case7.〜3匹の子豚〜
久しぶりの更新です。
でも途中まで書いたのは2年前で、オチは今考えたものです←
case7.〜3匹の子豚〜
昔、昔あるとある町に三人の兄弟が住んでおりました。
この三兄弟、村ではちょっとした有名人でした。
一番上の兄、アルフレッドは19歳。色白で背がひょろっと高く肩にかかるくらいの長めの金髪に青い瞳を持つ中性的な青年でした。
二番目の兄、ユニーは18歳。黒髪短髪、太陽の下でこんがりと日焼けをしある程度の筋肉を持つ快活そうな青年でした。
一番下の末っ子、マクニは16歳。柔らかい金髪に青い目は一番上の兄アルフレッドと同じ色だが気の弱さが全体的な雰囲気に影響してか兄の中性的な雰囲気に似てるわけではなかった。
さてさて、この三人がなぜ村で有名かというと父親は町一番の大工であり必然的にこの三人のうち1人は跡を継ぐと思われておりました。
が、現実はそう上手くはいきませんでした。
一番上の兄アルフレッドは、その繊細な外見とは似ても似つかない程不器用でした。 鋸で板を真っ直ぐ引けません。トンカチで釘を打つのも真っ直ぐ打てません。これでは傾いた家しか建てられませんから、父親はアあるふルフレッドに家業を継いでもらうことは諦めました。
次に次男ユニーはというと、見た目通り力持ちであり、木材を運ぶにはとても重宝するのですが、大工というのは不安定な足場を平均台を渡る如く、バランス感覚も優れてなくてはなりません。ユニーは残念ながらバランス感覚ひいては運動神経が皆無だったのです。「犬も歩けば棒に当たる」とはよく言ったもので、この町では「ユニーも歩けば必ず転ぶ」などと揶揄されてました。 ええ、ただの筋肉馬鹿です。しかも使えない!
そういうわけで、父親は最後の希望、末っ子のマクニに目をつけました。マクニは上の兄達とは違い不器用でもなければバランス感覚も悪くない。可もなく不可もなし。人並みでした。しかしマクニは根本的に大工に、いえ職人というものに向いてませんでした。大工というのは依頼者がいてその依頼主の要望に応えるのが大原則です。この壁は白にしてくれ、と依頼主に言われれば白いペンキで塗り、
窓は丸窓にしろ、と言われれば遠い町から腕の良い窓の 職人と合作し依頼主を満足させる、とにかく自分が出来うる限りの技術で家を建てるのです。マクニはどちらかというと芸術家肌というのでしょうか。風雲児というのでしょうか。 悪く言ってしまえば、依頼主の要望は無視、自分のやりたいように建ててしまうのです。 これでは仕事になりません。
そんな訳で腕の良い町一番の大工の息子三人は使いモノにならない、と噂されていました。
三兄弟の駄目さに憂う父はある日彼らにある課題をかしました。
「自分一人の力で立派な家を建ててみなさい。その建てた家は今後お前達の家となる。自分の家ならば、お前達も素晴らしい家を建てようとするだろう。一番良い家を建てたものが私の跡継ぎだ」
「なんだ。それなら簡単じゃないか!」
次男ユニーがガッツポーズをした。
「建てるのは簡単かもしれない。だが一つだけ言っておこう。いい家を建てた者つまり跡継ぎを決めるのは私じゃない。」
「どういうことですか、父上」
一番上の兄が首を傾げる。 首を動かすたびにさらり、と揺れる髪が神々しく儚げである。
「家を建ててしばらくしたら、ある人がお前達の家に訪問してくるだろう。その人が決める」
父は一人一人の目を見て、三人に覚悟をするように力強い瞳を向けた。
「好きに建てていいのなら、僕に一番分があるね!」
末っ子のマクニは無邪気に笑った。
三兄弟それぞれ大工に向かない理由はあるにしろ、幼い頃から父親の仕事ぶりを見て育った彼らは大工という職業に憧れを抱いていた。兄弟仲が悪いわけではないが、それぞれが他の兄弟ではなく自分が父の跡を継ぎたいと思っていた。
「では、私は家を建てるための材料を調達してきます」
そう言って、一番上の兄アルフレッドが家を飛び出した。
「あ! 待てよ兄貴!
