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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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懐かしき者

感想ありがとうございます。いたらないことが多々ありますが精進します。

「とりあえず、座れ。楽にして良い」

「はい、ありがとうございます」


 その場に座って胡座(あぐら)をかく。

 ナギと名乗った王は木簡を脇に置くと、木の葉と筆を取り出して何やら書き付けたそれを、俺を連れてきてくれた衛兵に渡す。衛兵は書かれた文字を見て、この場を去っていった。

 王は茶を(わん)に注ぐと俺に出す。


「ほれ、飲め」

「これはどうもありがとうございます」

「さて、聞きたいことが色々あるのだが、……まず、今年の秋の収穫はどうだ」

「うちのヨシマの村は例年並みでしたが、他が良くないと聞いてます。あの、そんな情報くらい、ナギ様の下に来ているはずでは」

「当然来てる。が、生の情報が欲しい」

「そうですか。……このままでは冬を越せない村が出てきているそうです。最悪、残った食糧を巡って争いが生まれる可能性があります」

「カゼの村の連中はどうしてる」

「食糧を奪われないよう、村の防備を整えてる真っ最中です」

「そこにきて、今回の救援だからな。悪いとは思うが、国と国の付き合いというものがある。依頼を断ると後が怖い」

「というと?」

「商売を邪魔されたりする」


 西の国は海外の交易(こうえき)の拠点となっている。望んでいた商品が手に入らなくなるのは痛い。


「質問なんですが」

「何だ」

「都に集まってきた兵たちは武術大会に出場した者たちですか」

「……参加してる奴もいれば、いない奴もいるな」

「割合的には」

「前者が三割、後者が七割といったところか」

「強い人を出さない理由は何でしょう」

「カゼのように村の働き手として置いておきたかったのだろう。……まさか、他所(よそ)の村を襲うための態勢を整えてるとでも?」

「大半は自身の村が食べていけるように守りに入ると思いますが、中にはそうする他ない村もあるでしょう」

「ううむ、国の食糧庫に限りがあるとはいえ、武術大会の賞品に振る舞っただけではやはり足りなかったか……」

「私が心配しているのは、西の国に派遣されている間に争いが起きることなんです」

「その点については、俺が責任を持ってできる限り抑えることにする。……限度はあるが」


 茶を飲みつつ話していると、別の人が来た。


「王よ、参りました」

「来たか、こっちに来い」


 懐かしい声を聞いた。思わず振り返ると年をとったが、見覚えのある顔がそこにあった。


「ゴサク」

「おや、私の名をご存じとは、どちら様ですか?」

「え」


 沈黙した。ゴサクと最後に会ってから十年近い歳月が流れたのは確かだが、忘れているとは何事だろうか。


「僕だよ、ヨシマの村で十年くらい前に会ったじゃないか」


 首を(かし)げられた。本気で忘れてしまっているらしい。


「……文字を教えて欲しいって言ったりしたよね?」

「……ああ! あの時の子供ですか!」

「どうして忘れていたのさ」

「忘れるも何も、貴方は三才くらいだったでしょう。そんな小さな子供がここまで大きくなったら分からなくなります」


 そうかもしれない。背丈だって随分伸びた。


「そういえば、名前は何と言うんです?」

「ああ、カゼとつけてもらった」

「カゼ、風ですか。どんな意味でつけてもらいました?」

「いつの間にかどこかへ飛んで行ってしまうことからつけられた」

「あはははは、君らしいですね」


 ごほんと咳払(せきばら)いをする声が間に入る。


「あー、感動の再開を邪魔するようで悪いが、話はまだ終わってないんだが」

「これは失礼を」

「すみません」


 軽く謝罪し、ゴサクは王と俺から等間隔の位置に座る。


「それで、さっきまでカゼのいる村と近隣の村の収穫状況について聞いていた。あまり良くないそうだ」

「それ以外の村ではどうなんですか?」


 俺の質問にゴサクが首を横に振る。


「あまり(かんば)しくありません」

「まあ、それだけの情報があれば今は良い。次の質問だ」


 王は議題を切り上げると俺に投げかける。


「どうやったらそこまで強くなった?」

「そんなこと聞かれても困ります。村にいた皆さんの訓練を見て、真似ただけです」

「才能というものでしょうか」

「そんなんで強くなれたら苦労しねえよ」


 ごもっとも。神様とのやり取りは話さないほうが良いだろう。


「また別の質問だ。これからお前は西の国に行くわけだが、何か聞きたいことはあるか?」

「食糧の補給はどうなってますか?」

「ああ、馬に()せて運ぶ。飢えることはないから心配するな」

「海を渡ることはありますか?」

「無いな。あくまで依頼は西の国の治安活動だ。……何だ、その残念そうな顔は」


 俺、そんな表情してたのか。

 ただ単に、海の向こうに渡って活動しなければいけなくなるのかと思っただけだ。


「ああ、そういえば以前、カゼは西の国に興味を示してましたよね。確か、書物を欲しがっていたような」

「それです。その気持ちは今も変わってません」

「書物? 何故そんな物を欲しがる?」


 王が興味を示してきたので語る。

 文字を学びたいという欲求が高じて、木簡だけでは飽きたらず、書物を聞いて欲しがったこと。

 その書物がまだ西の国しか無く、書物の原料となる紙とその製法は海の向こうにあること。

 今回の西の国への派遣を利用して紙の製法を手に入れようと計画していること。


「うむ。分かった。それなら丁度良い」

「何がですか?」

「我々も紙の製法を手に入れたいと考えていたところなんですよ」

「ナギ様たちも?」

「木簡だと、嵩張(かさば)って仕方ないんですよ。重いですし。その点、書物なら」

「嵩張らない、と」

「人間、便利な物を知ってしまうとな、それが欲しくて仕方なくなる」

「それは分かります。……で、どうやって手に入れるんですか?」

「逆に尋ねるが、どうする?」


 質問に質問で返され、一瞬言葉に詰まるが、今まで考えていたことを話す。


「戦乱に追われて海を渡ってきた流民の中には、紙の製法を知る者がいるかもしれません。その者を探し出すのは骨かもしれませんが」

「しらみ(つぶ)しに探すというわけか」

「ただ、知るだけでは駄目でしょうね」

「ですので、知る者をこの国に勧誘すれば良いのではないかと」

「勧誘ですか、どのようにして?」


 勧誘。脅すのではなく、誘う。

 この時代にお金ってあったっけ? 海の向こうはどうか分からないが、このあたりは物々交換が普通だ。


「男だったら女でも世話してやればいい。それで大抵は転ぶだろ」

「……王よ。誰も彼もが異性に()かれるわけではありません」


 言えない。女にあまり興味を示さなかった俺が、あっさり落ちたことは言えない。

 でも、案外、その手に引っ掛かるかもしれない。


「……ところで、ゴサクは結婚しているの?」

「してますが、何か?」

「いえ、何でもありません」

「?」


 良かった、ついさっきの発言で、あっちの趣味を持っているのかと思った。

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