白と黒の出会い
「俺は、クロカゲ」
「……え?」
突然言われて、間抜けな声を漏らしてしまった。
無理もない。彼女は戦いに負けてきて、この町に強制ワープされてきたばかりなのだから。
自身の拠点に指定した、白い煉瓦造りが基調の家が建ち並ぶ見慣れた町並み。目の前に人がいて、しかもその人が、先ほど一騎討ちで負かされたプレイヤーなのだから。悔しがる時間をくれずになにしに来た。
「あんた、強いね。パーティ組んでる?」
「え、ううん。ソロだけど」
「ふぅん、そう」
こいつ、質問しといて話を聞いていたのか怪しい。少女に近い姿の黒い和服の彼は、私ではなく遠くの黒い旗が目印の砦を眺めている。
「ね、ねぇ。さっきの」
「クロカゲは俺の名前。あんたは?」
さっきから腑に落ちなかったことをぶっきらぼうに答えられ、彼女はむっとした。「あんた」という呼び方も気に入らない。
「私はシロガネ。で、私になんの用?」
言ってからしまったと、シロガネは肩を強張らせた。この世界において、棘のある言葉遣いはマナー違反の代表である。その他にセクシャルハラスメントやアイテム、装備などのフェアトレードなどがある。
いや待て。こいつこそ言葉遣いではマナー違反なのでは。まあ、言葉遣いのマナーなんて運営が違反として決めているわけではないのだが。
「俺とパーティを組まない?」
しかしクロカゲはなんら気にした様子もなく、脈絡のないことを言った。
それが上泉凛咲ことシロガネと、黒薙雛斗ことクロカゲの最初の出会いであった。