じゃあ俺もいい場所に家を建てたいから日当たりのいい場所を早々に確保するか」
と、ユニーも立ち上がった。
父親はまだ一人家の中に残るマクニに声をかけた。
「マクニ、お前は行かなくて良いのか?
良い材料も良い土地も、上の兄達に取られてしまうよ」
「ええ。 ですが、僕は今までに誰も考えつかないような家を建てたいのです。だから上の兄達が思いつくような家は建てたくないのです。大丈夫、考えはあります」
そう言って静かに家を出て行った。
父親は口に蓄えた髭を右手で撫でながら
「さて、どんな家を建てるのか。楽しみだな。
しかし、ある人に気に入られなくてはならないのをちゃんと分かってるのか…」
ぼそりと呟いた言葉は頑丈な家の扉に阻まれ、家の中で虚しく反響するばかりであった。
*****
一番上の兄アルフレッドは、木材を使うと傾いた家しか建てられないことは重々分かっていた。
そこで、鋸や釘を使わなくて良い藁の家を建てることにしました。
二番目の兄ユニーはバランス感覚がなくても良いように、高い家を作らず平屋の小さな木造の家を建てることにしました。
末っ子のマクニは、人工物に頼らない自然のままの家、をコンセプトに自然にある石を積み上げた家を建てることにしました。
さて、無事三兄弟が家を建て終わりその家で暮らし始めました。
父親が建てた実家を思うと自分たちが建てた家は少々不便で、隙間風が入ってきたり雨漏りをしたり、建ててみただけでは知り得ない暮らしてみて初めて気付けることが沢山ありました。
三兄弟は父親がなぜ自分たち自身の家を建てさせたのか、その意図に気付きました。
その晩、父の言いつけで、三人はそれぞれが建てた家に泊まることになりました。
今夜は満月。明かるく闇夜を照らすも薄雲にかかって暗くなり、また出ては明かるくなる風の強い晩でした。
そんな夜更けに一番上の兄アルフレッドの家のドアを叩く者がいた。
ドンドン
「誰だ? こんな夜中に」
ベッドから上半身を起こし、鳴る扉に目をむけました。
「もし、誰かおりませんか?
私旅の者です。
今夜泊まる場所を探しております」
鈴がリンと鳴るような、心地よい声をした若い女の声だった。
誘われるがまま、アルフレッドはドアに手をかけた。
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同じ頃、二番目の兄ユニーの家にも戸を叩く音が響いていた。
ユニーも兄アルフレッドと同じ様にドアを開け、女を招き入れました。
しかしこの女、中に入らず、扉の外から家の中を一瞥すると口を開いた。
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そうして最後、月も天高く昇った頃
末っ子マクニの家の戸も叩かれました。
マクニが恐る恐る戸を開けるとそこには、赤髪の美しい女が立っていました。
「えっとー…」
予想以上の美しさに何と話しかければ良いか分からなくなってしまったマクニは言葉に詰まります。
スッと女は目を細め静かに言いました。
「原始的な家ね。 60点ってところかしら」
「え?」
「あなたの家よ。石積むなら原始人でも出来るわ。
あなたのお兄さん達も、革新的って感じじゃないしね。
藁の家は今夜のような風の強い日は飛ばされちゃって、
平屋の木の家は保守的で、しかも狭い。家族が多いのなら無理があるわ。
ハー……これじゃあ合格点上げられないわ」
「ど、どういうことですか…?」
女がペラペラと三兄弟の家について批評していくが、マクニにはなぜこの女性がそんなことを言うのか、状況がイマイチ分からなかった。
「あなたのお父様に頼まれたのよ」
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女の話の顛末はこうでした。
彼女は隣の大きな町の大工の娘であり、彼女自身は腕の良い若手大工でした。しかし女性を跡取りとすることは出来なかったため、嫁に出されることになりました。
そこに話を持ち掛けてきたのが三兄弟の父親でした。
三兄弟の家を見て、一番気に入った息子と結婚をし、大工の跡を選んだ息子と二人で継いで欲しい、と。
「でも、全員だめだった時は…」
女は下を向き、次の言葉を濁す。
マクニは次の言葉が気になり、女の顔を見ようと首を傾ける
「だめだった時は…?」
「私が明日から鍛え直すから覚悟しなさい!」
ガバリと顔を上げ、女は笑顔で言い放った。
まだまだ三兄弟の跡取り問題は解決しないようです。
お粗末様でした。 ネタ提供(童話でこういったものがありますよ)をお待ちしてry