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一から始める日本創生  作者: 塚山 泰乃(旧名:なまけもの)
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入会

 あの事件の半年後、村の若者たちが日々行っている、戦のための訓練に俺も加わろうとした。

 当時は四才にもなってない上、幼児の死亡率の高い時代、教えているうちに死んだら無駄になるということで入れてもらえなかった。

 それでも時間があれば訓練を見学し、彼らの動きを真似たり、同い年の子供たちを集めて戦ごっこで遊んだりして、知識、経験、技術、運動神経などをつちかった。

 その中でも俺が特に才能を発揮したのが飛び道具で、投石は百発百中を記録し、子供たちだけでなく、噂を聞いた村人たちも驚いた。

 実を言うと、神様からもらったサイコキネシスが関係している。超能力が使えるということはばれないようにして、なるべく実力を磨き、これでもかと言うくらい命中率を上げてから、不自然にならないよう精密誘導で的の中心や鳥の急所に当てられるように投げることができるようになった。

 また、スリングは少なくとも村の長老も存在自体を知らないようだったので、俺が遊んでいる最中に偶然発見したようによそおった。

 スリングという呼び方はこの島国に相応しくなかったので、遠投とおなげと言って誤魔化ごまかした。

 当初は遠投げの有効性について疑問を持っていた大人たちだったが、いらない土器のつぼを百mくらい先に置き、サイコキネシスの誘導付きで粉々に砕いた上で、僕よりも力のある大人たちがそろって敵集団に雨のように降らせたらどうなるかと言ったら採用された。

 人の拳大の石が大人が力いっぱい遠くへ投げるよりも何倍も飛び、矢を作らずとも弾はそこら中に転がっているので大層たいそう喜ばれた。

 そして三年ほど経過し、俺が六才になった時、父が言った。


「そろそろカゼも入会する年かな」

「何に入会するの?」

「ほら、広場で大人たちが訓練してるだろう。その仲間入りをするんだ」

「やっと? 待ってた」


 ある昼下がり、父に連れられて村の広場に行った。

 そこには、前々から目にしている若者たちが槍に似せた棒を持って訓練している姿があった。

 よく見れば俺と年のそうかわらない子供たちが体格に合わせた棒を持って素振りをしていた。

 俺もようやくあの中に加わるのか。

 感慨深げに観察していると、父が訓練を見ていた大人の一人に挨拶する。


「サヘエさん、こんにちは」

「おう、その坊主がそうなのかい」

「はい、そうです」


 ああ、あの時のおじさんか。


「サヘエおじさん、こんにちは」

「おお、こんにちは」

「こら、カゼ、失礼だぞ」

「良い良い、俺おじさんだからな」


 おじさんと呼んだのが失礼だったのか?

