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case.3 ~青ひげ~

注意! ほんのりヤンデレ・狂愛の表現がございます。苦手な方はご注意ください

case.3 ~青ひげ~



ある村にそれはそれは美しい少女が住んでいました。少女の父親は彼女が生まれる前に馬車事故で亡くなり、母親も病気でつい最近亡くなってしまいました。

しかし少女には二人の兄がおり、兄妹三人で助け合いながら、細々と暮らしておりました。



ある日、一番上の兄に頼まれた少女はお遣いに町へと出ていました。


すると、町はいつも以上に賑わっていました。



(今日はお祭りでもあるのかしら?)



町の広場では、一際大きな人集り(だかり)が。


しかし、中心に何があるのかを少女から確認することはできない。


気になった少女は、

近くで新聞を売っていた少年に尋ねた。



「お姉ちゃん、知らないの?


あれはね、青髭様だよ。

青髭様は隣町の大きな屋敷に住んでる伯爵様で、とっても綺麗な顔をしているんだって」



「そうなんだ」


人集りはよくみれば、若い女性ばかり。

きっとその青髭様に求婚をしているのだろう。

「だけどね、青髭様はどんなに綺麗な女の人がお嫁さんになりたいってお願いしても、駄目っていうんだって。

不思議だよねー」


「そっか。ありがとう」


「どういたしまして」



人集りの正体も分かったので、兄のお使いを果たそうとその場を

後にする少女。


最後にチラッと人集りを見れば、

青く美しい長髪を風に靡かせる20代の美男子と一瞬目があったような気がした。


(わー、すっごい綺麗な人。

でも青髭様は名前からしてもう少しお年を召した方だろうし。 執事さんとかかな)



そう思った少女は、その時はあまり気にも止めずに立ち去ったのだった。





ーその夜


コンッコン、と少女の家の扉を叩く音が。



二番目の兄が出る。


「こんな夜に誰だろう?」


「そうだな。 こんな町外れの家に」


少女が問いかけると、一番上の兄も不審そうに眉をひそめる。


少女は嫌な予感がし、ブルっと身震いをする。


それを見た一番上の兄は


「大丈夫だよ。 俺たち兄さんがお前にはついてるんだから」


と少女の頭を安心させるように優しく撫でる。


すると不思議と、身体がほんのり温かく感じた。


そして、少女は昼に町に行ったために疲れたのかテーブルに伏せって寝てしまった。








朝、少女はベットの中で目を覚ました。



「あれ? 私、昨日はそのまま……」


寝ちゃったのに……と言いかけて止まった。


(これ、私のベットじゃない。

それだけじゃない、ここは私の部屋でない)



