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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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とある町にて

「海だ」


 京都を発ち山中を歩き、海岸へ出た。北側は見渡す限り海である。日本海だ。


「今、どの辺りだ?」

「待って下さい」


 ナガル王子とヨヘイが地図を広げた。


「恐らくこの辺りだと思われます」


 ヨヘイが指差したのは兵庫県北部周辺だった。


「ここからさらに西か」


 王子はそう言うと、海岸に沿って太陽が傾いていく方を見た。


「西の国の使者からの報告によりますと、この辺りか、その先で流民と住民との()め事が起きているようです」

「ああ。ともかく、まずは現地住民に実際に会って、詳しく聞いてみないとな」

「はい」


 二百人からなる集団は西進する。途中、村を幾つも通過したが、これといった被害は無かった。ただ、西の国から噂は伝わっているらしく、(やぐら)のあるそこそこ大きな集落だと環壕を築いている、もしくはその最中の所を通りかかった。

 皆、不安を感じているようだ。

 ある日、とある村の外で夜営の準備をしていると、村で交渉しに行った者が王子たちにこう伝えてきた。


「この先の大きな村で何者かによる襲撃を受けた模様です」

「被害は?」

「食糧を奪われ、死傷者も多数出ているという話です」

「流民の仕業でしょうか?」

「分からん。地域住民とのいさかいかもしれないしな」

「明日、そこに行ってみましょうか」

「そうしよう」


 大まかな判断は王子がやってくれるので、俺たちはそれに従うだけだ。前世の社会生活もこれくらい楽だったら良かったんだが。

 事件の起きた場所は海岸沿いの大きな村、というより町に近い。それだけ規模の大きい集落だ。立派な外壁に環壕が張り巡らされている。

 町の東側から環壕を渡って中に入ろうとしたとき、騒ぎが起きた。


「……何か臭うな」

「うわっ、何だこれ!?」


 集団の先頭で何かあったらしい。全体の動きが止まる。俺も王子たちも様子を見に行く。


「何事だ」

「それが、壕の中に……」

「人が……」


 兵たちが道を譲り俺たちは現場に到着した。壕の中を覗き込む。

 人間の死体があった。それも一つや二つではない。数えるのが馬鹿らしくなるくらい壕の中で無造作に積み上げられていた。


「……ざっと百人くらいですかね」

「どんな状態だか分かるか?」


 ヨヘイに観察を任せる。

 この時代に生きて、人間の死は二千年代と比べて劇的に身近になったが、こうもいっぺんに死んでいると見ているこっちが参ってしまいそうだ。


「……まだ死んでから、さほど時間は経っていませんね。(はえ)(たか)りつつありますが、死体はほとんど(いた)んでいない」

「他には」

「死体は若い男、それから女性、……が大半ですかね。死因は……矢であったり、()られたり」

「おい!」


 ヨヘイの観察を遮る声が響いた。声のした方を見ると、環壕の中から武装した男たちがこちらに槍を向けている。


「そこで何をしている! お前たちは何者だ!」


 ヨヘイが俺たちの中から進み出た。


「私たちは西の国から救援の要請を受けて来た、東の国の者です」

「……助けが来たということか」

「よろしければ、この状況を教えてもらえませんか? 何か手伝って欲しいことがあれば言って下さい」

「いいだろう。早速で申し訳ないが、これらの死体を埋めるのを手伝ってくれないか?」

「分かりました」


 遺体を放置すれば病気の発生源になりかねないので、妥当な処置である。故郷の村では土葬が主で、畑にならない()せた土地に埋めていた。

 でも、この時代の人たちって、腐った死体が病気の媒介になるって知っていたのかな? 案外、親しい人たちが変わり果てていく様子を見ていたくなくて埋めたのが最初かもしれない。

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