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日曜日の朝
生活リズムのせいか、目覚まし時計をセットしなくても8時には目が覚める。
日曜日ぐらい寝溜めしたいという気持ちと、家事をしなくちゃいけないという強迫観念の狭間で、面倒臭い気持ちになる。
悠生「顔を洗うか・・・」
ふとリビングに目をやると、妹がテーブルに顔を伏せていた。
悠生「おはよう、久しぶりだな。」
妹「おはよ・・・」
悠生「どうした、どこか悪いのか?」
妹「いや、だいじょうぶだよ。」
悠生「そうか・・・」
洗面所で顔を洗う。タオルの柔軟剤の香りに心地よさを感じ目が冴える。
悠生「今日は休みだから、お前のわがままにいくらでも付き合うぞ。」
妹「今日は時間あるから、お兄ちゃんと一緒に温かいご飯食べたいな・・・」
悠生「おうっ、とびきり美味しいの作ってやる。」
妹「うん。私、お兄ちゃんの卵焼き食べたい・・・」
悠生「よし、だし巻きと厚焼きと甘いの作ってやるな。」
妹「うん。ありがとう・・・」
リビングに炊きたてのごはんの匂いと、卵焼きの香ばしい匂いが混じり、なんとも優しい気持ちになる。
悠生「よしできた。さあ食いねえ。」
幸「うん。」
我ながらよくできた。
・・・妹は何かを隠している。でも、冷静を装った方が良いのだと直感していた。幸が休んだ日のことなど話す事はあったが、言葉にはできなかった。
妹「美味しいよ。ありがとう。」
悠生「うん。いつも朝、時間が無くてごめんな。」
妹「いや、いつも楽しいし平気だよ。」
悠生「そうか・・・コーヒーが飲みたければ作るぞ?」
妹「いや、いつものお茶でいいよ。お茶好きだから。」
悠生「そうか、今つくるな。」
台所の急須を取りに向かう。
その時、背後が光った気がした。
振り返ると妹の体が光りだしていた。まるで後光が射すかのように。
妹「楽しかったよ、いい思い出いっぱいできた。」
悠生「行っちゃうのか?」
妹「ちょっと天使さんを困らせたくて、現世に戻りたいって言ったんだ。そしたら、その天使さんが叶えてくれたんだ。」
悠生「そうか・・・」
妹「でも、それは本当はいけない事だから・・・」
悠生「・・・」
妹「でもこれで、あっちの世界でも楽しい思い出と一緒に暮らせるよ。」
悠生「また会えるか?」
妹「お兄ちゃんが会いたいと思えば、きっと私はそこにいるよ。」
悠生「・・・」
妹「お兄ちゃんからは見えなくても、私からはお兄ちゃんが見えているもの。」
悠生「ああ。」
妹「私、少しの間でもお兄ちゃんの妹でよかったよ。」
悠生「俺も、お前が妹でよかったよ。」
妹「うれしい・・・・・じゃあ行くね。」
悠生「ああ、幸せに暮らせよ。」
妹「ありがとう。幸さんもいるし、お兄ちゃんは決して1人じゃないよ。」
悠生「ああ。」
妹の体は消えていった。
悠生「勝手に現れて、勝手に消えやがって・・・お礼言えなかったな・・・」
何かしなければいけない・・・そう思っても、体を動かす気力は湧かなかった・・・
気が付けば、今日という日は終わっていた。




