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16.桜山の熊?2

 桜色の竜の頭上に星がぱちぱちっと弾くエフェクトが現れる。どうやら発光玉は有効らしい。

 発光玉を使用したら使用者を優先して攻撃するようになっている。すぐにシロガネは竜に背を向け、来た道に向かって全速力でダッシュ。発光玉に誘導していたクロカゲも既にシロガネの隣にいた。

 ルーマとジュズは大して攻撃していなかったし、回復もしていない。狙われることはない。ジュズがいれば迷うこともないだろう。


「どのくらい耐性があるかわからないが、すぐには追ってはこれないはずだ」


 ルーマとジュズの後を追って道に入る。

 後ろを振り返ってみると、まだ混乱状態は解けてはいない。竜はあらぬ方向に火炎を吐き出している。

 仮拠点はモンスターが侵入できない、見つからない場所に設置されている。

 そこまで行けば安全で、クエストリタイアの申請もそこでできる。


「でも、なんで竜がいきなり」


「桜色だったし、桜を大量に斬ったからかもしれないが、何とも言えないな。まあ、後でもそんなこと考えられる」


「私とクロカゲの連携で翻弄できたあたり、それほど難易度の高い相手とは思えないけど」


「今のところ、竜を倒したという情報は両手で数えられるかどうかってところだったはず。そんな相手だし、何かしらあるだろ。なんにしたって、あの硬さじゃあ今の俺達じゃ倒せはしない」


 こういう判断はクロカゲは、舌を巻くほど上手い。

 戦闘慣れしているが故だろう。

 すぐにルーマとジュズの背中に追いついた。

 クロカゲがマップを確認する。


「十二時方向、道を進んだ先に熊がいる。まだ見えないがターゲットされると厄介だ」


 シロガネよりも索敵値は高いのだろう、クロカゲが三人の真ん中にマップの下を指差す。

 仮拠点は山を北にした南西の麓にあり、岩肌を削って屋根にした薄暗いところにある。

 草木も少ないため、獣が寄ってこないのだろう。


「拠点まで森を突っ切りたいところだけど、ちょっとした岩山があって時間がかかるわ。やっぱ道なりに進んだ方が起伏が少なくて早いわね」


 今、四人が下っている道は真南にまっすぐ切り拓かれており、麓に着けば草原の広場になっている。

 そこから西に進めば拠点もすぐだ。


「俺が先に熊を東に引き付ける。三人は拠点に行っていてくれ」


 ルーマとジュズのお()りにシロガネが必要だと判断したのだろう。

 シロガネもできれば側にいてやりたいと思っていた。


「熊の(のろ)さなら、俺の方が足が早い。拠点の前で煙幕(えんまく)玉を使ってしまえば撒ける」


 モンスターに見つかっている状態では、拠点に入ることはできない。仮拠点を荒らされないようにするためだ。

 そのため仮拠点から一定の範囲外で煙幕玉や先の発光玉でモンスターの視認を解いてからでなくては、安全な拠点に逃げることは叶わない。

 リアルを追求したゲームで移動手段に次いで不評を取っている要素である。


「そうね、すまないけどそうしてもらえるかしら」


「リン。いくらクロカゲが強いからって、ボス級モンスターをひとりで相手できるの?」


「タマの言う通りだぜ。リンもクロカゲに付いてやればいいだろ」


「咄嗟の対応は私かクロカゲにしかできないから、二人にはどちらか付いてないと。さっきの竜を私とクロカゲのいない二人に相手できる?」


 あの巨大な竜を思い出したのか、二人が言葉を詰まらせる。

 DBのモンスターのシステムを多少理解しているシロガネかクロカゲがいないと、理解していない二人にはさっきのように竜を撒くことはできないだろう。


「大丈夫よ。クロカゲは。二人の知らない強さがあるんだから」


「もう行く。先にターゲットを引き寄せるから」


 言うより早く、クロカゲは長い黒髪と和服を風に靡かせながら先を走っていった。

 ルーマとジュズがまた息を呑んだ。

 クロカゲが一歩踏み込んで土を弾いた時には、既に黒い背中が遠くにいたのだ。


「クロカゲは敏捷値を極限まで上げたんだから、熊如きに追いつかれたりしないわよ」


 クロカゲの強さは、そこにあった。

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