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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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軍議

 カダの町の主だった兵が集まり、建物の中がいっぱいになった。

 サミタが全員に語り掛ける。


「皆の者、よう集まってくれた。これより、奴らを叩き潰す軍議ぐんぎを行う」


 その言葉に町の兵たちが頭を下げる。


「その前にまず、紹介したい者たちがおる。遠い東の国から救援にやって来たナガル殿一行じゃ。奴らに正面切って戦ってくれると約束してくれた。我らは彼らの後に付いて戦うのじゃ」

『はっ』


 町の兵たちが答えた。

 兵たちの顔つきを見ると、とても一般人とは思えない。戦を経験したからこそできる表情だ。

 思っていたよりもなかなか頼もしそうだ。


「お初にお目にかかる。ただ今紹介にあずかったナガルと申す。これより、この町の奪還は俺の指示に従ってもらう」

『はっ』

「だが、我らはこの町にたどり着いたばかりで地形や敵の居場所を知らん。誰か詳しい者がいたらここに描いてほしい」


 ナガルが横にずれると背後に大きな白い布が天井から垂らされていた。筆と墨汁ぼくじゅうの入った壺が用意されている。

 町の兵たちが顔を見合わせ、誰が描くのか相談を始めた。

 少し間を置いて一人の若者が立ち上がる。


「で、では私が描きます」


 若者が白い布の前に立つと、筆や手のひらに収まる大きさの壺を受け取る。

 そこに、ナガルが若者へ問いかける。


「お前の名は?」

「ヤキノです。よろしくお願いします」


 ヤキノはそう言うと、布にさらさらと描きだした。


「……ほう」


 ナガルがうなる。躊躇ためらいがなく、描き慣れている。上手いのだ。


「つかぬ事を聞くが、普段から何かを描いているのか?」

「ああ、いえ、大したことではないのですが、海の向こうから運ばれてくる布の絵が美しく、それに魅せられてしまい、暇を見ては描く練習をしておりました」


 ヤキノは大まかな地図を描くと、皆に向けて解説を始める。


「まず、この布の中心より下の四角がこの町長の建物です。さらに下がナガル殿一行が来た方。左右が山に挟まれ、上の方が海岸、つまり港となります。港の中央は広場になっていて、左右に倉庫が立ち並びます。誰か、敵の船の数や詳しい位置を知りませんか?」


 皆の方へ振り向いて声をかけると返事があちこちから来る。


「少なくとも十隻はいたぜ」

「俺は十三隻はあったと思う。奴らが盗んだ物を船に運び込んでいるのを物陰ものかげから見たぞ」

「位置は港のど真ん中だ。奴ら接岸して、一か所に固まってるぞ」

「待った。聞くが、何故奴らはそこに船を止めた?」

「普段は中央を空けておいて、外国から来る荷の揚げ降ろしのためですな。そこを狙われたのでしょう」


 ナガルが質問するとサミタが答える。


「奴ら、港前の広場で宴を開いてて、その周辺に見張りがいる」

「倉庫の裏側にも見張りはいますか?」

「時たま巡回しているのを見ているが、数は少ない。というか、おざなりだな」


 ヤキノがナガルたちの会話を聞いて、地図に書き加えていく。


「こういうのはどうだろう。我々が広場の下から攻める。奴らは迎え撃つ者もいるだろうが、左右の倉庫かその裏側へ逃げる者もいるだろう。そんな奴らが逃げないよう、君たち町の兵があらかじめ倉庫の裏に回り込んで逃げ道を塞いで追い返す。後は我々がやる」

「それは良い案だが、船に乗って逃げる奴らもいると思うぞ。そいつらはどうする?」

「逃げる間を与えず攻めたい。そう考えてはいるが……」


 地図を指さしながらのナガルの提案に、皆の意見も加わり会議が熱をびていく。

 会議が続く間、町の兵たちの一部が隣同士で話し合う。


「俺たちの船、奪われていなきゃいいんだが……」

小舟こぶねはともかく、大型船はなあ……」

「船を操る人がいないんじゃ、大丈夫なんじゃないか?」

「俺、幾つか船が燃やされてるの見た」

「なんてことしやがる、木材は豊富にあるが、一隻作るのにどれだけの時間がかかると思ってんだ」


 彼らの話から察するに、敵は人手不足らしい。余裕がないから燃やしている、と。


「いっそのこと、あいつらの船、分捕ぶんどっちゃう?」


 俺が何気なく口にした言葉が思いのほか室内に響いたらしく、皆のざわめきが止まる。


「……良いな、それ」

「奴らの船、俺たちの船よか大きいし、頑丈がんじょうそうだ」

「でも、遠目に見ても、船のそばに見張りがいるんだよな。そいつらをどうする?」


 いきなり質問が俺に向いたな。何も言わないより、駄目もとで提案してみるか。


「泳げる人いる?」

「ははは、坊主、舐めるなよ。海辺で育ってきた俺らが泳げないとでも?」

「泳ぐ、ってことは、海から回り込んで奴らの船を奪うってことか?」

「うん、そう。夜になってから、左右の倉庫の裏から回り込んで海に入って、奴らの船に直接乗り込む。それか、見張りの背後に回り込んでこっそり倒す。船を奪ったら鏑矢かぶらやを放つから、それを合図に広場に攻め込む。……というのはどうかな?」

「かぶらや? っていうのは何だ?」


 俺は背負っている矢筒から鏑矢を取り出す。矢先が銅製でUの字になってる物だ。

 村にいた頃、折を見て鍛冶屋かじやに頼んで作ってもらった物だ。幾度かの試作を経て、満足な物が出来上がったと自負している。


「これだよ。これを空に向けて放つと甲高かんだかい音を鳴らすんだ。ついでに布を巻き付けて、火をつけるから、暗闇でも分かると思う」

「……」

「後は、船に乗って逃げようとする奴らを乗り込ませないよう頑張れば良い。僕も泳げるから海側から攻めるのに加わるよ。……出来る?」

「……出来ると思う」

「……上陸してからが勝負だな」


 ナガルの次の言葉に周囲が静まり返る。


「出来る出来ないかじゃない。やるんだ。……他にもっと良い案はないか? ……ないなら、この案で行くぞ」

「ちなみに、いつ実行に移しますか?」


 俺がナガルにたずねると、直ぐに答えが返ってくる。


「なるべく早い方が良い。……サヘエといったか?」

「はっ」

「兵たちの様子はどうか?」

「死んだ者たちの埋葬を手伝っており、多少疲れているようです」

「埋葬が終わり次第、直ちに休むよう伝えろ。その他の者たちも至急、兵たちにこの案を伝えるように」

「では?」

「今夜にも奴らに襲撃を掛ける」

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