俺の場合は生前に五百mくらいまでしか泳いだことはないし、今生こんじょうでは川や沼で泳いでいたが、戦闘能力で補うつもりだ。

 一応、戦国時代には鎧を着たまま、槍を使用して堀などを渡る技術があったが、今回は海底の傾斜けいしゃで深さが一定でないこともあって、海側は全員鎧を脱いで行くことになった。渡る途中でおぼれたら元も子もない。


 夜、所定の配置に向かうため皆と別れた。


「また会おう」

「死ぬなよ」


 互いにそう言いつつ、暗闇を集団で足音を立てないよう、町のすみを移動する。

 敵は初日と二日目を襲撃と略奪に力を入れ、三日目からは酒と女で大宴会をしたまま、こちらに攻めてくる気配はない。

 倉庫の裏手に近寄ると、丁度巡回していたのか、海賊が一人で歩いてきた。物陰で息を潜めている俺たちに気づかずに通り過ぎ、背中を見せる。


「……殺しますか?」

「手下が戻ってこないと、仲間が不審に思うでしょ。ここはやり過ごそ……」


 海側から襲撃する部隊の臨時隊長にされた俺は、部下と小声でやり取りする。

 が。

 何を思ったか、通り過ぎた海賊が足を止めて振り返ろうとした。 

 俺は咄嗟とっさに、袈裟懸けさがけに巻き付けていた黒曜石の投げナイフの一本を投擲とうてきした。狙いあやまたず振り向いた海賊の喉に吸い込まれ突き刺さった。

 崩れ落ちる海賊に小走りで駆け寄ると、同じく集団の中からついてきた部下四人に命令する。


「こいつを目立たない場所へ運べ」

「はい」


 運ばれていく海賊を見ながら俺は冷や汗をかいた。

 あぶねえ、いきなりだったからサイコキネシス使わなかったけど、良く当てられたな。これも訓練の賜物たまものか。


「隠したか? ぐに移動するぞ」


 その後は何事もなく海岸にたどり着く。港の中央に他の船よりも大きな船が見え、その近くを見張りが立っているのが宴のき火にかすかに照らされて見えた。


「全員しゃがめ、動くなよ」


 こちらに気づかれないよう、念のため命令して、全員がそうしたのを見てから声をかける。


「カダの町の兵、海の中に詳しい者がいたら寄って来い」


その言葉を聞いたカダ兵たちが顔を見合わせ、互いに肘打ちを出し合うが、観念したのか一人が近づいてきた。


「……なんでしょうか?」

「ここからあの船まで泳いでいくことになるが、それまでの間、海の中に何か障害物はあるか?」

「……ありません」

「潮の流れが速くて、流されてしまう恐れはあるか?」

「海岸から離れて泳げば、ありえますが、そこまで心配する事はないと思います」

「分かった、ありがとう。それとここから先、道案内を頼む」

「分かりました」


 離岸流りがんりゅうの恐れはなさそうだ。

 返事を聞いてから他の者たちに命令する。


「前にも言ったが、ここから隊を二つに分ける。腕に自信のある者はついてこい。ない者は足止めのため、合図があるまでここで待機だ」

『はっ』

「それとこれは固くきもめいじておけ。……死ぬなよ、生きて会おう」

『はっ』


 道案内を先頭に俺たちは海に入った。


つめたい」

「声を出すな」


 冬じゃないんだけどな。確かに冷たい、事が終わったら焚き火にでもあたろう。

 全員が海に入ったのを見届けてから移動を開始した。一旦岸から離れ、一定の距離を保ちつつ船へ向けて泳ぐ。

 静かな波の音の中、腕を水面に出さずに平泳ぎの要領で、ざぷざぷと水をかき分ける音が響く。

 敵にこの音が届いてやしないだろうか。心配になる。いや、道案内がいるのだ。その辺も考慮こうりょしてくれているだろう。

 だんだんと船に近づいていく。

 暗くて良く見えないが、証言通り船が十隻以上ある。船は岸壁に横付けされていた。ここから手分けしてそれぞれの船を制圧していくわけだが、様子がおかしい。

 よく見ると、船の側面にやたらと細長い穴あきの横窓が見えるのだが、もしかしてアレだろうか。


「おい、あの船に空いている穴は何だ」

「あれはかいという道具を突き出す穴です」


 道案内からの返事で嫌な予感が当たった。中に人がいる可能性があるってことか。

 しかも奴ら海賊だ。奴隷にがせてるだろう。その場合どうするか。このまま乗船しようとすると音で気づかれそうだな。

 万が一気づかれたらすぐに合図を送るか?