 サヘエはくっくと笑うとしゃがみ込んで俺と目線を合わせる。


「坊主がよく俺たちの訓練をのぞいてるのは見てる。興味があるんだよな?」

「うん、強くなりたい」

「そうかそうか」


 にこやかにサヘエが俺の頭をわしわしと撫でると、訓練している若者たちを見やる。


「で、何を学びたい? 素手は当然として、剣か、槍か、弓か。投石は……教えることはないか」

「とりあえず、全部」

「ははは、そうきたか」


 サヘエはひとしきり笑うと凄みのある笑顔で問う。


「そうなると訓練は凄く厳しくなるぞ、付いてこれるか?」

「分からないけど、頑張る」


 意気込む俺にサヘエは父を見る。


「お前の子、将来有望そうだな」

「男なんて皆そうなんじゃないですかね」

「違いない」

「あと、よろしくお願いします」

「おう」


 父はサヘエに頭を下げると若者たちの訓練に加わっていく。


「坊主、お前はこっちだ」

「はい」


 サヘエの後に付いていく。行先は俺と同い年くらいの子供たちだ。


「おおい、小僧ども、ちょっと練習止め」


 声をかけられた子供たちが振り向いた。


「今から新しい仲間を紹介する。イワのところの息子で、ええと」


 あ、サヘエに自己紹介するのまだだった。


「カゼと言います、皆さんよろしくお願いします」


 腰を折って頭を下げる。


「というとこだ、ほら皆も挨拶しろ」

「よろしくおねがいします」

「やっと来たか」

「待ってたぞ、【石投げ】」

「よろしく」


 挨拶をした中には普段からよく遊んでいる子たちの顔もちらほら見える。

 ちなみに石投げという呼びかけは俺のあだ名だ。あくまでこの村の中での呼び名だけど。


「デエダ」

「あい」


 サヘエに呼びかけられ、野太い声が返ってくる。

 大人たちの中でも頭二つくらい大きい男が近寄って来た。2m超えてるんじゃないかな? この時代に珍しい身長だ。


「カゼも知ってるだろうが、こいつがデエダだ。子供たちの面倒を見ている。訓練のときはこいつの言うことを聞くんだぞ。分かったな」

「分かりました。カゼです、よろしくお願いします」

「デ、デエダだ、よろじぐ」


 デエダと呼ばれる大男がしゃがんで挨拶してくるが、それでも俺の頭よりもかなり上に顔がある。

 いつからかは分からないが、村の人たちが彼の名前をデエダラボッチと呼ぶようになり、通称がデエダで通るようになった。呼ばれる本人も気にしてないようだ。

 昔はもっと賢く、村の中でも一番の働き者だったそうだが、俺が生まれる前、この村とその近くの村で小競り合いがあり、その時に頭を打ったせいで言動がおかしくなったらしい。

 ただし、従来の子供好きには変わりないようで、こういった訓練でも相手をしてくれるくらいのことはできるようだ。


 サヘエがデエダに俺を預けると、若者たちの方へ歩いて行った。


「じゃ、じゃあ、まずは、動きを、体捌きを見たい。おでの動きを真似してくで」

「分かりました」


 デエダと向かい合い、彼の動きに合わせて移動する。


「ん、すり足、できでる。その年で、優秀優秀ゆうじゅうゆうじゅう

「ありがとうございます」


 そりゃあ、見学してるときに、無理をしない程度に見様見真似で練習してたからね。


「ぞ、ぞの次は受け身だな。前と、左右と、後ろ」


 デエダに片手で体を押され、倒れこみつつ受け身を取る。

 前に倒れた時は肘から手のひらを使って頭部を保護し、後ろに倒されたときは顎を引いて両腕で地面を叩いて衝撃を和らげる。

 比較的難易度の高い回転受け身も行う。

 前々から思っていたが、これらの基本動作って柔術とか合氣道に近い。もしかすると、紙のない時代から既に技術としてあったのだろうか。


「う、受け身も、大体、問題ない」

「ありがとうございます」

「づ、次は素手だな。手解てほどき」


 手解きは相手に手首をつかまれる際、振りほどきながら相手に打撃を行ったり、逆に相手を捕らえたりする技だ。達人になると座った状態で相手を放り投げることができるらしい。

 このようにして基本動作を教わったところで、一旦休むことになった。

 その様子を見たのかサヘエがやってくる。


「デエダ、どうだ、坊主は?」

「優秀。練習を、真似していたのは、見てたげど、こごまでとは、思わながっだ」


 褒められると嬉しいな。前から練習していたかいがあって良かった。


「どうするかな」

「ど、どう、とは?」

「この坊主、剣や弓など全部教えて欲しいんだとよ。まず、何をやらせるべきかねえ」

「き、今日は、皆と同じ、槍にじよう」

「んー、じゃ任せるわ」

「あい」


 デエダが子供用の槍をかごから出すと、俺に手渡してきた。


「こ、これで、基本動作を、してぼじい」

「分かりました」


 とりあえず、突き、払い、からめなどをやってみる。


「ぞ、ぞこ違う」

「どこですか?」


 デエダがお手本として自身の長い槍を使う。


「い、今の払い、大振り。もっど小さくで良い」

「僕の体格だと、相手に打撃力を加えるにはこの方が良いと思ったんですが」

「た、確かに、そうだげど、大きくなったあと、その癖が、ついたら、直すの、難しい」

「うーん」

「て、手本見せる、受けてみで」

「はい」

「まず、大振り」


 言うなり、俺の真似して大きな払いをしてきた。それを払うような動作でデエダの槍の先端を弾く。

 手加減してくれているのが分かるので防御は容易だった。


「小振り」


 これも手加減してくれているのだろう、と考えながらデエダの槍を弾こうとする。

 ガッという鈍い音と共に俺の体が1m近く後退した。


「うわっ!?」

「だ、大丈夫か?」

「え、ええ。手がしびれましたが平気です。に、しても、今の一体どうやったんです? 明らかに小振りなのに威力が凄いんですが」

「あ、当てる瞬間、力をめる。力、増す。大振り、隙だらけ、いらない」

「分かりました。ありがとうございます」


 勘違いしてた。衝突の瞬間に気合を込めるのか。


「こうですかっ」

「惜じい。まだまだ」

「えいっ」

「が、体、傾いてる」


 こうして日が暮れるまでの間、俺とデエダの一対一の訓練が続いた。

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