混乱する頭で原因を考える。

覚醒したばかりの脳は、

ぐるぐるとただ回転するだけで、何も思いつかない。



「お目覚めでしたか」


急に聞こえた声に、顔を上げれば目の前には昨日町の広場で見た青い髪の男性が立っていた。



朝日に照らされ、キラキラと輝く髪。

腰を曲げ丁寧なお辞儀。

身なりの良い服装。

そして、不自然に釣り上がった口元。


少女は目の前の男性の全てに目を逸らすことが出来なくなった。



目を覚ました少女の前には、

兄たちではなく、もちろん死んだ両親でもなく、美しい男がいた。



「あなたは……」


状況が飲み込めない少女。

不安そうに男を見上げる少女の瞳は潤い、それを見た誰もが庇護欲にかられるでしょう。


しかし、この目の前の男は不自然に口元を釣り上げ、少女に言いました。



「君は、今日から私の妻となりました。


もう、兄たちと会うことはないでしょう。

この屋敷から出ることも許しません。

その代わり、君の欲しい物は全て与えましょう。 綺麗なドレスに、美味しい食事、優しい夫、君の望むものなら何でも」



「あぁ。申し遅れましたが、私ジルと申します。

町の人からは"青髭"と呼ばれておりますがね」


「青髭?」


少女は青髭と聞いて、昨日の広場での出来事を思い出した。

目の前の男は、青く輝く美しい髪を持つ。

広場で見たあの美しい男が目の前に立つ男であり、それは青髭だったのだと気付いた少女は驚いた。


しかし、なぜ自分が結婚相手になっているのだろうか。

一度広場で目が合っただけの自分に……


そう悶々と考える少女を見て、クスリと笑う青髭ことジル。


「結婚して早々申し訳ないのですが、私はこれから出掛けます。

それで君にこの鍵を預かって欲しい。

私がいない間屋敷のどの部屋に入っても構わない。 だが、この鍵の部屋には決して入ってはいけない」



急に高圧的な口調に

なったギルに怯えながら鍵を受け取った。


黄金の鍵でずっしりとした重みが責任の重大さを思わせる。


「では、行ってきますね」


いつもの紳士的な口調に戻ったジルは穏やかな表情で部屋を去って行った。



少女は頭の中で必死に今の状況を整理する。



結婚

青髭

屋敷の外には出られない

兄たちはどうしているのだろう


(気になることがたくさんあり過ぎて、パンクしそう)



とりあえず、ベットを出て部屋の中を歩き回る。


ベットとサイドテーブル以外なにもない部屋のため少女は

歩き回ることに飽きてしまった。


ふと、部屋の出口である扉に目がいく。



(喉も渇いたし、

部屋の外に出てみようかしら)


起きてから何も口にしていなかった少女は、思い出したかのように喉の奥が貼り付くように感じた。



***


目的の水を飲むこともメイドに頼むことで、達成した。

その後、特に何もすることがない少女は青髭の屋敷を探検することにした。


青髭の屋敷は、隣町一大きな屋敷というだけあって、部屋数もかなりあった。

ひとつひとつ見て行く少女の顔は疲労が見え始めた。


しかし、見て回るのが楽しいのか

今日一日でこの屋敷すべての部屋を

見る勢いであった。


そうして陽が暮れる頃、

少女は最後の部屋に辿り着いた。


黄金のドアノブに手をかけると、ガチャガチャ、とノブが空回る音がする。

この扉には鍵がかかっていたのだ。


そこで少女は

自分のポケットに入っている黄金の鍵を思い出した。今朝、青髭から預かっていた鍵。


しかし、開けてはいけない、と言われている。

少女は迷った。

この屋敷の部屋はすべて鍵がかかっていなかった、この目の前の部屋を除いて。

つまり青髭が隠したいと思う何かが、この部屋にはあるのだ。


宝石か、大切な書物か、

ワインか、いやいや絵画かもしれない。


あの青髭が隠したがるもの。

それはとても素晴らしいものに違いない。


ちょっとだけ、

ちょっとだけならバレない。

ちょっとだけ……



そうして少女は鍵を開けてしまった。



そこには一枚の絵が飾ってあった。

8歳くらいの幼い少女を描いたものであった。




「わ、た…し?」



それは紛れもない、自分が幼いときの絵であった。


「君は開けてしまったんだね。

あんなに私が注意したというのに。

君は見てしまった。私の秘密を」



扉が開かれ、少女が後ろを振り返れば

そこには青く美しい髪を持った男、青髭が立っていた。

不自然に上がった口元と、

冷たい射抜くような目をして。


「これは、その…ごめんなさい」



「見ての通り、その絵は君を描いたものだ。

ずっと幼い頃から君をこの屋敷に迎え入れようと決めていたのだ。


それが漸く叶ったというのに、君は私を裏切った」




「ち、違う! そんなつもりは…」



「心配することはないよ。

これからはずっと二人でいよう。

私が居れば屋敷の外に出してあげても良いと思ったが。

君はこの屋敷からどんなことがあっても、出ることはない」


ずっと、ずっと、永遠に。




おわり




この童話シリーズって、愛より笑い シリアスよりギャグ 残念を追求してきたのですが

青髭は狂愛なシリアスチックになってしまいました。 なんでこうなった

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