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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

日常と生活音

作者: yamac

読みようによっては残酷かもしれません。

ショートショートです。

隣の部屋の蛇口から水が出る。

かなり勢いよく水が出ている。


AM6:00

隣の部屋の生活音でワタシは目覚める。

枕元に無造作に置かれた本を手に取る。

昨日の夜に読んでいたものだ。

その本を本棚に戻す。


AM6:08

洗面台の蛇口をひねり、水を出す。

顔を洗い、歯を磨く。

寝癖を気にしながら、身支度を整える。


隣からは肉の焼ける臭いがした。

でも、水は出続けている。


AM6:28

着替えを済ませ、朝刊を取ってくる。

コーヒーを入れる為、お湯を沸かす。

トーストを焼き、目玉焼きを作る。

いつもの朝食。


AM6:49

新聞を見つつ朝食を食べる。


何らいつもとかわらない朝。

いつの間にか、隣の部屋からは音がしなくなっていた。


AM7:26

テレビでは今日の天気が終わり、運勢占いに変わっていた。

そろそろ、出なくては。

携帯、ハンカチ、ノートパソコン、そして昨夜読みかけていた小説とは違う本を鞄の中に入れる。


AM7:34

玄関に向かい、靴を履きドアノブに手をかける。

今日もいつもと変わらない日常。

ワタシは玄関の扉を開けて、外へ出る。


ふと、隣の部屋の前に来て疑問が浮かぶ。

朝、隣からは水が出る音がした。

途中、肉の焼ける臭いがした。


水の出る音はした、でも

食器を洗う音も、シャワーを浴びているような音も、顔を洗っているような音もしていない。

肉の焼ける臭い、でも

包丁で野菜や肉を切っているような音も、肉を焼く音も、食事をしているような音さえしていない。


生活音なんて、していない。

ただ、蛇口をひねり、肉を焼く。

それは生活音と呼べるのか?


AM7:41

時計を見る、そろそろバスの時間に間に合わなくなる。

隣の部屋の生活音。

昨日も、一昨日も、いつもと同じ。

これが日常。

なんだ、何も変な事はないじゃないか。

これが、日常なんだ。

そう、日常。


AM7:56

バスはいつものようにワタシを乗せて、駅に向かう。


ワタシは水の出る音の向こうに聞こえたはずの少女の悲鳴をほんの少しの同情と共に胸にしまう。



明日もきっと「日常」通り。


一番怖いのは日常を壊される事かもしれませんね。

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