 反乱させる? 中世では逃亡や反乱防止のため奴隷の足を鎖でつないでいるっていう話だしな。それに海の向こうの外国人だから言葉も通じない。無理だな。

 彼らは事が終わるまで放っておこう。


「ここいらで良いだろう。皆、手分けして事に当たれ」


 そう言って俺は三人を連れ、十隻のうちの真ん中の船を目指して泳ぎだした。

 船の後方にたどり着くと、持ってきていた鉤爪かぎづめ付きの縄を投げ、船のへりに引っ掛ける。

 水音を立てないようゆっくりのぼり、船縁ふなべりから顔を覗かせて周囲を見回す。ついでに隣の船も目をやるが、甲板上には人がいない。ただ、略奪したであろう物があちこちに転がされている。

 音を立てないよう甲板に降り立つと、後から来る三人に手招きして登ってくるよう促す。

 目線を上げれば隣の船でも俺たちと同じように登ってくるのが見えた。

 なるべく腰を落としつつ海岸に目をやると、見張りが正面含めて五人くらい見えるが誰もこちらに気づいていない。遠くに広場があり、そこで酒を飲んだり、酔いつぶれて寝ていたり、さらった女を乱暴したりと様々だ。

 宴の中心から見張りまでは結構距離がある。

 海岸側の見張り五人を全員殺しても気づかれないか?

 左右の船を見ると隊の半分くらいが乗船したようだ。

 このまま見張りが気づかずにいてくれれば良いが。……いや、こちらから攻めよう。

 後から登って来た三人に言う。


「ちょっと見張りを倒してくる。どうしようもない事態が起きない限り、この場を動かないように。ただし、合図があったら行動に移すこと」


 今、ここからでも端にいる見張りまで百五十mくらいしかないので、弓で足りるのだが、矢を放つときの音がどの程度響くか分からない。遠投げは石が重くて泳ぐのに邪魔だった。

 俺は足音を立てないよう船の端へ移動すると、隣の船に跳び移った。音を立てないよう、体全体をクッションのように和らげる。船と船の間隔はまちまちだが、長いもので五mくらい離れているものもある。村にいたとき、近くの森でパルクール?をやっていたので、そのくらいの距離は分けなかった。

 その先で再会した戦友に同じことを言って聞かせると、さらに隣へと移りそれを繰り返す。やがて敵の船の端に来るとそこで立ち止まり、海岸を見る。

 ……どうやら気づかれていない。というか、波の音が俺たちの行動をある程度消しても、見張りが誰一人気づかないというのも、どうかと思う。皆宴に視線をやっていてこちらを見ていない。

 今からやることにどうか気づかれませんように。

 身体能力を駆使くしして岸壁側の船縁の上に乗る。両手に黒曜石のナイフを複数持ち、次の船に向けて走り出しながら、最初の見張りの首の後ろ目掛けて一本投げつける。

 今度はサイコキネシスの誘導付きだ。狙い通りに突き立ち、見張りが崩れ落ちる。

 それを尻目しりめに船縁を蹴った俺は、次の船の船縁目掛けて跳ぶ。難なく着地してさらに次の船へ走る。二人目の見張りは三つ目と四つ目の船の間に立っていた。その男の真横を通過する、空中でナイフを投擲、命中させる。

 十隻の船を走り抜けたとき、立っている見張りは誰もいなかった。

 いきなり跳び移って来た俺を見て甲板上にいたミマツとカダの兵がびっくりしている。


「騒ぐな、俺だ。見張りは倒した。合図を出すぞ、準備は良いか?」

「あ、ああ」


 俺は背負っていた弓を取り、矢筒から油を染み込ませた布を巻き付けた鏑矢を引き抜くと、火打石で布に火をつける。

 さすがに五人の見張りが立て続けに倒れたのを不審に思ったのか、他の見張りが歩いて近づくのが見える。

 間に合った。

 俺は燃え上がった矢をつがえ、夜空に向けて矢を放った。

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